64 ゴブリンキングキラー

「メイちゃん、レベルアップおめでとうー」

「お兄ちゃんはもう下がっちゃったけどおめでとう。あ、無礼講ね」

「すいません、私のせいで」

「無礼講だからいいのよ」

「そういうもの?」


 メイの新しい恩恵は形状加工といって、素材があればなんでも加工できるらしい。3Dプリンタみたいな感じだな。それだけじゃなくて羊毛から布みたいな加工も可能とのこと。これで原料から服まで一気通貫。コンビナートみたいになってきたぞ。



 ところで。


「父さん、僕たち、メイを家まで送ってくるよ」

「そうか。メイちゃん帰っちゃうのか。寂しくなるな」

「僕らもいつ戻れるか分かんないけど大丈夫かな」

「フィンももう大人だからな。ここは母さんと一緒にやっていくから心配するな。父さん飲食業について掴んだ気がするんだ」

なんか心配になる事を言い出したぞ。


「そうそう、あかりがエルフ式の挨拶を教えてくれたんだ」

「何の挨拶だって?」

「いいからいいから」

僕は父さんの顔を左右に手で固定するとおもむろに口を合わせる。

 ぶちゅー。

レベル接続コンタクト!』『レベル譲渡トランスファー!』

はい完了。


「シャリ、エルフ式の挨拶のところからお願い」

「おとうさん、シャリの目を見て」


・・


「父さん、やっぱり飲食業で食っていこうと思うんだ」

この後、父さんの料理が劇的に美味しくなった。やっぱり恩恵すごいな。



 僕の方はレベル1に戻ってしまった。さっさとレベル上げしないと。

 いつものダンジョンを軽く流す事になった。あのダンジョンのその後も気になるしね。朝みんなで集合する。


「おはようお兄ちゃん」

あかりがいつものチュニックで出てきた。胸元ちょっと広いけど割と普通。なぜか髪型がポニーテール。


「おはようあかり。今日はポニーテールだね」

「えへ、お兄ちゃんわかる?」

見ればわかるでしょ。っていうかそのキャラ何?

「メイと話をして競争はもう先がないから止めようと」

一体何を競ってたの?


「おはようおにいちゃん」

「おはようございます。フィン」

シャリとメイが来た。シャリはいつものグレーのワンピースに金属胸当て。メイは……


「スクール水着?」

「大事なのは露出じゃないと思うんですよ」

こないだまで裸みたいな格好でダンジョン行ってた人の言うこととは思えないですね。

「じゃあなんなの?」

「うーん、シチュエーションかな」

「そうなんだ」突っ込むと面倒なのでこれ以上聞かない。

まあビキニより肌面積少ないけどムチムチなスク水ってある意味ビキニよりエロいな。


・・


 ゴブリンキング。なんと在室中。

「やっぱりリポップ戻ったのかな」

「でもちょっとゴブリン多過ぎですよ」


 最初の時ほどではないがゴブリンが多い。しかもゴブリンアーチャーの矢が次々と飛んでくる。メイの防壁君が早速活躍してるし僕もスコップ!で防御しながらあかりの魔法発動を待つ。水着アーマーのメイも最初は違和感あったけどだんだん慣れてきてしまった。ファンタジーすごい。


「ゴブリンはテイムできないんですか」

「数が多すぎるよ」

範囲魔法がないパーティはどうやって攻略するんだろう?突っ込むのかな?


 そうしてるとなんと火の玉が飛んできた。ゴブリンの魔法使いか。スコップ!でカバーしきれない分は庇うの恩恵を使って自分で受ける。あかりの呪文の邪魔をさせるわけにはいかない。

「熱い!」

思わず叫ぶ。よく考えたら僕レベル1だよ。耐久力向上あって良かった。

「ヒール!」

シャリが回復する。そこにさらなる火の玉。庇う!

「熱い」「ヒール」

あかり、早く!


 ゴブリンキングの部屋奥の方に白い光が炸裂した。光は瞬時に大きくなり周りのゴブリンを飲み込む。ゴブリン達は影となり光の中に消えていく。そして。

ドカーン。

遅れて爆風がやってくる。メイは既に防壁をしまって伏せている。僕はスコップ!をしっかり押さえる。爆風で飛んできたゴブリンのカケラがスコップ!にベチャッと当たる。


  ゴブリンキングはと見ると、いた!爆心地に一体の姿。


「シャリ!」

僕はスコップ!を水平に構える。シャリが僕に攻撃力付与をする。


『縮地!』


 一瞬でゴブリンキングの前に超高速移動。スコップ!が首にめり込む。ゴブリンキングの首が久々に宙に飛んだ。


 体の奥から馴染みのある感覚。今回は大きい。

「しまった恩恵!」一個は考えてたんだけどこれは2レベルアップしちゃったかも。僕レベル1だったし。


 あかりがやって来て目ざとくレベルアップに気づく。

「お兄ちゃんまた2レベルアップしてるし。ゴブリンキングキラーと名乗ったら?」

「限定的かつマニアックな通り名だな」

「それでどんな恩恵なのおにいちゃん?」

「えっと、一個は言語理解なんだけど、もう一個は耐熱?」

熱かったからかな。


 宝箱はあったけど罠は無かった。シャリがぶっ壊して開けると例によって金貨。あとゴブリンキングの王冠も落ちていたのでこれも潰して金にする。


 まだ余力はあるので二階のバグベアの酒だけ行くことにした。宴会中のバグベアを急襲する。

 メイがレベル5になって一人一個荷物をアイテム化してもあと一個枠があるので酒樽を持って帰る。僕のレベルも3になったしそろそろ充分かな。



――


フィン:レベル3(up)(人間:転生者)

・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上、罠スキル、炎、クリーン、テイム(妖精)、言語理解(new)、耐熱(new)


シャリ:レベル5(人間)

・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術


あかり:レベル6(エルフ:転生者)

・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング


メイ:レベル5(人間:転生者)

・恩恵:衣装製作、アイテム化、投げナイフ/ダーツ使い、エンチャント、形状加工

――

メイのスク水アーマー挿絵

https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330652743552196

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