73 もう一つのダンジョン
一方そのころ。あかりは隠密をかけて教会に侵入していた。フィン達の後をつけて入ってきたのだ。レベル6のエルフであれば徒歩でも馬車を追跡するなどたやすいし、隠密を掛ければほぼ人には気が付かれない。教会は迷路のように入り組んでいるがあかりにはマッピングがある。
ダンジョンがあった丘と同じく、こちらも頂上には塔が立っている。塔の中に入ってみると奥からちょうど一団の者たちが出てくるところだった。武装して鎧を着た集団。
「今回はレベル上がらなかったなー」とか言っている。やはりダンジョンか。
入れ替わりでこっそりと奥に入ると。両開きの扉が開いている。チャンスかもしれない。あかりはそっと扉から奥に入る。地下に伸びる穴。
・・
やはりダンジョンだった。よくある岩壁。いまのところ魔物は大ネズミや大コウモリ。そしてスライム。相手にせずそっと奥に向かう。隠密は音で探知する相手にも有効なのだ。一応ボス部屋を開けてみるがいない。ちょっと進んでみよう。
地下二階にはオークがいた。このぐらいの相手だともはや何匹倒そうがレベルは上がらないので無視する。こういうところはソロの良いところだ。万一戦闘になったら困るが数回であれば魔法も使える。多少の傷であればヒーリングポーションもある。ここのボスも空だ。さっきのパーティが倒してしまったのかも。
そして地下三階。やはり岩壁が続く。少し緊張してきた。相手によってはこの辺で引き返したほうがよいかもしれない。一応確認だけでもと、そっと通路わきの扉を開いてみた。何もいないが、奥になにかある。宝箱かもしれない。近寄ってみる。
突然、周りでカタカタという音を立てて地面から骸骨が組みあがって来た。スケルトンだ。7,8体はいるだろう。
『アンデッド?!』
アンデッドは生命のエネルギーを検知する。隠密は効かない。斥候系魔法使いのあかりには相性が悪い。
「マジックミサイル!」
マジックミサイルを打ち込むと、出口を塞いでいた数体の骸骨がガラガラと崩れ落ちる。転がり出るように扉を開けて通路に出る。
『!』
そこにいたのは幽体だった。いわゆる幽霊。半透明の幽体が何体もあかりのほうに音も出さずに寄ってくる。
『最悪!』
幽体は特殊攻撃を持っている。触られるわけにはいかない。マジックミサイルを連射して道を開ける。出口に向かって走る。
『なんでよ!』
出口前の広間に幽体が群れを成していた。あそこに突っ込むわけにはいかない。そして後ろからも幽体がやって来る。挟まれた。
一瞬頭を巡らすが、もう出口を切り開くしかない。
ᚠᚱᚮᛘ ᛒᛂᛐᚥᛂᛂᚿ ᛐᚼᛂ ᛚᛁᚵᚼᛐ ᛆᚿᛑ ᛐᚼᛂ ᛑᛆᚱᚴᚿᛂᛋᛋ, ᚠᚱᚮᛘ ᛐᚼᛂ ᚡᚮᛁᛑ ᚮᚠ ᛐᚼᛂ ᚢᚿᛁᚡᛂᚱᛋᛂ, ᛒᛂᛐᚥᛂᛂᚿ ᛐᚼᛂ ᛐᛁᛘᛂ ᛆᚿᛑ ᛐᚼᛂ ᛋᛔᛆᛍᛂ, ᛐᚼᛂ ᚠᛁᚠᛐᚼ ᚵᚱᛂᛆᛐ ᛔᚮᚥᛂᚱ ᛋᛔᚱᛁᚿᚵ ᚢᛔ ᛐᚮ ᛐᚼᛂ ᛔᛚᛆᛍᛂ ᚥᚼᛂᚱᛂ ᛁ ᛍᚮᛘᛘᛆᚿᛑ・・
詠唱を開始する。後ろから幽体が来るがどうしようもない。なるべく早く唱える。幽体の手が背中を触る。冷たい、凍るような手が体の中に入ってくるよう。力が抜けていくが気力で詠唱を続行する。さらにもう一撫でされた。体が冷たくなる。倒れそうだ。根性で最後のワードを唱えた。
「マジックボム!」
そのまま倒れる。広間に純粋な魔法のエネルギーが発生する。白い輝きが辺りを包み込むとそのまま広がって。
ドガーン!
