81 アンデッド
「ところであかりはどこ行ってたの?」
「ダンジョンについて聞いてたんだけどね」ふむふむ。
「このダンジョンそのものはずっと昔からあるみたいなんだけど、かなり前から三階で行き止まりになったんだって」
「ふーん」
「三階はオーガが山ほどでてくるし見返りが少ないのであまり人気ないみたい。一階二階で帰る人が多いみたいよ」
あのオーガ十体に囲まれる部屋ってトラップみたいなもんだよな。
「僕たちがあのボスを倒したからなにか変わったかも」
・・
「レベル1が四名ですね」
いつも不愛想だったダンジョンの入り口のおねえさんが今日はにっこり挨拶してくれた。よく見ると胸には集中線の入った星形のアミュレット。関係者だったのね。
「気を付けて行ってらっしゃい」
一階のボスは留守だったので二階に進む。前から人影。オークかな?気配察知すると『人だ!』
「おーい」一応手を振って敵意がないことを示す。
向こうも手を振ってきた。
近寄ると六人のパーティ。レベルは二人が3であとは2。冒険者風。
「ボスならもう倒しちゃったぜ」
やはり冒険者みたいだ。
「僕ら三階に行くから大丈夫です」
彼らは顔を見合わせてちょっとざわついている。
「三階は危ないぞ」
なんて答えよう。
「ちょっと見るだけです」
「まあ止めやしないが……」
とりあえずご親切にありがとうと言って別れる。みんな二階までしか行ってないのかな。
・・
そして三階。見た感じは前と変わらないけど。
前にいたオークが出ない。代わりに出てきたのは。
透き通った白い影。人の形をしているが地面に触れていない。すーっと寄ってくるのが二体。幽霊?
あかりが僕の後ろに隠れた。珍しく苦手なのかな。僕は一歩前に出ると槍を伸ばす。
力持ちの恩恵を得た僕は、右手一本で2m超える槍を持つと、バックラーを装備した左手を幽霊に対し構える。そして炎の恩恵で全身を炎で纏った。耐熱の恩恵があるから熱くない。槍の先まで炎に包まれている。そこでシャリが僕に攻撃力を付与する。
『いくぞー!』
幽霊は炎が苦手なようだ。炎の槍が半透明の体に突き刺さると大きな手ごたえ。攻撃してきたもう一体を燃えるバックラーで弾く。炎が散って幽霊は弾かれたように下がる。
下がった幽体にメイのチャクラムが命中した。僕は炎の槍を両手で持つと、幽体に突き刺し、抉った。一体が消し飛ぶ。さっき弾いたもう一体にも槍を突き刺すと同じく消し飛んだ。
「なんとかなるね」
「おにいちゃんすごい」
・・
「ボス部屋よ」
幽霊をかき分けて進んだ先、両開きの扉の前であかりがこっちを向いて胸を張る。
「幽霊がいっぱいだったらどうする?」
「開けたらドッカンしちゃうからあとは成り行きで」
あかりが雑な作戦を提案。僕とシャリとメイは攻撃力付加。そして。
「覚醒!」
僕が叫ぶと全員に能力向上バフが掛かる。僕とシャリが並んで扉の前に立つ。
「お邪魔しまーす!」
そこは墓場だった。墓石が並んでいる50メートルほどの広間だ。奥の方にはひときわ大きな墓石というか祠かな。
墓石のある地面から染み出すように白い幽体が現れてきた。そして僕らの目の前に地面からカチャカチャと骸骨が組みあがる。
「マジックボム!」
あかりが詠唱破棄で呪文をぶちこんだ。部屋の中央部でエネルギーが解放される。白い光の塊が広がり、墓石や幽体や骸骨を飲み込んでいく。
ドガーン!
衝撃波と爆風を耐える。骨がばらばらと吹き飛んでくる。幽体もスケルトンもいなくなった。
「行くぞ!」
僕を先頭に固まって進む。あかりが僕の後ろにぴったりくっついている。左はシャリ。右はメイが固める。
地面がボコボコと盛り上がり、いくつもの腕が伸びてくる。そして頭と上半身が続く。ゾンビ?とかそういう感じかな。腐った死体。10を超える動くそれが地面の下から現れる。
「まかせて!」
メイが紙のお札を投げるとなにかを唱える。お札はむくむくと大きくなって四つ足の動物の姿になった。車ほどもある白い巨体。頭に一つの角。サイ?
現れたサイは猛然と前に向かって走り出した。ゾンビを引き倒し墓石を蹴散らす。そのまま前方の祠に激突。石が飛び散る。
崩れた祠から白い影がふわっと現れた。じわじわと人の姿を取る。こちらに何か叫んでいる。
「よーくーもーわーたーしーのー」ボスの登場シーンだ!
ボスのセリフの途中にサイが突っ込んだ。白い影が跳ね飛ばされる。そこに。
「マジックボルト!」
クールタイムが終了したあかりが詠唱破棄で魔法を撃ち込む。エネルギーの奔流が白い影を飲み込む。やばい。僕なにもしてないで終わっちゃう。槍を両手で構えて伸ばすと炎を纏わせる。
『縮地!』
間に合うか。まだボス死んでないよね。
結局僕の攻撃ではとどめにならず、そのあとシャリがボコボコに殴ってとどめを刺した。簡単にはレベル4にならないなあ。
「宝箱ね!」
・・
宝箱の罠は開けると警報が鳴るタイプ。これ以上幽霊が集まるのも嫌なので慎重に解除。
「金貨と、指輪だな」
持って帰ってからということで、全員余力を確認。まだ大丈夫かな。粉々になった祠の裏に扉がある。次の階に行く階段だろう。
「それじゃ、四階へ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます