友人の一人が結婚することになった。とっても嬉しかった。それぞれを紹介したのは僕自身であり、二人が親密になり結婚の話を聞いたときは、思わず涙を流してしまった。結婚式当日、式場側でもカメラマンをお願いするが、友人からの視点で写真を撮って欲しいと二人からお願いされた。趣味の範囲でカメラはやっていてたが、結婚式の撮影というのは初めてだった。素人の写真だけどよいのか聞いたが、寧ろプロノ写真では無くスナップ写真的でも構わないので取って欲しいとのことだった。今のご時世、みんなスマホで撮影してしまうので、スマホ内のデータやり取りだけでは、せっかくの想い出が残らないからと言うのが理由らしい。確かにそうだ。ここは素人の腕だけど。沢山想い出を撮ってあげようと承諾した。

 凝り性の僕は、カメラをもう一台調達したり、レンズ・バッテリー・フラッシュと色々と買って、式当日まで撮影の練習(といってもイメトレだが)や勉強をした。

 そして当日。本来であればプロカメラマンが居るので自由に動くカメラマンまがいの参加者はNGらしいのだが、式場側にお願いをして一人だけであればとのことで「プロの邪魔にならないように」条件の元で自分は好き勝手に動けるようにしてもらった。なので僕には招待客の席は無く、後ろの方で半参列者・半式場側の人の様な席(本当に椅子だけ)にいた。プロカメラマンの動きに負けじと写真を撮っていく。色々と勉強はしてきたが、思うがままにシャッターを切っていった。2次会などもどんどん写真を撮り、二人の幸せそうな顔・参列者の笑顔・二次会のみんなのはじけ振りをたっぷり写真に残した。新郎新婦が居ない三次会は失礼して、僕は家路についた。帰りの電車の中、カメラのモニターで写真をチェックしていると、なんか気になる影などがあった。素人が撮ると、こういう影が出来てしまうのかと思い、PCのモニターでしっかりみることにした。家に帰ると疲れがどっと出て、さっさと寝てしまった。

 翌日、機材をメンテナンスしながら、撮った写真のバックアップをし終えてから一枚一枚見ていった。自画自賛の写真もあれば、酷い写りの写真もある。あららと思いながら見ていると、何か違和感を感じた。同じような影などが写っている写真がある。これはカメラの問題か?と思いながら、写真データをズームして、僕はぞっとした。男女の顔が所々に映り込んでいるのだ。それと同時に、新郎新婦のそれぞれの過去を回想したのである。

 新郎の顔の横であったり、脇で映っている女の顔は間違えなく、新郎が高校2年の時(彼とは高校からの付き合いである)付き合っていた恋人、真衣である。真衣の親の都合で転校を余儀なくされ、遠距離でも少しは付き合っていたが、そこは高校生。距離には勝てず、彼から別れを告げた。真衣は納得せず復縁を求めたが、叶うことは無かった。そんな矢先、真衣は転校先の体育の時間に倒れてこの世を去った。真衣の女友達は悲しむと共に彼を責めたのだ。彼もとてもきつかったであろうが、反論も何もせず、女友達の口撃をうつむいて聞く日々が続いた。時が解決するしか無かった。その当時、彼を励ますつもりで僕は一緒によく遊んだ。1回だけ彼は「俺が真衣を殺しちゃったのかな…」と嗚咽したことがった。その時は僕ももらい泣きした。その1回限りで、以降一度も真衣の事を話したことは無かった。

 新婦の斜め上に映っている男は、大学2年の夏、新婦と付き合ってると勘違いしていた速川だ。男女仲良しグループ(僕もその一人)に速川はいた。どうしてそのメンバーにいたかは覚えてないが、新婦に好意を寄せていて、どこかで紛れ込んできたのだろうと仲良しグループで入っていたが、不思議と誰もその経緯を知らない。そして速川は新婦に近寄り、デートなどにしつこく誘っていた。新婦も義理で出かけたが1対1では一度も会わなかった。夏が終わり、学校が始まると速川の姿をパタリと見なくなったのだ。学生課で確認したところ、退学をしたことは教えてくれたが、それ以外は開示してくれなかった。風の噂では、実家で自ら命を絶ったと聞いた。噂ではあるが気持ちのいい物では無い。新婦もしばらく嫌な気持ちを引きずっていたのは覚えている。

 そんな男と女が、この結婚式の写真に写っている。式が終わりに近づく写真につれ、映っている確率が多くなる。写真データを「次」にするごとに、どこかしらに映っている。披露宴が終わり、最後僕は新郎新婦を写した写真がある。新郎の隣には制服姿の真衣が、新婦の隣には奇妙な笑みを浮かべた速川が。4人並んで映っている。

僕は椅子から転げ落ちた。慌ててマウスで次の写真を押すと、僕がシャッターを切った記憶の無い2枚の写真が出てきた。真衣と新郎が顔を見合って笑っている写真。速川と新婦が腕を組んで笑っている写真。僕は見てはいけない物、いや、映してはいけない写真を撮ってしまった。


 その時、スマホが鳴った。友人からの電話だ。出てみると開口一番

 「おい!大変だぞ!新郎新婦が…」

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