第二部終章

95 後片付け

「大司教様、大司教様!大丈夫ですか!」

扉を叩く音。戦いの音を聞きつけて誰か来たようだ。大丈夫じゃないけど扉は開けないわけにもいかないよね。

『解錠!』

扉のロックを解除すると、外に居た人たちがなだれ込んできた。彼らが目にするのは武器を持った僕たち、床で真っ二つになった大司教と血だらけの床。そして剣を持って立つ天使。


「なんと!」

衛兵だけでなく上位っぽい僧侶たちも入ってきた。パウル司教もいる。


 えーっと、どうしよう。


「あいつがやりました。そうだな?」

僕は天使を指さす。なんと天使がうなずいた。

「確かに」

しかもしゃべるのか。余計なことを言う前に帰ってもらおう。

「帰ってくれ」

天使は天井の付近で空間に吸い込まれて消えた。あとはなんて言おうか。


「えーっと、大司教とお話をしていたらさっきのあれが現れて、僕たちも戦ったんですが大司教がこんなことに!」

パウル司教が目をぐるぐるさせている。


・・


「ボスの宝箱はないのかな」

「余計なこと言わないの」

珍しくあかりが常識的な意見を返してきた。


 尋問はその後もあったが、「大司教と話をしていたら羽の生えた大きななにかが現れて大司教を真っ二つにした」と説明する。嘘は言ってないから嘘発見の恩恵があってもバレてないだろう。司教クラスだとあの天使が何か知っている者もいるみたいだが、その辺の人たちは当然何も言わない。


 ちなみに、僕もちょっと天使を呼べないかと思っていろいろやってみたが成功しなかった。多分契約とか必要なんだろうね。


 大司教の後釜についてはコンクラーベとかやるらしいけど来年みたいだからしばらく空位らしい。僕たちの手配はパウル司教が取り消してくれたからどうでもいいけど。



「シャリさん、フィン、レベルアップおめでとう!」

「無礼講よ」

「シャリはようやくレベル6になれてうれしいです」

「僕もレベル4に戻れてうれしい」

正直上がったり下がったりでよくわかんないんだけど。一番高い時で5だったし。とにかくシャリもレベル6になったしよかったよ。


「なんでメイが先にレベル7なのかまだ納得いかないわ」

「恩恵はあかりのほうが多いんだからよくない?」

「私はリスクを取ったんだから当然でしょ」

「人間レベルじゃないって言ってたよね」

「私はエルフだから」



 バタバタしていたのでアイテムの整理。ポーション瓶が出てきた。

「未鑑定だっけ?」

あかりに鑑定してもらうと毒消し。どんな毒でも有効。


「これってメイが作れるの?」

「材料があればですねー。研究してみます」

「あのヒーリングポーションも作れるの?」

「材料があればですね」


 なお、ダンジョンの魔物は倒すと消えてしまうので材料にならない。トロールみたいに倒さないで捕まえればいけるかもだけど。


 あと僕の(というかリザードマンのだけど)マントはやはり飛翔のマントだった。実験したところでは最大一時間程度飛べる模様。


「他になかったっけ?」

「そうだと思うけど」

「実はですね」

メイが口をはさんできた。


「大司教のペットの巨大蜘蛛の宝箱ですけど、丸ごと持ってきちゃいました」

「やっぱりあったんだ!」

メイがアイテム化を解除するとゴロンと宝箱が出現。トラップを解除して解錠する。


「お、結構な量の金貨」

「あと、なんでしょうねこの布」

僕とあかりが同時に叫んだ。

「ふろしき!」

緑色に唐草模様の大きな風呂敷。マンガに出てきそうな柄だが大きい。3m角ぐらいありそう。


「ひょっとして包むと時間が進んだり戻ったりしない?」

「時間が進むことはないわね」

鑑定したあかりが言う。

「何だ残念」

「でも時間が進まないのよ」

なんと。時間停止風呂敷。


「そういえばさあ」

「なに?」

あかりが答える。

「思い出したんだけど、メイの式神の本ってダンジョンの巨大蜘蛛の宝箱だよね」

「そうだったわね」

「唐草模様の風呂敷は大司教の巨大蜘蛛から出たじゃない」

「ペットみたいだから同じ個体だと思うけど」

「両方和風だなあと」


 あかりは目を閉じて考えている。

「そうね」

あかりが目を開けて僕を見る。

「検証の必要があるわね」

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