マッチングアプリ

 普通に生活をしていると、どうにも女性との縁が無い。恋がしたい。女性と話がしたい。かといって、今すぐ結婚がしたいとか言うわけでも無い。そして、友達の伝手も無い。そして、最後まで悩んでいたマッチングアプリを使うことにした。画面の指示通り色々と入力し、自分の写真を撮り、プロフィールが完成した。そして驚くほど女性が登録しているのにも驚く。もちろん、登録前に色々と調べた。お金目的や詐欺などもあるので慎重に探していくことにした。

 日々メールが来たりもするが、怪しいモノばかり。やはりこういうところで相手を見つけるというのは難しいものなのか。そんなときにメッセージが届いた。いつも来るような怪しいモノではなく、ごく普通の内容だった。プロフィールから気になったというものだった。その女性のプロフィールを見た。可愛らしい女性だった。早速返事を書いて、メッセージのやり取りが始まった。住んでいるのは、車で1時間半ぐらいの場所だった。そして「一度お会いしてお話しを」と誘ってみた。すんなりOKが出た。会う当日までは、本当に疑っていた。本人が来るのか?もしかしたら詐欺?何か裏がある?疑心暗鬼。しかし、約束の時間にはその気持ちは一蹴された。彼女はちゃんと来て、話していってもメッセージで話した通りの人だった。お互いことや共通の話題、そんなのであっという間に時間が過ぎた。次回会う約束と、連絡先を交換して帰って行った。その後も連絡を取り合い、次回のの会う日まで交流を深めていった。そして、約束の日。彼女と楽しくデートをして一日が終わった。次の会う約束をしてその日は別れた。その後も日々メールをして楽しく過ごしていった。

 明日はデートの日だ。明日の約束を再度確認して、寝ることにした。当日、約束のの時間になっても彼女が来ない。遅れるならきちんと連絡をくれる人なのに。メッセージを送るも既読にならない。通話もしてみるが、コールだけで繋がらない。何か事故に巻き込まれたのかと心配になってきた。すると、彼女から一通の返信が来た。それは住所が書いているだけだった。これは何かがあったんだ。急いで車で向かった。ナビに住所を入れ、その場所に向かう。1時間ぐらい走って、着いたところは寺だった。

 車を駐車場に停め、寺の中に入って行った。本堂に向かうと、法事が行われているようだった。一体彼女は何でこの住所を伝えてきたんだ?もしかして法事があって、ここまで来てくれって事だったのか?一人の女性が振り返り、目が合った。あっ、彼女だ。会釈をすると、こちらに来た。デートの約束したのに法事だったのか。なんか頭の中が混乱していると彼女は「何かご用でしょうか?」と話しかけてきた。またよく分からない。ここまで来たのに、初めて会うような言い方。そうか、親戚がいるから、わざとそうしてるのか。彼女も面白い一面があるんだな。僕は「えぇ、こちらの住所を教えて教えていただいたので来ました」とかしこまって返事してみた。すると彼女は少し困った表情をして「失礼ですが、どちら様でしょうか」と尋ねてくる。ちょっと上段も過ぎるなぁと思いながら、彼女も親戚の手前、色々とあるのかなと察して名乗ってみた。でも相変わらず彼女は不思議そうな顔をしている。「あなたと今日、デートの約束をして、約束の時間を過ぎたらここの住所を教えてくれて来たんですよ」とハッキリ言った。すると彼女は「私ですか?」と少し怪訝そうな顔をした。何故そんな顔をする?ちょっとイラッとして彼女の名前を呼ぶと、顔色が変わった。


 「それは私の妹です」


 僕はお姉さんと話していたのか。「大変失礼しました。お姉さんがいるとは知りませんでした。彼女はいますか?」と尋ねると、お姉さんは顔を強ばらせて言った。「妹はいません。誰からここの住所を聞いたのですか?」と質問を返される。「あなたの妹さんから、さっきメッセージをもらってここに来たんです。ここの住所が書いてあったから来たんですよ」。そう言うと、お姉さんは涙を流しはじめた。「妹がですか。ここに来て欲しかったんですね」と言って、本堂の中に顔を向けた。本堂では読経が流れていて、その奥に遺影があった。よく見ると、彼女だった。

 「今日は妹の四十九日の法要なんです。先日、出かけるときに事故に遭って亡くなって…」と声を詰まらせていた。「あの、妹さんはいつ亡くなったのですか」と聞いた。教えてくれた日は、最初に彼女と会った日だった。

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