第五章 もはやゴブリンの時代ではない
第15話 妖精の祝福
「今度はあかりの恩恵を増やそうと思うんだ」
一応、シャリに了解を取っておくことにした。
「おにいちゃんがやりたいというならすればいいと思うよ」
シャリは了解してくれた。物わかりがいい妹だ。
「おにいちゃんは好きなことをしていいんだよ。おにいちゃんが誰を選んでもシャリは笑って見守るの。だっておにいちゃんが最後に帰ってくるのはシャリのところだから」
えっと。
◇
あかりを裏庭に呼び出した。足元を鶏が走っていなければラノベの告白シーンみたいだなと思う。校舎じゃなくて牛舎だけど。
「コケーコココココ」
「あかりはレベル5になれるって言われたらどうする?」
「なんでもする」即答かよ。
「え、なんでも?」
「うん。なんでも」きっぱり。
なんでもって、なんでも?ちょっと妄想が。
「コケーココココココココココ」
「だって私の唯一の取柄はレベル4だったのにもうぽっと出のロリ妹に追いつかれちゃったしうっかり追い抜かれたら死ぬしかない」
シャリを先にしないでよかった。
「そのぐらいで死ぬことなくない?」
「ここで追い抜かれたらもうソシャゲのクズレアみたいなもんだし生きてる価値なんてなくない?」
「自分のことをそんなふうに言うなよ!僕なんてレベル1なのに強く生きてるじゃないか」
「お兄ちゃん、レベル2になってるよ」
「コケーコココココ」
そうだった。
っていうかここはムードがないな。場所を変えよう。
僕はあかりの手を取る。
「これから時間を取ってくれないか。あかりが生きていてよかったと思わせてあげる」
◇
冬の日差しを受け、あかりと手を繋いで歩く。森に入る。あかりはいつものチュニックだ。寒いからコートは僕が着ている。
あかりは僕の隣でうれしそうだ。期待してくれて僕もうれしい。
森の中、僕のお気に入りの場所についた。そこだけ木が生えておらず、ぽっかりと日が差している。冬なのに緑の草が残っている。風がなくてちょっと暖かい。
「ここは僕が昔見つけた場所なんだ」
「へー」
僕はコートを脱いで草の上に敷く。二人で並んで座る。
冬なのに風がなくて暖かい。
あかりは微笑んだ。
「妖精の祝福があるかもしれないわね」
「妖精の祝福?」
「森の中にときどきこういう場所があって、妖精が住んでいたなごりなんだって」
妖精って、こないだの全長30㎝のことかな。
「エルフの言い伝えにあるの。妖精の祝福を受けて結ばれたカップルは永遠なんだって」
ちょっとした兄妹トークをしようと思っただけだったのになんか微妙な話になってきたぞ。
「あかり」
至近距離であかりの整った顔を見つめる。
やっぱやばいな。至近距離で見つめると美形すぎて見とれてしまう。
えーと、なんだっけ。
「きれいだ」
じゃなくて!
「あかりはどんな恩恵が欲しいの?」
「いろいろ考えてたんだけどね」あかりは目を伏せる。
「今となってはどうでもいい。ただレベル5になればそれだけでいい」
「そんなのだめだよ!」
「なんで?」
「人の価値はレベルじゃない!」
「そうかな」
「いや、レベルもそれなりには価値はあるけどやっぱり恩恵のほうが大事なんじゃないかな」
「へんなお兄ちゃん」
あかりはくすくす笑って、僕を見る。
「じゃあ、あかりはすごい魔法使いになりたい」
「よしわかった。お兄ちゃんがあかりをすごい魔法使いにしてやる」
あかりの頭に右手をかける。座ったままの僕の上半身とあかりの上半身が向き合う。あかりのほうが背が高い。左手をあかりの華奢な腰に回して、僕は背筋を伸ばす。あかりの腕が僕に巻き付いてくる。そのままあかりは、自分から後ろに倒れた。僕はあかりを抱きしめた格好で上に覆いかぶさってしまう。
えっと、なんか違うような気も。まあいいか。
僕はあかりの顔に自分の顔を近づける。あかりはほほ笑み、目を閉じる。口がちょっと開く。
僕はそのままあかりに唇を合わせた。
『
あかりは僕を受け入れ、あかりと僕との間にレベル回路が形成……されないだと?
「わたし、初めてだから」
それどころではない。
「やさしくしてね」
なにを?
「おにいちゃん!」
えっと。
「やっぱりだめ。おにいちゃんはシャリが」
えっと。
◇
「だって私たち生物学的には兄妹じゃないでしょ!」
えっと。
「13歳とか事案じゃない?」
「お兄ちゃんは18歳だよ」
生物学的には13歳なんだけど。
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