85 再訪

 これからどうしようという話になったが、パウル司教が黙認ということなら行ったれということになって王都ダンジョンへ。僕のレベル4を目指すのだ。

 

 入り口ではシレっとレベル1ですということで顔パス通過した。

 ダンジョンは王家の所有のはずなんだけど恩恵検知装置は教会に委託とかなんだろう。この女の人もパウル司教の部下みたいだし。


 一階のボスは魔法がもったいないので遠距離戦にしてみる。ここはボスも取り巻きも飛び道具を使ってこないので、メイがひたすらチャクラムを投げる。近寄ってきた取り巻きだけ僕とシャリが始末する作戦。


 30分ほどしてボスの首が落ちた。


 メイが疲れ切ってるのでお疲れというと僕の前に来る。何かを要求している感じなので頭を撫でると正解だったみたいだけどシャリがこっちをじっと見ている。


 二階はあかりがマジックボムをぶち込んだ。前と同じ甲冑ボスにシャリが突っ込んでいく。指輪の力で加速して突入するとそのまま高速に殴り続けている。そこに僕も槍を両手で構えて突っ込んだ。

 シャリがヒットアンドアウェイで攻撃を続け僕が槍で足元を攻撃。動きが鈍くなったところで喉元を槍で刺し倒れたところをシャリが粉砕。


「ナイスシャリ!」

「ありがとう。おにいちゃん!」


 シャリがやってきたので頭をなでてやる。顔がにへーっとしててかわいい。到底今さっきオークのボスをメイスで撲殺したとは思えないな。


「宝箱よ」

あかりが宝箱を見つけた。トラップを簡単に解除して開けると金貨。一階も金貨だったけどやっぱりアイテムが欲しいところだな。


 そして三階。ここからが本番。


 通路を進む。前回も明けてない部屋はあるんだけど四階に急ぐので今回はパス。出会う幽霊は僕とシャリが速攻で殴り倒しながらボス部屋へ。前回に比べると幽霊が少ない気がする。前は溜まってたのかな。


「ボス部屋よ!」ということで作戦は前と同じ。開始早々、地面から死体が出てくる。今回は幽霊じゃなくて実体があるけど。


 構わずあかりが一発ぶち込む。

「マジックボム!」


 部屋の中央に白い光が広がり爆風。死体の破片が飛んで来てぺちょっと当たる。ものすごい臭い。前と種類が違うのかな。


 前進すると、今回は祠じゃなくて大きな石の棺が置いてある。蓋がずり落ちてなかから手が縁にかかる。そして頭が出てきて上半身も。死体みたいだけど人間よりでかいな。3mぐらいありそう。


 メイが何かを唱えながらお札を投げる。僕らの前に白い牛が現れるとそのままボスに向かって走っていく。スピードの付いた牛はちょうど棺から出て来ようとしたボスを跳ね飛ばした。

 僕は槍を最大長に伸ばすと両手で構え炎を纏う。その間にシャリがスタート。加速してボスに殴り掛かる。起き上がりざまを攻撃されたボスがのけぞる。ここで。


『縮地!』

炎の槍がボスの喉元に突き刺さった。ボスが倒れたところをシャリのメイスが殴りつける。


「どいて―!」

起き上がろうとしたボスを再度スピードを付けて走ってきたメイの牛が跳ね飛ばした。そこに追撃のマジックミサイル。なんかひどい事している気がしてきた。


 三回目に走ってきた牛に轢かれたボスをシャリがとどめを刺した。ボスが煙になって消える。

「なんで死体は煙になって消えるのに臭いは残るんだろうね」

「お兄ちゃんクリーンしてよ」

「シャリも」


 宝箱のトラップはアラームだったので解除して開けると金貨と小ぶりの盾。丸い盾にぐるぐると渦巻き模様が書かれている。あかりの鑑定だと防御力向上効果がついてるということだったのでシャリに持ってもらうことにした。僕はバックラーがあるし遠距離ならスコップ!があるからシャリの方がいいだろう。ちなみに巨大ヘビの口の中でぐちゃぐちゃになったスコップ!はメイが形状加工で直してくれている。


