第二部第四章 トロール攻略
53 メイの恩恵
「おにいちゃんの恩恵なんだったの?」
「耐久力向上?」
「なにそれ」
「HPアップ的な?」
「なんかインチキっぽいわね」
横からあかりが感想を言ってきたけど恩恵ってどれもインチキっぽいのだ。
◇
「おにいちゃん、メイちゃん、レベルアップおめでとう!」
「今日も無礼講よ」
「そういえばシャリのレベル5のパーティしてなくない?」
「でも三回目だから」
「それ言ったら僕は?」
「まあみんなまとめておめでとうって事で」
あかりがざっくりまとめる。
「メイの恩恵はなんだったの?」
あかりが質問する。それってセンシティブだから聞かないんじゃなかったの?
「私はですね、家業のですね」
「家業?」
「うちは服屋なんですよ」
メイが布を取り出す。一般的な麻布だ。
「ではこれを」
メイが撫でると赤くなった。綺麗な発色の深紅だ。多分染色して出せる色ではないだろう。なんかすごい。
「こうしてですね」
撫でると布が切断される。手品みたい。
「で、こう」
布をまとめて撫でる。
「完成です。ちょっと着てきますね」
服を持ったメイが寝室に行って、すぐ戻ってきた。
「似合いますか?」
「「えぇ!」」
僕とあかりが声を上げる。
メイは深紅のチャイナドレスを纏って、黒髪をお団子にしている。
「
「そういえば前世中国だったわね」
あかりがボソと言う。なんかそう言ってた気もするね。スルーしてたけど。
「転生って日本人だけかと思ってた」
「転生者の25%は中国人よ」
「まじ?」
「20%はインド人」
「僕たちレアじゃない?」
「フィンさんとあかりさんも転生者なんですよね」
「何でわかったの?」
「話してたじゃないですか」
そういえばブラウニーの前でそういう話してたな。
「僕たちは日本人なんだけど。元ね」
「私は中国の四川省です」
パンダがいるところだ!
「大学生だったんですけど。日本はよく知ってます」
「へーどんな事?」
「ビリビリとtiktokで勉強したからアニメとか大体わかりますよ」
「まじで」
「私、趣味はコスプレなんです」
「えー」僕の思ってた中国と違う。
◇
「兄妹会議を開催します!」
兄妹三人で納屋に集まった。なんなんだろうねこの会議。
「メイのレベルをもうちょっと上げたいんだけど」
僕が切り出した。
「おにいちゃん最近、誰彼構わずチューしすぎじゃない?」
「レイラさんはしょうがなかったしみんなも共犯でしょ?」
「まあ記憶も消したしいいかな」
シャリがさらっと怖い事を言う。
「メイはいまさら記憶も消せないし、言ったら僕らのきょうだいみたいなもんじゃない?」
「きょうだいだとしたら姉?妹?」
「そこ大事?」
「おにいちゃんまた妹を増やす気?」
シャリがジト目で見る。ちょっと怖い。
「姉かな。大学生だし」
「それならいいよ」
いいのか。
「この際だからレベリングしながら姉さんをレベル3まで上げようかと」
「姉さんって新しい響きね」
「僕は耐久力向上の恩恵取ったからレベル1になっても死ににくいとは思うんだよね」
「それは検証の必要があるわね」
「検証は別の機会に」
「とりあえずメイちゃんを呼んでくるね」
シャリが出ていった。
「ところで次回からは姉兄妹会議?」
「きょうだい会議かな?」
・・
「メイちゃんはみんなのおねえちゃんになる事に決まりました!」「パチパチ」
「私、一番歳下ですよ」
「この会議で決まった事は守らないとダメよ」
メイはチャイナドレスを着たまま困ったような顔をして立っている。
「姉さん!」
妹たちと会話している歳下の姉に話しかけた。
メイはクイっと上半身を捻ってこっちを向く。チャイナと言えばサイドのスリットからチラ見えする脚だけど上半身のピチッとしたドレスを捻った時のムチムチ感もいいよね。それと僕としては大人っぽい胸とイカ腹とのアンバランス感も捨てがたくてえっとなんだっけ。
「その呼び方はちょっと」
「じゃあメイ」
「何でしょう」
「何だっけ」忘れた。
「おにいちゃんガン見し過ぎ」
「えっとなんだっけ……」
・・
「それでレベルなんだけど」
話を思い出した。
