92 招待
そうしていると、メイに大司教からの招待状が届いた。
「なんでみんな僕たちに関心を示すんだろう?」
「本当にわからないで質問してる?」
あかりが呆れた目で僕を見ている。
「いつバレたのかな?」
みんなで考えてみよう。
「王都ダンジョンは一回入ったけど出た記録がない日があるね」
「その日は行ってないはずの教会総本山から出てきてますね」
「あと最後の日は私たちが出た後にリザードマンが皆殺しで発見されたのよね」
「でもみんなレベル1ってことになってるよね」
駄目押しで最後にシャリが付け加えた。どう見ても怪しいだろ僕たち。
「問題は何がバレてるかですね」
「そもそもメイに会ってどうするんだろう?」
「メイ、お迎えが来てますよ。行かないと」
「はい、お母さん」
メイは父親と教会総本山に向かった。僕らは招待されてないので待機。なんか心配だな。
「フィン様、お客様です」
使用人が部屋をノックする。
「え、僕?」
・・
この間のシスターが来ていた。パウル司教の秘書のお姉さん。
「君たち、逃げちゃってくれればよかったのになんでまだ居るのよ」
いきなり言葉遣いが変わってません?
「とにかくうちのボスが会いたいって」
店の前に黒い馬車が停まっていた。シャリとあかりと三人で乗り込む。シスターも入ってきて僕らの向かいに座る。その隣には既に一人。
「狭い所すまんね。内密な話は移動中が一番なんだよ」
パウル司教が僕らを出迎えた。
「教会の中はネズミが多くてね、先日君たちが現れたのも既に報告が上がっている」
馬車は街の中を進む。
「ちょうど聞きたかったんですよ。大司教は何がしたいんですか?」
司教はちょっと考えてゆっくりと答えた。
「おそらくだが、君たちの中にレベルを操作する恩恵を持つ者がいると考えてるのではないかな」
「なんでですか?」
「妖精の子のレベル上げは生易しいものではないんだ」
僕は息を詰まらせた。
「世の中に成功例はある。しかし私も何度も試してみたのだが成功したことはない。子供を守るとレベルは上がらない。守らないと死んでしまう。レベルのない子供に戦わせるというのは並大抵ではないのだ」
「そうだったんですね」
「それに」
司教は僕の顔を見る。
「レベル1パーティが
「はあ」
「そしてエルフのお嬢さんは今はレベル6か。すごいね。フィン君は今レベルいくつかな?」
僕とシャリに掛けてあった隠ぺいを解除する。レベル3なのであとはメイだがそれは残したまま。
「なるほど。フィン君はこの間5だったのに3になっている。お嬢さん方は一つずつ上がっていると」
「よく覚えてますね」
司教はそこで息をついた。しばらく黙ってから口を開く。
「それでだが、大司教は
実在したのか。それ。
「恐らく、レベル操作の恩恵が狙いだろう」
「メイを連れてってどうするんでしょう」
「大司教は人の心に干渉する恩恵も持っている。何かを聞き出そうと思えば容易だ」
うーん、メイを残して僕らが逃げるわけにはいかない。
いつの間にか馬車は街を抜けていた。窓の外には畑が広がっている。
「なんとか僕たちを自由にしてくれと交渉します」
「なるほど。交渉か」
司教は困ったように顔をしかめる。
「交渉にはならんだろう。そもそも君たちは総本山に入った瞬間捕まるよ」
「何でですか?」
「先ほど確認したのだが君たちの手配が回っている。総本山は城塞だ。中に入るまでチェックポイントはいくつもある。残念だが私でも君たちを連れていくことはできない」
「えーと、じゃあ空を飛んでいけば?」
「おにいちゃん一人で行っちゃだめ!」
シャリが僕の腕を掴んだ。
・・
馬車が停まった。外は畑が終わり森になっていた。
「とにかく教会には近寄るなよ。それから君たちの家にも教会の者が来るから戻らないほうがいい」
司教はそう言うと去っていった。僕らは馬車から降りて、さてどうしよう。
「おにいちゃん、どうする?」
「メイが心配ね」
「それなら考えがある」
僕は答えた。
「教会に入れないならダンジョンに入ればいいんだ」
◇
「レベル1が3人です」
もはや顔パスで通過。兄妹の三人でダンジョンを走る。一階のボスリポップ待ちをスルーして二階へ。ボス部屋まで一直線。タイムアタックなら新記録だ。
「攻撃力付与!」
「覚醒!そしてお邪魔しまーす!」
ボス部屋の扉を蹴り開ける。間を置かず。
「マジックボム!」
ボス部屋に白い光が広がる。そして爆風。光が薄れてきた。そこに立っている影。盾は床に置いて槍を最大まで伸ばす。
『縮地で突撃!』
力持ちと槍の恩恵と攻撃力付与が加算されたランスサイズの槍はオークロードに突き刺さった。そこにシャリが加速して走りこんで来る。丸い小盾を構えての突撃!シールドバッシュを受けて倒れたオークロードにシャリがメイスで殴りかかる。地面との間でオークロードの頭を叩き潰していく。オークが煙となって消える。とっくにオーバーキルだな。
「宝箱どうする?」
「時間がない。パス」
・・
三階。アンデッドの間。
通路のアンデッドはあかりがマジックミサイルで潰しながら進んだ。潰しきれなかったものは僕とシャリが倒す。囲まれたりしなければそれほど怖い相手でもない。
「ボス部屋よ!」
さっき言うの忘れてたよねそれ。
攻撃力付与はまだ効いている。覚醒は切れていたのでもう一度発動。これもレベル回数までかな。
「お邪魔しまーす!」
部屋の中は墓場だ。地面から幽体が浮いてきている。
「マジックストーム!」
あかりが魔法を詠唱破棄で発動。魔法の白い刃が嵐となって吹き荒れ、幽体に切りつける。
魔法の嵐が止んだ。地面からボコボコと死体が生えてくる。そして部屋の奥の棺が開いた。腕が伸び、そして頭が出てくる。これも死体のボス。
「マジックボム!」
あかりの魔法が続けて発動。この二つは系統が違うから連射可能なんだそうだ。墓場に白い光の塊が広がる。衝撃波。そして爆風。死体の破片が飛んでくる。
盾を置き槍を構えて伸ばす。炎を纏わせる。
『縮地で突撃!』
出鼻を槍で刺され、死体のボスは出てきた棺の中に倒れた。そしてまたゆっくりと出てくる。そこにシャリが突っ込んできた。両手で僕のカメの盾を構えている。
「カメシールドバッシュ!」
シャリの持った盾に押し倒されてボスはもう一度棺桶に倒れた。
シャリが僕にカメの盾を放り投げて渡すのをキャッチ!シャリは左腕につけてあった自分の盾を持ちなおす。
僕とシャリはボスに向き直ると、挟み込んで攻撃を始めた。
僕の槍が最後の一撃となった。とどめを刺されたボスが消える。
「今回も宝箱はパス?」
「うん、あ、いや」
何かの予感。
「開けよう」
トラップを解除して開けると金貨とポーション瓶と本があった。本を手に取る。さっきの予感はこれかな。
「ちょっとだけ待って」
本を開けると読み始める。文字が光って消えていく。
数分で本は読み終わった。
「何の本だったの?」
「わからないけど次の恩恵で」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます