第7話 妹

 とりあえずシャリがレベルアップして獲得した新しい恩恵の"攻撃力付与"について試してみたところ、30分の間攻撃力というか入るダメージが上がることがわかった。ゴブリンなんか一撃だ。まあ槍使いの恩恵もあるから攻撃力付与しなくても槍なら一撃なんだけど。これはいざという時のためだな。あと薪割りがすごい早さでできるようになった。薪割りも攻撃なのかな。

 ちなみに重いものを持ったりしてみたがその辺はあまり変わらないようだ。瞬発力的なものなのか効率的なものなのかもしれない。っていうか魔法?


 シャリがレベル3になってから二人でゴブリンを倒してみたが、シャリに入るレベルはもうなんか全然わからない。レベル2のさらに1/4とかそれ以下かも。村の中でレベル4の人がほとんどいない理由がなんとなくわかる。騎士の人とかは膨大な経験を積み重ねてようやくレベル4になったのだろう。レベル3になるだけでも大変なはずで、なんか悪い気もするが僕はレベル1だからいいよね。



 もう冬になりかけている。この森は常緑樹が多いので寒くなってきても景色はあまり変わらない。フィンの記憶的には冬もそこまで雪が降る感じでもないはずだ。


 僕はシャリと朝の森を歩く。シャリはもうレベル3だしゴブリン程度なら負けることはないだろう。ていうか素で僕より強い。もちろんシャリに恩恵で強化してもらえば別だがそれもシャリの力だしなあ。


 今歩いているところは隣の村に続く道沿いなので開けている。魔物はいないと思う。多分。一応確認してみるか。


『気配察知!』


 なんかいるな。魔物ではないが小動物でもない。人かな。木の陰に……寝てるのかな。

槍を構えて慎重に近寄る。すると……


 女の子が倒れていた。


 駆け寄る。茶色い髪、白い肌。緑色っぽいチュニックはノースリーブで白い腕が見える。チュニックはミニのワンピースになっているので白い太ももがむき出しだ。足にはサンダル。冬も近いのにやたらと軽装だな。薄着なのでスタイルが良いのがはっきりとわかる。

 チュニックで胸が隠しきれていない。特に胸元の辺り。谷間の強調された盛り上がりが目を惹く。

 えっと、胸から目を引き剥がして顔をよく見る。目を閉じているが整った顔立ち。シャリとは違うタイプだがシュッとした美少女だ。人間離れした美貌。というか人間っぽくない。よく見ると耳がとがっている。これは……


「エルフだー!」

すごい。ファンタジーだ!


 怪我人かもしれないのでシャリに癒しをかけてもらう。触った感じ肌は暖かい。生きてるようだ。瞼がぴくぴくと動く。

「大丈夫か!」

目が開いた。目の焦点が合っていないようだ。ぼんやりしている。顔を覗き込む。

 もしもーし。

 目が合う。深い緑色をしている。きれいだなあ。

 ぴくぴく……


「お兄ちゃん!」

エルフの女の子は僕を見ていきなり叫んだ。シャリが上目で僕の顔を見る。


『え?僕?』



 森に置いておくわけにもいかないのでエルフの女の子をとりあえず家に連れて帰ることにした。おんぶしようとしたが僕より背が高いし、そもそも僕はレベル1だし力系の恩恵もない。シャリはレベル3だけど僕より背が低いから引きずる感じになる。

 まあ、さっき癒しをかけたからいいか。革袋から水を飲ませて落ち着いたら歩いてもらうことにする。

 彼女は歩き出すがちょっとよろけてしまう。僕はとっさに腕をとる。エルフの女の子が僕の腕をぎゅっと抱きしめる。グニュっとした感触。

「お兄ちゃん、腕を貸してね」

「さっきから、その”お兄ちゃん”って何よ?」


 エルフの女の子は僕の腕を抱きしめたままシャリのほうを向き、答える。

「はじめまして。山峰あかりです。日本から来ました」

そして僕の顔を見る。

「お兄ちゃん、私、あなたの妹よ」


『え?』



 なんとか家に帰った。両親はまだ畑だがもうじき帰ってくるだろう。ちょっと話を聞かないと。


「だから、日本から来たのよ」

「なんで妹なのよ」

「突っ込むのはそこじゃないだろ」


 シャリは涙目で僕を見る。

「シャリだけがおにいちゃんの妹だと思ってたのに……シャリに黙ってほかに妹がいたのね」

「正確に言うとお前妹じゃなくない?」

「そんな!ひどい。シャリが一方的に妹だと思ってたの?おにいちゃんはシャリのことを家族だと思ってなかったの?」

「そんなこといってないじゃん!」

「お兄ちゃん、それはひどいと思うわよ」

「いやちょっと、話をややこしくするなよ」


 エルフの女の子はシャリに向かって聞く。

「シャリちゃんはいくつかな?」

「こんど12です」

「私は16だから、シャリちゃんのお姉さんね」

「それいったらおにいちゃんも13歳だけど」

「私の中ではお兄ちゃんは18歳なの」


 エルフの女の子は僕のほうを向く。

「お兄ちゃん、私、あかりよ。わかる?」

『……全然わからない……』


 顔を見つめる。整った顔。綺麗な子だなあ。エルフってみんな美形なのかな。いや、そうじゃなくて。


「そもそもなんでエルフが日本人なんだよ」

「転生したのよ。お兄ちゃんと同じ」

『……え?……』

「会いたかった!」

エルフの女の子は僕に抱きついてきた。僕の胸の上の方に胸が当たる。グニュ。ダイレクトな感触。やっぱりノーブラかな。


「ただいま」両親が帰ってくる。

「あらあら、フィンのガールフレンド?仲いいわね」


「こんにちは。お父さん、お母さん」

エルフの女の子が礼儀正しく挨拶する

「お母さんですって。まあ、もうお嫁さん?」

母はにこにこしている。


 いや、だから話をややこしくしないで……


 とりあえず昼食になった。あかり(自称僕の妹:エルフの女の子)はガツガツとパンを食べスープを飲んでいる。そうとう空腹だったみたいだ。急に食べて大丈夫かな。

「いやー、助かりました。道に迷って食べ物なくなって死ぬかと」

「まあまあ。どんどん食べて。大猪のハムもあるから。自家製よ」

「すごい。いただきますお母さん」


「フィンもガールフレンド連れてくるとか隅に置けないわね」

「あ、私じつは妹でして」

「ちょっと、話を整理してからにして頼むから」

「じゃあ二人っきりにしてあげるから。お正月まではまだ子供なんだからHなことしちゃだめよ」

「だめ、おにいちゃん」

「妹だから大丈夫です」

「話をややこしくしないで」


――

こちらあかりちゃん挿絵です

https://kakuyomu.jp/users/yamamoriyamori/news/16817330652394032014

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