扉
実家暮らしの私。子供の頃からずっとこの部屋を使っている。社会人になって数年。そろそろ一人暮らしをしようと考えていた。いつまでも親の近くには居たいが、独り立ちをしなければ親も安心しないだろう。いつも色々と心配してくれるのは嬉しかったが、それが鬱陶しくもあった。子供の頃から、母親は私が部屋で寝ていると、そっと部屋の扉を開け、私がちゃんと布団を掛けて寝ているか確認するのである。夜中「カチャ」っとドアノブが動く音で私は目を覚ます。そっと隙間から覗き、布団を掛けているのを確認してドアを閉める。布団を掛けていないときは部屋の中に入り、布団をかけ直してくれる。
ある日、両親と一緒にお茶菓子を食べているとき、「私、一人暮らししようと思ってるの」と話すと、二人とも笑顔になり「社会人なんだから、良いと思うよ。私たちもあんたの心配、ずっとしてられないからねぇ」と話してきた。私が「お母さん、夜中に私が布団掛けているか確認できなくなるの、寂しくならない?」とふざけて言うと母親は「夜にあんたの部屋なんて行ってないわよ。布団掛けているかなんて、小学校入ってからは見てないわよ。古い話するわね~」と笑った。
毎晩私の部屋を覗いてるのは一体誰なのか。その日以来、自分の部屋では一切寝ていません。
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