第一部 終章

第34話 財宝

「宝探しね!」


 あかりの宣言で始まった家探しによって、いわゆる宝箱が見つかった。そうとしか言いようがない箱。

「鍵が掛かってるな」

従卒達がスコップで箱ごと叩き壊した。トラップはなかったみたい。

中身は主に金貨。数千枚あるかもしれない。


 そして武器庫。前にホブゴブリンが持っていたような剣が大量に出てきた。残念ながら槍の出物はなかった。あとはアイアンゴーレムの残骸も回収する。金属は貴重なのだ。あれは倒すと消えるモンスターではなく設備だったらしい。


 あとはドロップだが……

 ゴブリンキングの王冠が転がっている。金色をした、マンガの王様がかぶっていそうな王冠だ。


 あかりが鑑定する。

「あんまり良くないものの力を感じるわ」

「触っても大丈夫かな」

「触るぐらいなら」

あかりはひょいと王冠を手に持つ。


「フッ、フッ、フッ、遂に復活の時が来た。今こそこの世界を混沌の中に」


 あかりがブツブツ言い始めた。ギョッとしてあかりを見る。


「冗談よ」

あかりは王冠を放り投げた。


「シャリ、潰しちゃって」

王冠はシャリのメイスで潰されてただの金になる。


「これでこのダンジョンはクリア?」

「そんなわけないでしょ」

「そうなの?」


 あかりはにっこり言う。

「ここはまだ一階よ」


・・


 騎士団本隊の到着を待つ。戦利品の回収班だ。


「ところで分け前の分配はどうするの?」

僕は気になっていた質問をする。相手は領主だ。難癖つけられて端金でうやむやにされないだろうか。

「3人3人だから半々だろ。ルールだからな。名誉の問題だ」

あ、それでいいんだ。いい人達だな。

 金目の物以外は騎士団に譲った。


「いやー結構儲かっちゃったな」

「あ、そうだお前ら」

ウェンが一言。


「後で税金かかるから使い過ぎるなよ」



 このダンジョンは男爵領の所有となり、一般にも公開されることになるそうだ。


「お前ら王都にでも行ったら儲かったって宣伝しといてくれ」

「いやー僕らしばらくこのダンジョンで冒険するよ」

「そうか。ならそうしてくれ」

ウェンはニヤッとして言う。

「年間入場券だと割引だからな」


・・


「お兄ちゃん、ダンジョン行くわよ!」

「なんかハルヒっぽいぞそれ」

「年間パスなんだからいっぱい行かないと損でしょ」



「お兄ちゃん、シャリ、レベルアップおめでとう!」

「ありがとう。ようやくちゃんとしたレベルアップだよ」

「シャリは二回目だけどね」


 前回のシャリレベル5の時のギスギスした感じを思い出した。


「今日も無礼講だよ!」

「前のことは水に流すわよ」

「流される側なのでは」

「お兄ちゃん、小さい」


「まあでも……」

あかりは感極まったように呟く。

「ついに人類の偉業だわ」


「しばらくレベル上げに専念しようかと」

「人類のために貢献しなさいよ」

「エルフでは?」

「差別はよくないって」



 見つかった金貨や武器は全て古代ローヌ帝国のものだった。


「古代ローヌがダンジョンを作ったのか、ダンジョンを利用して古代ローヌが発展したのか」

「後者だと思うわ」

「だろうな」


 ダンジョンは人類がどうにかできる技術ではない。いわゆるオーパーツだ。

 この地もダンジョンがあったから古代ローヌは進出してきたのだろう。そして何かの原因でダンジョンが枯渇し、ただの僻地となったのではないか。


『温泉みたいだな』


――

次回第一部最終回!


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