第二部第六章 王都への長い道のり

63 妖精さん

「きょうだい会議を開催します」

納屋に四人で集まった。


「今日のアジェンダだけどね」

女子高生はアジェンダとかあんまり言わないよね。


「ここのダンジョンは日本に繋がってないみたいだから他を探したいのよ」

「だったらそろそろメイを一度家に帰さないといけなくない?」

僕が口をはさむ。

「もう帰らないとダメですか?」

「家族とか心配してるでしょ」


「そうなんですが帰ると今みたいな冒険ができなくなっちゃいます」

「えーっと、でもこのままってわけにもいかないしそこは説得してなんとかしようよ」

「まあ、そうですよね」

メイは思案顔だ。


「それじゃ、メイも帰るんだったらレベル上げちゃいましょう」

相変わらず僕の意思は関係ないのね。

「メイちゃんばっかりおにいちゃんとイチャイチャしててずるい気がする」

「あんた達いつも夜中にイチャイチャしてるでしょ」

僕に風評被害来たよ。


「僕からもアジェンダが」

ということで、留守になる父さんと母さんのレベルを上げることを提案する。

「それでなんだけど、いま僕がレベル3で、メイのレベルを上げると2になるじゃない。父さんと母さんは二人ともレベル2だから、どっちも3にするには足りないんだよ」

「それじゃ、さっさとやっちゃってダンジョン行くわよ」



「みんな納屋から出てくれる?」

「いつも人前でやってるじゃない」

「レベル4以上は恥ずかしいんだよ」

とりあえずあかりとシャリを追い出す。


「じゃあメイ、これから手順を説明するから」

「ちょっと待ったー」

あかりが入ってきた。

「メイ、ちょっとこっち」

あかりがメイを連れて出て行ってしまった。しばらくしてメイが帰ってきた。


「あかりちゃんがこれを着なきゃ駄目だって」

シャリのグレーのワンピースだ。新しいのを用意したのか。


 メイの身長は150cmないぐらいだからあかりよりは低いけどそれでも135cmのシャリが着てピッタリの服だ。普段でも着る服がパツパツのメイが果たして着れるのか。

「よく入ったね」

「胸が苦しくて」

胸の部分がパンパンに膨らんで乳袋というより乳風船みたいに張り詰めている。この服よく伸びるんだな。あとお腹の辺りもピタピタで下腹部の膨らみが生々しい。


「そのワンピース同じの持ってたよね?」

「あかりちゃんがシャリさんのじゃないとダメだって」

なんのこだわりなんだろう。あかりは自分にも他人にも厳しいな。


「それじゃ手順を説明するから」


・・


「分かった?」

「精一杯一生懸命頑張ります!」

なんかテンション高いな。レベル上がるの嬉しいのかな。

「そうだ、あと一つ」

「何でしょう?」

「欲しい恩恵を念じるのを忘れないでね」

「もちろん無問題」


 メイを干し草の上に横たえる。仰向けになっても全く形が変わらない胸の膨らみがいつもながらすごい。

 メイの横に寝転んでそっと半身で覆いかぶさる。間近でメイの顔を見つめる。いつもは体に目を取られるけどこの子は黒髪だし色白だけどアジア系で身近な美少女感あるんだよな。いや実際アイドルにいたら人気出そう。


 メイが目を閉じて口を半開きにしている。本当にこんな子にキスしていいのかといまさらだけどちょっと戸惑った。シャリやあかりは美少女だけどそうは思わなかったのに。

『えい!』

唇を合わせる。その時メイの腕が僕の頭にしがみついてきた。唇を合わせたまま頭が固定されて動かせない。

「モゴモゴモゴモゴ(ここで反転なんだけど)』


 メイが離してくれない。しょうがないので僕からメイに抱きつく。なるべくピッタリと体を合わせるとやっぱりムチムチ感がすごいな。気にしないように干し草の中でメイの体の下にしっかりと腕を回す。そして勢いをつけて。