「レベルってなんですか?」
メイに、子供から大人になるのにレベルアップが必要な事、その後もレベルが上がるごとに恩恵を授かる事を説明する。
「それで、レベルアップのためには魔物を倒すのが手っ取り早いんだけどね」
「私も教会で魔物を倒せと言われました」
「もっと簡単には、お兄ちゃんとね、ダンジョンでやった事をやればいいのよ」
あかりが横から入ってくる。
「えっと、それって」
メイの顔がパーっと赤くなる。
「初々しいわね」
僕たちそういうの全然なくなったよね。
「おにいちゃんにはそういう恩恵があるんだよ」
シャリがドヤ顔で言う。
「でも私、恩恵はもう授かったからいいのではないでしょうか」
「初々しい上に奥ゆかしいわね」
「メイは欲しい恩恵ないの?」聞いてみる。
「そう言われても咄嗟には」
ふとこの間ダンジョンで拾った本に目が止まる。バグベアの宝箱のあれ。
「それじゃこの本試してみない?」
「いいんですか?」
いいんじゃないかな。なんか怪しい本だし。妹たちもしばらくはレベル上がらないだろうし。
「何事も実験だよ」
◇
例の本を呼んでもらう。読み終わると文字が光って消えた。それっぽいぞ。
「何かの作り方みたいです」
「やっぱり生産系なのかな」
とりあえずメイを立たせる。黒髪ロリ巨乳という表現がピッタリくる。ほんといろんなところがぱっつんぱっつんだなこの子。
「ほら抱きしめてちゅー」
あかりが投げやりに言う。メイの前に立つ。目が合う。えっとえっと。
黒髪の姉は微笑みながら抱きついて来た。僕との間で胸のふくらみがひしゃげる感触。質量と弾力を感じる。そして腕が僕の首に回される。近くで見るとやっぱり子供っぽいな。そしてその顔がちょっと斜めに近づいて来た。唇が触れる。僕の唇をまさぐる感触。そして。
「ぶちゅー」
熱烈なキス。僕の方からじゃなくてメイのほうから。控えめだと思ってたら意外と積極的だな。僕も舌を、じゃなくて。レベル1だから軽めでいいよね。
『
メイは目を閉じているが、その唇は今も僕の唇をまさぐっている。僕とメイの間にレベル回路が形成されてもメイの唇の動きは止まらない。
『
メイがさらに強く僕にしがみついてくる。
「ん、ん、ん」喉の奥から伝わる声のようなものが僕だけに聞こえる。
もう
「ちょっとおにいちゃん、いつまでやってるの」
シャリが声をかけるが聞こえてないようだ。流石にちょっと恥ずかしくなってきた。
メイの頭にそっと手を伸ばして頭を撫でると目を開いた。ようやくと唇を離してくれた。なんかぽわんとした表情。
「あ、あたし、ごめんなさい」
「いや別にいいんだよ。それより恩恵は?」
「えっと、授かりました」
メイはにっこり微笑むと、ようやく僕を抱きしめていた腕を緩めた。胸の感触が離れる。ちょっと残念。
シャリが僕を睨んでるんだけど。僕悪くなくない?
「おにいちゃん飛ばし過ぎ」
「そうよ。素人なんだから手加減しなさいよ」
「好吃」
「なんか言った?」
「いえ。後で恩恵を試してみますね」
――
フィン:レベル1(down)(人間:転生者)
・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上、ロケート、手斧使い、スコップ、庇う、耐久力向上
シャリ:レベル5(人間)
・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド、状態異常耐性、催眠術
あかり:レベル6(エルフ:転生者)
・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法、隠密、耐寒、マッピング
メイ:レベル2(up)(人間:転生者)
・恩恵:衣装製作、アイテム化(new)
――
挿絵はメイのチャイナドレスです
https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330652761457975
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