第35話 続
「耳、触らないでいいの?」
あかりに納屋に呼び出されて、何だろうと思ったらそんな質問だった。そういえば前にそんなこと言ったな。あの時はやたらに顔を赤らめていたのでエルフの文化的コンプラに抵触したのかと思ってしばらく触れなかったんだけど。一応聞いてみようかな。
「エルフにとって耳を触るってなんか性的な意味合いあるの?」
「何それ?」
あれ?
「耳を触っていいのは恋人だけとか」
「エルフは性的なシンボルを剥き出しで生活してるのかという質問?」
質問に質問で返されたぞ。
「エルフにおける異性の耳を触ることの情緒性かな」
ソフトに言い直す。
「人が寝てる時に耳の穴舐めといてなに情緒とか言ってるの?」
「あかりも僕の耳の穴舐めてたよね」
素早い切り返し。
「ノーカンにしとくわ」
あっさり終了。
「じゃあ回答は?」
「人間と一緒よ」
あの赤らめた顔はなんだったんだろう。
あかりが髪をかき分けて耳を出す。
「触りたいなら触ってもいいけど、敏感だからそっとね」
髪の毛を割って出ている耳の尊さは異常。
「じゃあ早速」
コリコリ。
『これはやっぱり軟骨かな。いやこの部分だけでなく全体との比較をしないと』
「あ、ん、」
「なにやってるんですかおにいちゃん」
いきなりシャリが現れた。どこから来たんだろう。
「えっと、異文化コミュニケーションの実践かな」
「それなら次はシャリの番ですよおにいちゃん」
シャリも金髪をかき分けて耳を出してきた。金髪からぴょっと生えている耳が尊い。
え、これ触っていいんですか?
手を触れようとすると、頭の中に声がする。
(・・ いまおにいちゃんの心の中に直接呼びかけています ・・)
はい。
(・・ シャリの耳も舐めるのです ・・)
えっと。
◇
「兄妹会議を開催します」
「いえー、パチパチパチ」「ぱちぱちぱち」
「前から思ってたけどこの会議って何を話し合ってるの?」
「人類の資産の有効活用についてよ」
「おねえちゃん主語が大きくない?」
「今回お兄ちゃんがレベル4になったので次のレベル譲渡の相手を決めます」
本人の意思はないみたいなので競走馬の種馬の気分。
あかりが続ける。
「それでだけど、最後にレベル5になったのはシャリだから順番なんで次は私よね。」
「意義あり!」今回はシャリも引かない。
「先にレベル5になったのはシャリなんだからその順番でしょ」
「こないだ人間レベルじゃないって言ってなかった?」
「それを言い出したのはおねえちゃんですよね」
「私は人間じゃなくてエルフだから」
事態は平行線だ。
「こうなったらお兄ちゃんに決めてもらいましょう!」
「これは何も決まらないパターン」
「お兄ちゃん!」
「おにいちゃん!」
こういうオープンエンドも続編がありそうでいいんじゃないかな。
――
第二部に続く
――
二人の挿絵はこちら
https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330652722791156
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