ソロキャンプ
今流行しているキャンプ。この流行前から俺はキャンプを楽しんでいる。この時期になると紅葉が綺麗なのでとても楽しんでいる(人が少なくなるのも嬉しいのだが)。
先日、連休を取っていつものようにソロキャンプへ出かけた。今回の場所は初めてで、元々知る人ぞ知ると言う場所だった。車でどんどん進んでいくと、キャンプ場…いや、単なる広場のようなところへ着いた。入り口にあったキャンプ場の看板もかすれており、全くの貸し切りだった。無料だから、何組かいるかと思ったら、まったくいない。ちょっと怖い気もしたが、広々と自由に使うことにした。
屋外で過ごすキャンプが好きなので、飯は適当。毎回、お湯を沸かし湯煎したカレーを食べる。これが簡単で最高にうまい。そして食後はコーヒー。ぼーっとしながらこれらを楽しむ。秋は日が暮れるのが早いので、辺りはすっかり暗くなってきた。
今回は誰も無いのもあり、持ってきているランタンの明かりのみ。ただ、月明かりがなんとも言えない明るさで、ランタンを消しても過ごせる感じだった。目が慣れると月明かりでも色々出来る感じだった。
時計を見ると、だいぶ遅い時間になっていた。寝ることにしよう。テントは立てたのだが思った以上に冷えてきたので、車の中で寝ることにした。車内はいつでも寝られるような準備をしてあったので、シュラフに潜って寝た。
ふと目が覚めた。尿意だ。寝る前に小便をするのを忘れていた。シュラフから出て車から降りた。車から数歩離れて、お行儀は悪いが立ち小便をする。その時、広場の奥の方で何かが動いた気がした。動物か?まあ、自然の中であれば、何かしらいるだろう。車に戻り、またシュラフに潜る。
また目が覚めた。今日は眠りが浅いなぁ。風が出てきたのか、テントや車に風が当たっている。その音の中に違う音が聞こえた。草を踏んで何かがるいている音。動物か?耳を澄ませていると、四本足の感じではない。空耳か?そのまま集中していると、ゆっくりと二本足で歩いているようだった。人?いや、誰もいないはずだ。それか気がつかないうちに誰か来たのか。例え外の道具を持って行かれたとしても、価値のあるような物は何一つない。目を瞑ったまま、引き続き音に集中する。その草を踏む音は“複数”しているのが分かった。そして、車の方に近づいてきているのが分かった。月明かりはあるにしても、この暗い中、自分の車めがけて誰が来るんだ?そう思った瞬間、背筋がぞーっとしてきた。何かまずいことになっているのではないかと。
音は複数“人“”歩いてくる音だった。一人二人ではない。もっといる。これは人間じゃないのか…そんな考えになってから、体がガグガグ震えてきた。
ずっと車の周りを歩き回っている音がする。もう数は分からない。すると、その足音が止まった。あたりがシーンとした。どれくらい間があったか。次の瞬間、
がつっ!がつっ!
ドアノブを引く音がした。ロックはしていたので開かないが、何度もドアノブを引く音がしている。助けてくれー!帰ってくれー!と心の中で叫ぶ。すると、音が止んだ。ただ、怖くてシュラフからは出られない。奴らはいなくなったのか、まだ車の周りにいるのか。恐怖のあまり、意識が遠のいてしまった。
どれくらい時間が経ったのか、そっとシュラフの隙間から覗いてみると外は明るくなっていた。シュラフを抜け出し、車の外へ出た。辺りは何事も無かったように、昨日と同じ状況だった。車の周りも草が踏み潰されているような状況は無い。ホッとして車を見ると、ボディやウインドウに無数の手形がついていた。
やっぱり、何かがいたんだ。そう思うとまた悪寒が走り、荷物をまとめてその場を急いで去った。
後で分かった話が、かなり昔このキャンプ場の辺りに村があったようで、住人が何か罪を犯したり、規律から反したことをすると、夜中に他の村人が集まってその家を潰し住人のも抹消する「囲い潰し」という悪しき風習があったらしい。
あの夜経験したのは、それだったのか…。
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