空き家

 僕が物心ついたときから、その空き家はあった。家の周りは草木が生い茂り、誰も住んでいないのは明らかだった。親も「この空き家、どうするのかね」とみる度に言っていた。

 小学生の時は、友達と一緒に「お化け屋敷」なんて行って、その空き家に入っていった。もちろん親からは入っちゃダメとは言われていたけど。その時の記憶では、家の中にも入ったが、以外と整っていて怖いイメージが無かったのを覚えている。二階も合ったが流石に怖くて誰も入らなかった。

 中学生の時にも、こっそり入ってみんなでエロ本を見たりした。またエロ本も捨ててあったので、多感な時期にはもってこいの場所だった。噂話では、二階のカーテンが閉まっているが、開いているときには幽霊を見るなんていうのがあった。

 高校の時には彼女を連れて肝試しをした。一階までは入ったが、色々と朽ちていて、危ない感じだった。彼女とキスをしたのもここだった。その時、カーテンが開いていたが何も見えなかった。

 県外の大学に行くために、一人暮らしを始めた。そのまま就職をし、実家へは盆暮れ正月に戻るぐらいだった。


 久しぶりに実家に帰ったとき、散歩がてら、空き家に行ってみた。するとなんだか騒々しい。パトカーなども居る。何があったのかと野次馬になっていた。そこに居た人たちの話によると、二階で遺体が見つかったとのことだった。

 ニュースでも話題になった。見つかったのは複数の遺体で、白骨化したもの、ミイラ化したもの、腐乱しているもの、死後あまり経っていない物まで。


 ということは、子供の頃からそれらはずっとあったのか。小学生の頃部屋が整っていたというのは、誰か住んでいたのか。カーテンが閉まってる・開いているというのは誰か生きていたのか、それとも自殺の場なのか、他殺の場なのか…。


 そんなところを遊び場にしていたことがとても怖くなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る