第六章 橋といえばトロール
第20話 レベル5
ここから後半なので人物紹介
――
フィン:主人公で転生者
日本の18歳の知識を持つ14歳。前世の記憶はない。
シャリ:妹。実際は従兄弟の子
おにいちゃん依存症。メイスで殴るヒーラー。レベル4
あかり:日本での妹を名乗る転生者
年上のエルフだが見た目は16歳。お兄ちゃん大好きだがショタコンの拗らせ系オタク。またの名をカトリーヌ。レベル4
ウェン:男爵領の騎士
あかりに助けてもらった。レベル4
――
「おにいちゃん、レベルアップおめでとー!」
妹たちが僕のレベルアップを祝福してパーティーを開いてくれた。
「お兄ちゃん、今日は無礼講よ」
無礼講じゃなかったことないよね?
とりあえず妹たちに飲み物を注いで回る。
「えーっとこれからもご指導ご鞭撻のほど」
「とにかく私たちがレベル4の先輩として指導するから」
「なんで偉そうなの」
「上のレベルの人の言うことは絶対なのよ」
「えー」
「私もレベル3の時とか思い出すと若かったなーって感じるんだけど、こういう節目の時はお祝いしないとね。まあ私はエルフだから人生長いし、まだいくらでもチャンスあるわけで、レベル4になったのも最近のことだからまずは基礎固めっていうか目の前のレベルに一喜一憂しないことが大事でそうすればレベルアップとかおのずと結果としてついくるんじゃないかって」
「あかりは頑張ってるね」
「えへへ」
「ところでおにいちゃん、新しい恩恵はどうしたの?」
「えーっと、精神耐性?」
「なにそれ?」
「うーんと、悪口言われても大丈夫?みたいな?」
「大丈夫なの?」
「多分」
「おにいちゃんキモイ」
「死のうかな」
◇
「ありがとうございまーす!」
外からあかりの大きな声が聞こえる。気配察知を使ってみたけど誰もいない。
「あかり、どうしたの?」
「あ、お兄ちゃん、おはようー!」
「誰にあいさつしてたの?」
「世界に感謝してたの!」
外には田舎の風景が広がる。田舎好きだったっけ?
「あかりちゃん偉いね」
「うふ。お兄ちゃんにも感謝!」
やばいセミナーでも行ったのかな?
「人間、レベルじゃないと思うのよ!」
いきなりどうしたの。っていうかキミ、人間じゃなくてエルフじゃね?
「そうだね」
「私分かったの」
「なるほど」
「生きるってことは、人間力を高めないといけないと思うのよ!」
「あかりは頑張ってるな!」
「えへ」
◇
シャリがこのところ元気がない。
「どうした?シャリ」
「おにいちゃん……」
寝室でうずくまったシャリが泣きそうな目で僕を見ている。僕は頭をなでる。シャリは僕を下から見上げる。というか、なんか睨んでるんですけど。
「どうしておにいちゃんはシャリを選んでくれなかったの?」
「え?」
「霧の中でね、おにいちゃんが、手を繋いでって言って」
「うん」
「シャリは、手を伸ばしたんだけど……おにいちゃんは手を繋いでくれなかった」
「おっと」
「その後で、おにいちゃんはあかりおねえちゃんと一緒だったんでしょ」
「えっと、まあ」
「おにいちゃんは、あかりおねえちゃんを選んだんだよね!」
そうなるの?いや、そうなんだけど。それは偶然であって。
「いやいやいや、そういうわけでも」目が泳ぐ。
「でも、あかりおねえちゃんの手を握ったのは事実なんでしょ」
「そう……かな……」
シャリは泣きそうな目で僕をじっと見る。あ、これやばいやつでは。
「おにいちゃんの、ばかーーー」
シャリは走って出て行った。
◇
「それを私に相談する?」
「他に相談できる人いないんだよ」
「ただの痴話喧嘩では?」
「大事な妹の心配くらいしてあげなよ」
「えー」
あかりはめんどくさそうな顔をしてこっちを見る。
「こうやって徳を積むことも人間力につながるかもしれなくない?」
「しょうがないわねー」
あかりは両手を腰に当て、胸を張ってこっちを見る。大きく開いたチュニックの胸元からはみ出そう。
「もう二人とも大人なんだから、やっちゃえばいいのよ」
「それって事案じゃない?」
「この世界では大人でしょ」
「シャリは公式には12歳なんだけど」
「誰も訴えないわよ」
「R18はちょっと」
あかりはちょっと考える。
「じゃあさあ、せめて抱きしめて、チューしてあげなさいよ」
「抱きしめて、チュー」
「得意でしょ。いつもやってるじゃない」
「あれは、恩恵の都合上そうやってるだけで……」
「あー、いちいちうるさいわねえ」
あかりは声のトーンをあげる。
「お兄ちゃんなんだからしっかりしなさいよ!」
◇
家の裏の牛小屋は、半分が納屋になっていて干し草が積んである。僕はそこにシャリを連れ込んだ。
連れ込んだっていうとなんかエロいな。
「なによおにいちゃん」
「まず話をしようよ」
「おにいちゃんはすぐ誤魔化すから!」
シャリは顔をぷんぷんとさせる。これもかわいいかも。
「シャリは怒ってるんですからね!」
・・
シャリはひとしきり怒ると怒り疲れて干し草の上にごろんと横になった。
「ほんとごめん」
「なにが?」
「シャリに寂しい思いをさせてごめん」
シャリは軽く目を閉じてちょっと口元が笑う。
「わかればいいのよ、おにいちゃん」
僕はシャリの横に座り込む。
シャリはグレーの薄地のフェルトでできたワンピースを着て、干し草の上にあおむけになっている。あかりがいつも着ているような露出の多い服ではないが、肌にぴったりと張り付いたそのワンピースは体の線をはっきり見せている。凹凸の少ない、ネコみたいにすっとした細い体だ。あかりみたいなドキドキ感はないがこれはこれでかわいいな。やっぱり天使みたいだ。眺めていて飽きない。
少女の呼吸が伸縮性のフェルトに密着した胸を上下させている。胸のちょっとしたふくらみとその頂上の微妙な突起も一緒にゆっくりと上下しているのがわかる。
いや、ちょっとドキドキするかも!
