古本
読書が趣味の私。新刊で読むこともあるが、主に古本を読んでいる。今は廃刊になった者なども多く、隠れた名作などもある。買うのは文庫本で、タイトルと後ろのあらすじ、最初の1行で気になった物を買って読んでいる。
先日買った一冊。昭和50年の初版の文庫本だった。読み進めていくと各所に赤線が引いてあった。古本あるあるの一つ、前の読者が本に線を引くといった本に巡り会う。個人的には本を綺麗に読んでいたいタイプなので、そういうのを見つけるとハズレを買ってしまった、その本を読む意欲が無くなるのです。
ただ、その線をたどっていくと、「私が/こく/はく/しなければ/いけないのは/人/を/殺/めた事/5/月/に/でも/ゆ/く/え/不/めい/と/新/ぶん/には/か/いて/あつ/た/ただ/その/男の/れい/が/私の/前に/出てきて/私を/殺/そうとし/ている/毎日/どこかで/私/を/まち/ぶ/せ/して/私/を/ころ/そうと/待っている/気が/く/る/い/そうだ/男の/な/まえ/は/やす/も/と/で/ない/ふ/で/さし/た/いた/い/は/や/す/もと/の/山/の/中/ふく/の/こ/や/の/床/下/私/は/こ/ろ/される/から/ここ/で/すべて/を/話す/もう/気/が/くる/い/そうだ/私/の/な/まえは/き/もと」
殺人の告白とその殺した霊が本人を追い詰めている内容だった。本の内容はまったく関係ない。そして、これが本当の告白なのか、前の読者のお遊びなのか、まったく分からない。ただ気持ちが悪い。しかしながら、内容が妙にリアルだ。まずはネットで調べて見るも、それらしき記事が見当たらない。これは新聞記事から探してみるしかないか。私は好奇心から図書館へ行き、その当時の新聞縮刷版で事件を探すことにした。
あった。昭和50年の6月の新聞に、ヤスモトという資産家の男性が1か月以上行方不明で警察が捜査しているとの記事。購入した文庫本の初版は9月。その後の記事を追いかけるも、関連した記事は無かった。この後も調べたかったが、一般人が調べるのには限界がある。また私も探偵でも何でも無い。いち会社人である。気分の悪いを掴んでしまったなと後悔するだけだ。
それから1か月ぐらいした、ある夜のことだった。仕事を終え、自分のアパートに帰った。すると部屋の前に誰かが立っていた。誰が立っているんだ?よく見ると初老の男性のようであった。自分が近づいても動く気配は無い。ただ人の家の前で立ってられるのは気持ちが悪い。「そこで何してるんですか?」と少し威嚇気味に言ってみた。するとその男性は自分の横を通り過ぎ去って行った。正しくは、通り抜けていった感じだった。また気分の悪い体験をしてしまった。
部屋に入り、何となくモヤモヤしながらスマホを見ていた。そしてとあるニュースに目がとまった。「キャンプ流行で山を購入。中腹にあった小屋から白骨遺体発見」
直感的にあの話だと思った。記事を読み進めると、骨は二人分あったと書いてある。
もしや、資産家の男性と、その犯人なのか。結局、引き寄せられて殺されてしまったのか…。 この事件を追っかけようともしたが、何かあってはいけないと、私はその本を事件を管轄している警察に匿名で送った。この内容を信じるか信じないかは警察に任せよう。
それ以来、古本を買うときには線を引いていないか念入りに確認して買うようになった…。
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