三 井戸の底
井戸に落ちたエリカはと言うと、二転三転し足から底に衝突。
真上――頭上に開く井戸の穴を見上げた。視界に広がるのは岩と暗闇。
これで月でも見えたら感動的なのに。
少し白けた心地になった時、アキホシが地上から落ちてきた。
ぐじゃっ。
左肩にアキホシがのしかかった時エリカの腕が井戸の底の砂利に突き刺さり砕けた。
痛みが襲った。左腕と、気付けば両足に激痛を感じた。
両足は着地時に地面に叩きつけられて怪我したらしい。
エリカを下敷きにしたアキホシは無傷だった。
エリカは「はは……」と笑い声を漏らした。
「アキホシ、嘘吐かなかったね。本当に祟りあったじゃん」
アキホシはエリカを抱きかかえ、泣き出した。
「ご、ごめっ……! 痛かったよな……!? 痛いよな!?」
エリカはガタガタ奥歯をかち合わせた。体が自動的に震えていたが、心は穏やかだった。
ふっと井戸の中を見回したアキホシの視線の先に白蛇がいて、先程エリカが投げ入れた虫の死骸を労わるように食べていた。
改めてまじまじと白蛇を見た二人の子供は一瞬間痛みを忘れてその荘厳な姿に見惚れた。
白蛇が暗闇を奥へ奥へと這って行った。
井戸の底には落ちてきた入口と比べて明らかに広い空間があった。
どのくらい広いのかは暗闇のせいで見渡せない。
横に横に枝分かれしたトンネルだとエリカは見当をつけた。
アキホシはエリカを背負い、白蛇についていくことにした。
エリカは血を失った蒼白い顔、だが呻くこともなく自身の痛みにただただ無関心だった。
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