『えいやっと』

自分の体をメイの向こう側に転がるように勢いをつけ干し草の中で転がり、二人の体勢が入れ替わる。


 メイの舌が僕の唇に当たる。ちょっと口を開くと舌が口の中に割り込んで来た。メイの手はまだ僕の頭から離れない。

『ここからどうやってひっくり返ればいいんだろう』

体を動かそうと思うんだけどメイの胸の重さに抑えつけられて動けない。いやそんなわけないんだけど。気持ち的に。どうしよう。


『テイム!妖精さん!』

ブラウニーの気配を感じる。気配察知しながら指示を出す。

『その辺の小石を拾って持ってきて』

『それをメイの上1メートルの位置に』

『そこから落として!』

その瞬間、僕は次の恩恵を発動する。


『庇う!』

僕は瞬時にメイと入れ替わった。背中に小石がコツンと当たる。


 上になった僕の口からメイの口の中に唾液が流れ込む。そのままメイの口内に舌を入れて、ここでそろそろ。


レベル接続コンタクト!』


 メイはもうピクピクとしか動いてないけどまあいいや。僕とメイの間にレベル回路が形成される。


レベル譲渡トランスファー!』


『メイ、終わったんだけど』

メイが僕にずっと抱きついたまま離れない。両手に両足も使って下から僕に絡みついている。弾力のある体の密着感がすごい。

『ま、いっかか』

左手で抱きしめられたまま右手で頭を撫で続けた。しかしこの弾力感すごいな。


「おにいちゃん、長い!」

「手順をちゃんと守ってよ」

「好」



「ところでなんだけど、お兄ちゃんの新しい恩恵説明してよ」

そういえばなんかうやむやだったな。


「えっと、僕はこれで恩恵18個目なんだけど」

「「「そんなに!」」」

その時点でみんなびっくりする。


「それでまあ、恩恵って大体は技能か身体能力の極端な向上じゃない」

「まあそうね」

「で、前回クリーンの恩恵獲得したでしょ」

「うん」

「あれってどういう原理だと思う?」

「え?」

みんな考え込む。


「何もしないのに部屋の掃除が出来るとかおかしいと思わない?」

「手から火が出るのもおかしくないですか?」

「私の攻撃魔法もだけど、他の世界から力を引っ張り出すのは理屈としてはわかるわ」

僕はみんなに聞いてみる。

「それじゃ掃除は何の力を使ってると思う?」


「シャリはわかった」

黙っていたシャリが口を開いた。

「妖精さんがやってくれるの」


・・


「クリーン!」

恩恵を発動すると部屋がだんだんとキレイになっていく。

「本当だ……」

鑑定を使っていたあかりが声を出す。

「なんかいる……」

「おそらくは妖精の形もとっていない下級の何かなんだと思うけど、原理が分かってしまえば後は応用だね」


「それでどんな相手までテイム出来るの?」

あかりが聞いてくる。

「ドラゴンとか?」

「それが妖精限定みたいなんだよ」


「トロールも妖精ですよね?」

メイが口をはさむ。

「そうだね」

「じゃああのボストロールは?」

「効いてよかったよ」

「「「危ないでしょ!」」」

みんなに怒られた。


「ああいう強いのは集中が切れたらおしまいだけど、もっと普通の使い方もできるよ」

僕はカフェのキッチンにみんなを連れて行く。恩恵を発動すると机に腰掛けたブラウニーが現れた。


 汚れた食器のかごの前に立つ。

「このかごの中身をきれいにして向こうのかごに入れて」

テイムの恩恵でブラウニーに指示を出す。ブラウニーが食器洗いを始めると汚れた食器はたちまちなくなった。


「すごいけど、これってお兄ちゃんがクリーンするのと一緒では?」

「そんなことないよ」


「シャリ、そこの洗ってないカップもここのかごに入れてみて」

シャリが追加した食器も見る間にきれいになって向こうのかごに積まれていく。

「なんていうかプログラムすると実行できるみたいなんだ」

「いつまで有効?」

「ずっと」

「便利かも」


――


フィン:レベル2(down)(人間:転生者)

・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上、罠スキル、炎、クリーン、テイム(妖精)


シャリ:レベル5(人間)

・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術


あかり:レベル6(エルフ:転生者)

・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング


メイ:レベル5(up)(人間:転生者)

・恩恵:衣装製作、アイテム化、投げナイフ/ダーツ使い、エンチャント、形状加工(new)

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