第二部第九章 二つのダンジョン

79 プレゼン

「みんなでプレゼンしましょう」

メイが言い出した。

「プレゼント?」

シャリが聞く。


「違いますよ。自分のレベルを上げたらどんな良いことがあるか説明するんですよ」

「私のレベルを上げるのが筋だと思うけど、どうせ私が勝つから受けて立つわよ」

あかりがフラグっぽい発言。


「えーシャリはやっぱりえっと」

「多数決にしましょう。はい2対1」

フラグを立てたあかりが押し切った。


・・


「ゴーレム作成です」

メイが発表した。

「利点としては戦闘要員になります」

それはありだな。僕たちは防御弱いし。


「ゴーレムなんて作れるの?」

あかりが聞く。

「それはこれから調べます」

うーん。実現性に難有りかも。


「それでは私ね」

あかりの番。

「レベル7になったら上級攻撃魔法が使えるようになるわ」

「今レベル5だよね」

「レベル6にならないとレベル7になれないでしょ。投資フェーズよ」

女子高生っぽくない語彙だな。


「ちなみにだけど上級攻撃魔法ってどういうの?」

「星を召喚して街を滅ぼしたり」

えーと。


「シャリはね、毒消し」

「シャリじゃなくてお兄ちゃんでよくない?」

あかりが言う。僕は何でも屋扱いですね。


「それだとおにいちゃんが毒で倒れたら治せないよね」

確かに、シャリは状態異常耐性があるから一番毒を食らいにくい。


「メイとシャリのどっちかで考えたいなと」

「お兄ちゃんには長期的視野が足りてないわ」



 夜。僕らはメイの部屋でベッドを二つくっつけて四人で寝ている。並ぶ順番決めも大変で、シャリは僕の横じゃないと眠れないと譲らず、メイは婚約者なんだから僕とメイが一緒でシャリとあかりは別のベッドでとか言うし、結局毎日くじ引きになった。


 今日は右の端という比較的静かなポジションで三人に背を向けて寝ているわけだが。隣はあかり、メイ、シャリの順。


「お兄ちゃん🤍」

あかりがぴったりとくっついて僕の背中に胸を押しつけてきている。メイよりちょっと柔らかいんだよな。いやそういう事じゃなくて。


「あかりちゃん、色仕掛けは良くないわよ」

後ろの方でメイが囁く声。


「こうしちゃうんだから」


 僕とあかりの間、つまりあかりの胸のところにメイの手が入ってきた。僕の背中にはメイの手の甲が当たっている感触。なんかモゾモゾ動いている。


「あかりちゃん柔らかいわねl」

「あっ」

「どう、気持ちいい?」

ゆっくりとした手の動きが背中に伝わってくる。

「耳も可愛いわね」

「あっそこは」

「舐めちゃおっと」

「んはあん」


『すいません寝かせてください』


・・


「ていうか、宝箱から本が出なかったっけ」

「覚えてた?」

あかりがしらばっくれた。


「何の本だったの?」

「カミノカミだって」

「何それ」

「鑑定だとエンチャント系呪文ね。私はそういうの苦手なのよ」

「何か違うの?」

「なんかせせこましくない?もっと魔法ならドカーンと」

「わかんないけど僕たちなら誰に向いてる?」

「メイだけど」

「じゃあメイでやってみたら良くない?」

「だから嫌だったのよ」


・・


 翌朝。というか早朝。


 メイに例の本を読んでもらう事になった。例によって書かれた文字が光って消える。メイによるとどうも生産系らしい。


「それじゃあとはレベルアップだね」

メイの顔をチラッと見る。なぜだかちょっと恥ずかしい。

「ではシャリさんとあかりちゃんはしばらくご退室を」

「えー」

二人はブーブー言いながら出て行った。


「ようやく二人きりになれましたね」

「そうだね」

気配察知によるとドアの前で二人とも聞き耳立ててるけどね。


「どうしたらいいんですか?」

メイに手順を説明する。

「最初メイが上でよだれ多めでドバドバ―っとお願い。そこから僕の耳を塞いでぐちゃぐちゃっと」

「やっぱりそういう趣味だったんですね」

趣味じゃなくて手順だから!


「合図したら僕が上になるから僕からも唾液多めでぐちゅぐちゅっとやるからそれは受け入れてほしいんだ」

「質問ですけどよだれと唾液って違うんですか」

「まあニュアンスの問題かな」


 僕はベッドにごろんと横になって仰向けになる。僕の頭の両脇にメイが手を付いてのしかかってきた。

 メイの寝巻の襟ぐりから胸の谷間が見える。上を向いても形が崩れないメイの胸だけど下を向くと重力を感じるのはなぜなんだろう。天井をバックにメイの顔の両脇からベッドまで黒髪が流れる。目が合う。メイがかすかに微笑んでる。そして。


 メイが落ちてきた。僕の頭を抱きしめると、その口が僕の唇を激しくむさぼる。

『最初から飛ばすなぁ』

舌が僕の唇を割って口に入り込んで来た。僕もちょっと口を開いて迎える。舌と舌が絡む。さっそくべちょべちょな感じ。それもあれなんだけど胸の重圧がすごいね。質量を感じる。


 そして三分ほどべちょべちょ。耳忘れてない?僕は手を伸ばしてメイの頭に両手のひらを合わせちょんちょんと耳を押さえてみる。

 メイが思い出したかのように僕の両耳を塞いできた。べちょべちょがグチョグチョした音になって頭の中に響く。そろそろいいかな。背中を軽くたたいて合図。


 全然止まらないんですけどー。


 しょうがないからベッドの反発力を使って格闘スキルでひっくり返した。メイの両脇に肘をつくと、その耳を両手で押さえて塞ぐ。今度は僕がメイの口の中に舌を差し込む。メイの足が僕の足に絡みついてきたんだけど。えっと、これを三分だっけ。グチュグチュグチュ。

 メイが頭をゆすりながら「あ」とか「う」とか言いながらピクピクしてるけど大丈夫だよね。じゃあそろそろ。


レベル接続コンタクト!』


 メイは僕を受け入れている。メイと僕との間にレベル回路が形成される。


レベル譲渡トランスファー!』


 メイのハアハアという息遣いだけが聞こえる。僕もちょっとぐったりしてメイの上に乗ったまま深呼吸。なにか出し切った感。


「どう?」

静かになったからか、あかりとシャリが入ってきた。


「成功してるわね。私の手順書で正しかったじゃない」

「メイちゃんいつまで抱きついてるのよ」

僕はメイの顔を見る。目と目が合う。メイは僕の頭を自分の顔に引き寄せる。


 チュッ。


「今のは手順にないわよ」


――


フィン:レベル3(down)(人間:転生者)

・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上、罠スキル、炎、クリーン、テイム(妖精)、言語理解、耐熱、隠ぺい、盾術、力持ち、覚醒


シャリ:レベル5(人間)

・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術


あかり:レベル5(エルフ:転生者)

・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング、詠唱破棄


メイ:レベル6(up)(人間:転生者)

・恩恵:衣装製作、アイテム化、投げナイフ/ダーツ使い、エンチャント、形状加工、紙の神(new)


――

プレゼンをするあかりちゃんの挿絵はこちら

https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330652781621119

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