110 穴の主

「み、み、」

あかりがなんか言ってる。耳?

「み、み、ず」

「水が欲しいの?」


 洞窟から轟音とともに巨大な筒が飛び出てきた。なんというか、土管?かな。直径は洞窟の直径と同じ3mはありそう。


「ミミズーーー!」

あかりが叫ぶ。


 洞窟から出てきたのは巨大なミミズ、というかなんだこれ。サンドウォームとか?砂漠じゃないんだけど。

 直径が3mあるなら長さは50m以上あるかも。そして頭の部分は全部口だ。


「私、こういうの苦手なのよ!」

「あかりって意外と苦手なもの多くない?」

「じゃあお兄ちゃんにパス!」

とにかくみんなで走って逃げる。


 しかしこんなでかいやつ、槍でチクチクやってなんとかなるもんなのかな?電車を四両つなげたぐらいのサイズがある。ローカル線だったら全編成だ。それが地面をのたくっては、その辺の樹木をなぎ倒している。


 僕らが遠ざかると、巨大ミミズは穴に戻っていった。どうやら巣穴だったらしい。


 僕はメイの顔を見る。

「騎士団とかに退治して貰えば?」

「契約書によると、この土地から産出される鉱物、植物、動物は乙の所有となり、また乙が責任を持って管理する、とあります」


 動物なのかなあれ?


「瑕疵があるって返品したら?」

「書面と現況が異なる場合は現況優先だって契約書に」

「王様、不動産屋ぽくない?」


 これ、王様は知ってて押し付けてきただろ。


「条件は合ってるんですよ。あれだけ何とかなれば」

「何とかねえ……」


 胸に白い猫をぎゅっと抱きしめたあかりをみる。あかりは首を振る。

「私はやだから」

「それはともかくシャリが潰れそうなんだけど」


・・


 離れて作戦会議。


「まず穴から全部を外に出しちゃいたいんですよ」

「それだと誰かオトリ役がいるな」

みんながあかりの顔を見る。

「やだから!」

「トレイン得意じゃなかった?」

「だからああいうのは生理的に駄目なの」


 うーん、どうしよう。


「あかりはいつも頑張ってるよね」

「そういえばなんとかなるとか思ってない?」

「でも僕があれを倒せばレベル4になると思わない?そうしたら王女に頼んで」

「うーん」

考えている。


「あかりみたいに頑張ってる子が認められないなんて間違ってるよね」

「そうかな」

「僕は今度こそあかりの頑張りが報われるべきだと思ってるんだ」

「そこまで言うなら考えてもいいけど……」

「一緒に頑張ろうよ!」

「まあ、いいけど」



 どうもあの巨大ミミズは地面を歩く振動を感知しているようだ。よって。


『飛翔!』


 マントを羽ばたかせて浮かび上がる。手にはスコップ。メイが書いた地図のポイントと地形を見比べる。


「それじゃ、作戦開始!」

(・・ おにいちゃん頑張って! ・・)

頑張るよ。シャリ!


・・


「いやーーーーーーー」

洞窟からあかりが走り出てきた。打合せ通りの方向にまっすぐ走っている。


 ズブォア――――――


 排水パイプのつまりが取れる音を1000倍に拡大したような音を立てて、洞窟から巨大ミミズが出てきた。大きく口を開いている。というか頭は口しかない。


「いいぞあかり!」


 上空から声援を飛ばす。いま僕にできるのはこのぐらいだからね。


「あ、ちょっと早すぎ。もうちょっと遅く。あ、いい感じ」

「もうやだ!」


「がんばれー」


あかりが何か言ってるけど、もうちょっとだから。



「3,2,1、OKあかり!」

あかりは空間転送呪文を唱え、姿が掻き消える。


「点火!」


 上空からコマンドワードを唱える。アイテム化して埋めてあったメイお手製の七個の大型地雷が実体化し、信管に点火、爆発する。


 重なり合う衝撃波、何度も響く轟音。空気が揺れ動く。


 荒れ地に七つの大きな爆炎が重なり合うように上昇する。上空にいた僕は爆風で吹き飛ばされるが、墜落しないようになんとかバランスを取る。地上は火の海だ。ちょっとやばくないこれ?でもさすがに死んだろう。


『やったか?』


 薄れていく爆炎の中に巨大な姿。…………まだ動いてた!


「フラグだったー!」

こういうの前もあったな。


 槍を伸ばして構える。『覚醒!』して、せーの。


『縮地で突撃!』


 三回目の突撃で巨大ミミズを倒すことができた。体の奥からこみあげてくるレベルアップ感。大きいぞこれは!えっと恩恵は第一希望と第二希望で……なんだっけかな、ダンジョンじゃない洞窟に久々に入ってみたら暗かったのでその対策とそれからえっと……


――


フィン:レベル4(2 up)(人間:転生者)

・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上、罠スキル、炎、クリーン、テイム(妖精)、言語理解、耐熱、隠ぺい、盾術、力持ち、覚醒、突撃、予知、解錠、反射、恩恵奪取、メッセージ(new)、ライト(new)


シャリ:レベル7(人間)

・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術、盾術、完全回復、変身


あかり:レベル6(エルフ:転生者)

・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング、詠唱破棄、空間転移


メイ:レベル7(人間:転生者)

・恩恵:衣装製作、アイテム化、投げナイフ/ダーツ使い、エンチャント、形状加工、紙の神、上級錬金術


シャルロット:レベル2(人間)

・恩恵:レベルブースト、[?]


――

挿絵は走って出てきたあかりちゃん

https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330653098353648

――

次回より新章

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