第27話 検証
「やっぱりそれ着ないといけないの?」
「なるべく再現性を上げないと」
僕とシャリが納屋で待っているとあかりが帰ってきた。例のグレーのワンピースを着ている。
僕は干し草に座り込んでいる。あかりが目の前まで歩いてきた。太腿部が目の前に来る。えっと。
「そうだ、ちょっと後ろ向いてくれない?」
「?なんで?」
「ちょっと」
あかりが後ろを向く。
このワンピースはもともとシャリが着ていた。シャリは身長が135cmしかない。あかりは160cmある。当然、パツンパツンとなり、ヒップラインは3Dプリンタで成形したみたいになってる。裾位置も膝上20cmぐらいに上がったうえ伸縮性の布地が太ももの上部を締め付ける。
『これはなかなか』
太腿は前より後ろの方がたるんでいる。太腿裏のたるみに布地が食い込み、そこから解放された部分はプリっとした肉感を形成している。
『これはー』
「おにいちゃん何してるの」
「なるほどですね」
「シャリ、そこどいて」
あかりが僕の隣にごろんと寝転ぶ。干し草がもふっとなる。
「検証、始めるわよ!」
・・
あかりの横に僕も寝転ぶ。そこから半身を起こしてあかりを抱き上げる。シャリが興味深げに見ている。なんか照れるな。
「いい子だからあっち行っててくれない?」
「こないだはおねえちゃんも見てたじゃない」
「納屋の中の時は見てなかったでしょ」
「本当に?」
「聴いてたけど、見てないから」
「うーん、しょうがないなあ」
シャリが納屋から出て行った。聞き耳を立てているのだろう。
「えーっとここからお兄ちゃんが先で次に私でその後は……」
あかりにゆっくりと唇を合わせ、離す。。あかりはちょっと目を大きく開くと、そのまま僕にのしかかってくる。あかりの唇が僕の唇を包む。その舌が僕の口に入ってこようとする。
僕は体に力を込めて反転させ、あかりを下に巻き込む。藁の中にあかりの体が埋まる。あかりを抱きしめる。その喉からびっくりしたような声が漏れる。あかりの舌を僕の舌が押し戻す。僕の舌があかりの口の中へと入っていく。上下の歯が開く。ゆっくりと割って入る。舌が絡まる。そして僕の唾液があかりの口の中に。あかりが僕を迎え入れる。体の奥からこみあげてくる。
『
え?
あかりと僕との間にレベル回路が形成される。
『
まじ?
「やればできたじゃない!」
あかりは感極まって嬉し泣いていた。顔をクシャクシャにしているのに美人だった。
◇
「おねえちゃん、レベルアップおめでとー!」
「今日は無礼講だよ」
「ありがとうございます。みなさまのご支援により今日この人生最良の日を迎えることができました。ひとえにこれは私の日頃の努力のたまものであり」
「おねえちゃん、人間がここまで喜べるのかってぐらいうれしそうね」
「エルフだけどね」
「……この日のために日々の鍛錬を欠かすことなく」
「そうそう、僕の槍、明日できるって」
「楽しみだねおにいちゃん」
「……また地域社会の人々との触れ合いも大事に」
「あ、ウェンさんだ」
家の外を気配察知した。よく知っている人であればわかる。
「フィン、いるか?、あ、カトリーヌ様もご機嫌うるわしく」
「シャリもいるよ」
「おお、シャリさん。その首輪似合うではないか」
「えへ」
そういう細かいところに気が付くの女たらしだな。首輪とか言ってるけど。
「今日はお祝いなんですよ」
「そうなのか。いいことがあったか」
えっと。
「……やはり思い返してみると、手順というものの重要性を改めて認識する結果となり」
「エルフの儀式らしくて」
「なるほど」
「本当は姉さんに会いに来たんじゃないの?」
「いや、まあ……」
ウェンさんは口ごもる。
「そう。まあ、なんというか、君たちにまたちょっと頼みたいことがあってな」
◇
冒険に備えてあかりと買い物に行く。あかりにいろいろ聞いて松明などを買いそろえた後、薬草のおばあちゃんのところに行く。
「冒険者用のオイルが欲しいんだけど」
冒険者が使う発火するオイルは普通には売っていない。
「おや、フィンじゃないか。こないだのはもう使っちゃったのか?」
「トロール退治したから」
「なんと、トロールとな。危なくなかったかい」
「騎士の人が一緒だったから大丈夫だったよ」
「ふむ、そうかい。それなら無茶はしないじゃろうが」
「ここ、毒消しとかそういう薬はあるのかしら?」
「おや、エルフじゃないか。珍しい」
「まあエルフなんだけどね」
「毒消しは毒に依るから材料持ってくれば作ってやるぞ」
「じゃあ今度お願いしようかな」
「しかしフィンも女連れとはな。しかもえらい別嬪さんじゃて」
「まあね」
「ふむ。そういえばあの妹の様子はどうじゃ」
「もうすっかり元気になっておかげさまで」
「それはなにより」
◇
おにいちゃんがおねえちゃんと買い物に出かけた。
「シャリは家でゆっくりしてなさい」と言われる。
『あの二人、買い物ぐらいひとりで行けないのかな』
村を一人で散策する。そうだ、体が弱かった時によく世話になった人に会いに行こう。
「おばあちゃん元気?」
「おやおやシャリじゃないか。ずいぶんと元気になったな」
シャリはおばあちゃんと雑談を交わす。
「お前さんの母さんが怪我を治しちまうからすっかり傷薬は売れなくなったよ」
「えっと、ごめんなさい?」
「いやいいんじゃよ。怪我人なんか少ない方がいいに決まっとる。わしも他の薬をいろいろ作ってみてるとこでな。欲しい薬があったら言うてみ」
「それだったらね」
「ほうほう」
「おにいちゃんが最近シャリのこと構ってくれないの」
「他に女でもできたのかい?」
「そうなのよ」
おばあちゃんはシャリの頭を撫でる。
「おにいちゃんっていうのはそういうもんじゃよ」
「シャリ、おにいちゃんに振り向いてほしくて」
「ふーむ、ならこれを飲ませてみなさい……」
薬草のおばあちゃんはアルケミストの恩恵を発動する。
◇
「ただいまー」
「おかえり、おにいちゃん。買い物は終わった?」
「うん、大丈夫だよ」
「おにいちゃん、お茶入れとくから飲んでね。おねえちゃんのはこっちね」
「うん、そこ置いといて」
「フィン、居るか?」
「あ、ウェンさんこんにちは」
ウェンさんは暇なのかうちによく来るようになった。
「私ちょっと外出ね」
どうもあかりはウェンさんが苦手みたい。
「ウェンさん、お茶でも飲んでください」
えーっと、どっちだっけ。まあいいや。
――
フィン:レベル2(down)(人間:転生者)
・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性、スタミナ向上
シャリ:レベル4(人間)
・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド
あかり:レベル5(up)(エルフ:転生者)
・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、中級攻撃魔法(new)、隠密、耐寒
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます