まとわりつく男の子

 僕が住んでいるのは、ベッドタウンと呼ばれる駅ではあるが、よくある「発展して無い方」の降り口が最寄りになる。線路を挟んで発展しない側には正直住宅しかない。駅前のコンビニを過ぎると、地元の小さなスーパーや自販ぐらい。その分家賃なども少し安めになっているので助かる。

 仕事を終え、いつものように駅を降り家に帰る。人通りは少ない。少し前に女性が歩いていた。後ろ姿は綺麗な感じで、僕は「へぇ、こういうタイプの女性がこの辺り住んでるんだ」と思った。その女性はスマホで誰かと話しながらゆっくりと歩いている。僕は割と早足の方なので、距離が近くなってきた。

 すると彼女の周りを男の子がまとわりつくような感じで一緒に歩いているのが分かった。あぁ、お母さんなのか。僕は若干がっかりしながらもう少しで追いつくぐらいの距離になった。

 女性は相変わらず電話をしている。男の子は足下にまとわりつくように歩いている。いや、女性の足を透けて通り過ぎている。

 僕はとんでもない物を見ているのが分かった。その時その男の子は僕の方を見てニコッと笑った。そしてまた女性の足に絡みついて遊んでいるようだった。


 僕は怖くなって急ぎ足で女性を追い越した。何事もないように、スマホで話をしていた。見てはいけない物を見てしまった。僕は足早に女性から離れるようにした。曲がり角に来たとき、怖い物見たさで振り返ってしまった。


 男の子は女性の肩に乗ってニコニコしていた。その状況に女性は何も気がついていないようで、変わらずスマホで話をしていた。


 あの男の子は一体…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る