「じゃあ四階行くよ!」



 階段で「私、着替えますね」と言っていきなりメイが服を脱ぎだした。慌てて背を向けるんだけど、やっぱりそのビキニアーマー服の下に着て来ればよくない?プールのある日の学校の水着みたいに。


 四階は相変わらず湿気が高くて蒸れている。歩くと暑い。シャリが私もメイちゃんみたいなのにしようかなとか言ってるけどおにいちゃんとしては露出は控えてほしいな。


 巨大ヘビの縄張りと思われるエリアは迂回して進む。多めに迂回しているのでかなり距離が長くなっている。そして気配察知になにか引っかかった。手を上げてみんなを止める。ハンドサインであかりが偵察に行って戻ってくる。


「リザードマンが4体」

なるほど。この気配はリザードマンなのか。ここで考える。


『一応友好的にコミュニケートしてみるか、それともこないだ一人殺しちゃったんだから五人も一緒か』


さて、どうしよう。


 ぎりぎりまで近寄って草の隙間からそっと覗く。槍を持ったリザードマンがうろうろしてて、地面に何か落ちてるな。リザードマンって強いのかな。

 いきなり僕の恩恵”レベル判定”が起動した。リザードマンのレベルが表示される。こいつらレベルあるのか。ということは判定としては人なのかな。

「レベル3?」

「そうね」横であかりが同意する。


「人だとするといきなり攻撃するわけにもいかないかな」

こないだいきなり首を切り落としたのは事故だからノーカンとして。

「面倒くさいからやっちゃえば」

「教会関係者かもしれないし、一応話しかけてみるから攻撃の用意はしてて」


「はろー」

僕一人で片手を上げて挨拶。リザードマンが振り返って槍を向けてきた。


「怪しいものではないです。人類皆兄弟」手を振る。

「&U$!&)#」

言語理解の恩恵で解釈。

【あやしいやつ】

そうだよね。


「教会のほうから来ました」もう一回手を振る。こっちの言葉はわからないかな。

【さっきの仲間かもしれない】

【やっちゃいましょう】

えっとー。

【よし、かかれ!】

えー。


 三体のリザードマンが槍を持って襲い掛かってきた。腰に下げた槍を手に持って2mまで伸ばすと炎を纏わせる。

『びっくりしてくれないかな』

【なにかすごい武器を持ってますぜ】

【よし。奪え】

駄目だこりゃ。


 一体の槍をバックラーで撥ね退け、一体を槍でけん制する。しかし三体目が僕の横に回り込んで来た。囲まれる。


 そこにシャリが猛加速で突っ込んできた。シールドバッシュでリザードマンを跳ね飛ばす。槍が転がる。

「おにいちゃんはシャリが守るんだから!」

シャリはメイスを構えて転がったリザードマンに殴り掛かった。


 割と勝負はあっけなくついた。レベル3とはいえどうやら恩恵を持っていないようだ。それなら僕たちの敵ではない。一体は撲殺され一体は刺殺され一体は首が飛んだ。そしてもう一体。多分隊長みたいなちょっと偉そうにしてたやつ。シャリと目を合わせたまま動かない。催眠術に掛かっているのだろう。


 縄で縛ってから話しかけてみる。

「怪しいものじゃないです。言葉分かりますが」

どう見ても怪しいけど一応言ってみる。もう三人殺しちゃったし。

【なんだお前たち。さっきの仲間か】

さっきって何だろう。そういえば何かしてたなこいつら。


 周りを見る。僕らが倒したリザードマンが三体、僕らじゃない誰かが倒したリザードマンが三体、そして人間が三体転がっている。

「大丈夫ですか!」

人間を見てみるけど三人とも死んでるなこれ。教会関係者ではない。装備を見るに恐らく冒険者。


「うわー、面倒くさいことになった」

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