慌てて胸元から目を逸らしたところは、フェルト地に包まれたぽっこりとした丸いお腹と締まった二本の太腿。そしてその間には下腹部に柔らかい布地が重力で貼りつき陰影をなして、なんというかえっと。
シャリの横にごろんと仰向けに寝て気持ちを落ち着かせる。
『妹だから!ドキドキしないから!』
「どうしたのおにいちゃん?」
シャリが半身の寝返りを打って、その頭を僕の左胸に乗せてきた。
「こうやっておにいちゃんの心臓の音を聞くのが好きだったの」
『ドキドキしてないから!』
「おにいちゃんに謝らないといけないことがあるの」
「シャリが謝ることなんかないよ」
「あのね」
シャリは話し出す。
「あのお城の中で、偽物のおにいちゃんと一緒だったの」
僕はうなずく。
「シャリはおにいちゃんに、あかりおねえちゃんと別れてって言ったの」
え?
「おにいちゃんは分かったって言ってくれて」
えっと。
「おにいちゃんはそういう時はいつも誤魔化すから、その時、このおにいちゃんは偽物かもって思ったの」
えーとー。
「でもね、うれしかったの。おにいちゃんがシャリを選んでくれて。ずっと一緒だって言ってくれて」シャリの手のひらが僕の胸をなぞる。
「偽物でも……うれしかった……シャリの居場所があるんだって」
「シャリの居場所ならあるだろ。ずっと一緒にいていいんだよ」
「でも、おにいちゃんいつか帰っちゃうんでしょ」
「そうと決まったわけでも」
「ほら誤魔化す」シャリはくすくすと笑う。
「いいのよおにいちゃん。これは、シャリのわがまま。人はみんな自分が好き。シャリだっておにいちゃんを独占したいの。あかりおねえちゃんは好きだけどおにいちゃんは渡せないの。シャリは本当はこんなにわがままな子なの。ごめんなさい。おにいちゃん」
シャリになんていえばいいのだろう。そんなの普通だよっていえばいい?僕の心のもっとどろどろしたものを語ればいい?思考を巡らせるが、考えは言葉にならない。考えることをやめる。えっと、何したらいいんだっけ。
半身を起こし、シャリを抱き上げる。右の手のひらを頭の後ろに添えると、シャリの目がゆっくりと閉じる。うっすらと開いた口に、ゆっくりと、すこし斜めに優しくキスをする。細い、小さな体。こんな子がどれだけの苦労をしてきたのだろう。僕はどれだけ無頓着だったのだろう。
唇を離して妹の顔をみつめる。
「おにいちゃんは、渡さないから」
シャリは僕にのしかかってくると、自分から唇を僕の口に合わせてきた。その舌が僕の唇をまさぐると、僕の口に入ってくる。
僕は体を反転させてシャリの上にのしかかる。抱きしめた腕に力をこめると、僕のほうからシャリの唇をむさぼる。
「ん……」
シャリの喉の奥から声が漏れる。シャリの小さい体は僕の下で干し草に埋まっている。シャリの口から伸びてきた舌を僕の舌が押し戻す。僕の舌がシャリの口の中へと向かう。歯の間にゆっくりと割って入る。舌が絡まる。そして僕の唾液がシャリの口の中に。シャリが僕を迎え入れる。体の奥からこみあげてくる。
『
え?
シャリと僕との間にレベル回路が形成される。
『
えっとーー。
◇
「私、やっぱり死ぬ」
「おねえちゃん死んじゃだめ!」
「人間力とかどうでもよかったのよ!」
――
フィン:レベル2(down)(人間:転生者)
・恩恵:レベル判定、レベル移譲、気配察知、槍使い、投擲、格闘、縮地、精神耐性
シャリ:レベル5(up)(人間)
・恩恵:癒し(フィンに効果2倍)、プロテクション(フィンに効果時間2倍)、攻撃力付与、メイス使い、リワインド(new)
あかり:レベル4(エルフ:転生者)
・恩恵:鑑定、初級攻撃魔法、隠密、耐寒
――
挿絵は納屋でやさぐれてるシャリちゃん
https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330652924441447
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