爆炎が身を焦がし、爆風が体を痛めつける。とにかく立ち上がり、出口に向かう。走っているつもりだがその歩みは遅々としている。それでも前に進む。
「お兄ちゃん……」
たすけて。
◇
「どうして助けに来てくれないのよ!」
あかりは帰ってくるなり僕に怒鳴りつけてきた。なんかものすごく怒っている。
「シャリの時は助けに行ってたじゃない!」
「え?」
あかりは焼け焦げたうえぼろぼろの恰好をしている。不思議と傷はないが。
「ケガはない?」
「おかげでヒーリングポーション飲んじゃったわよ」
「効いた?」
「トロールの味」
どんな味だろう。
あかりの怒りながらの説明を聞くと、教会の地下のダンジョンを見つけて入ってみたら地下三階で大変な目にあったらしい。さらに帰り道に出口の扉が開かなくて魔法で吹っ飛ばしたみたいだ。
「ダンジョンの位置を確かめるとは言ってたけど入るなんて言わなかったじゃない」
「ちょっと確認しただけでしょ」
「地下三階まで?」
「悪い?」
こういう時は逆らってはいけない。今更遅いけど。
「あかりは頑張ったね。僕はいつもあかりの頑張りを見てるよ」
「だったら!」
あかりは僕に怒鳴りつける。
「私のレベル戻してよ!」
「え?」
あかりのレベルを確認するとレベル4になっている。なんで?
「アンデッドにレベルを吸われたのよ!」
あかりがぶ然として言う。
「しかも2回とか、なくない?」
「そんな気を落とさないで」
「レベル4とかもうソシャゲのクズレアみたいなもんでしょ!」
「そんなことないから」
「あるわよ!」
◇
とりあえずはあかりをレベル5にすることになった。もう死ぬとかずっと泣きわめいてるし。レベル4で死ぬんなら僕なんてどうなるんだよ。
「出てってくれない?」
「ここは私の部屋なんですけど」
あかりとメイが押し問答している。
王都に来てから僕らはメイの家に居候してる上、メイの部屋にベッドを追加して寝ている。最初は客間という話だったんだけど、メイが婚約者なんだから僕と一緒じゃないとダメと言い出して押し問答となり、最終的に四人で寝ることになったのだ。というわけでここはメイの部屋。
「もういいわよ。お兄ちゃん早く」
水浴びをして着替えたあかりがベッドにごろんと横になっている。メイが作ったレースのネグリジェを通して白い肌が見えてるんだけどその肢体は幻想的というか、なまじっか丸見えよりドキッとする。
僕はあかりのスケスケを見ないようしながらに脇に寝ころぶ。なぜか僕とあかりを挟むようにシャリとメイがベッドの左右に座り込んでいる。
「なんかの儀式みたいで緊張するんですけど」
「ほら始めるわよ!」
あかりはそんなのもうどうでもいいみたい。
えっと、まず僕が上からあかりにキスして。手順を思い出しながらあかりに覆いかぶさる。スケスケネグリジェが気になるが、とりあえず顔に意識を集中して軽くキス。やっぱり美人だなあ。
あかりに下から抱きつかれた。ぎゅっと胸を押し付けられている。なんかこのやわらかい感じ久しぶり。
僕はあかりに抱きつかれたままベッドをごろっと転がる。僕の上に乗ったあかりが僕の口に唇を合わせる。その舌が僕の唇の間に入り込んでくる。右手をあかりの頭の後ろに置いて体に力を入れてさらに反転。左右から手が伸びてきて手伝ってくれた。今回はそういう感じなの?妙に恥ずかしいんだけど。
僕が上側になったので、そのまま舌をあかりの口に挿し入れる。
「ぷはぁ」
あかりの喉から息が漏れる。舌をぐりぐりと舐めると僕の唾液があかりの口に流れ込んでいく。もういいかな。いいよね?
『
あかりが僕を受け入れる。あかりと僕との間にレベル回路が形成される。
『
「横に人がいると変な感じ」
僕の率直な感想。
「そういえばおねえちゃん恩恵は?」
シャリが聞くとあかりはにやにやしている。
「レベルは下がっちゃったけど、まあ、今はいいわ」
――
フィン:レベル2(down)(人間:転生者)
・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上、罠スキル、炎、クリーン、テイム(妖精)、言語理解、耐熱、隠ぺい
シャリ:レベル5(人間)
・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術
あかり:レベル5(down)(エルフ:転生者)
・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング、詠唱破棄(new)
メイ:レベル5(人間:転生者)
・恩恵:衣装製作、アイテム化、投げナイフ/ダーツ使い、エンチャント、形状加工
――
自分の火力で大変なあかりちゃん挿絵
https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330652730634091
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