番外編 僕と幼馴染がセックスをしないと出れない部屋に閉じ込められた 上
5話の直後時点のお話です。
あくまで番外編です。
・この部屋は異空間にあり、水島彼方と時田夏希がセックスするまで元の時空に戻れない部屋
・セックスとは、互いに前戯した後女性の膣に、男性のペニスを挿入し直接精子を放出する事を指す
・この部屋内では絶対に妊娠しない
・セックスが完了した10分後に、元の時空の転移直後の時間に戻る
・この部屋での身体への変化(代謝・怪我)は元の時空に戻っても、そのままの状態が維持される
・同様に、この部屋での記憶は元の時空に戻っても維持される
・部屋を出る条件を満たしたセックスは、動画として2人のメッセージアプリの友達1人づつ(選出はランダム)に送られる
・それでは、よいセックスを
恋の神より
という文字が部屋の天井に立体的に表示されている。
……どこ? この部屋、何?
隣に居る夏希も、怯えた表情で辺りを見回している。
目が合う。
『夢?』
ハモる。
僕らは比呂戸も含め3人で駅に向かっていたはず。
学校指定の夏制服。
通学鞄も、ラケットのバッグもそのまま。
「僕達登校してたよな?」
「うん」
「朝起きて、うんこして、顔洗ったよな?」
「それは知らない」
「何が起きたんだ?」
「私が聞きたいんだけど……あんたが仕掛けたドッキリ?」
「僕は神様かよ」
「いやいやいやいや、なにこれ……ほんと何? 意味わかんない」
夏希がしゃがみ込む。
僕だって本当に分からない。
一瞬にしてこの空間にワープしたとしか思えない。
「ちょっと探索してみよう」
部屋としてはそこそこ広いこの空間。
真っ先に目に入るのは、ゴージャスな装飾の大きなベッド。
テカテカした掛布団に触ると、滑らかなな肌触り。こーいうのシルクっていうんだっけ?
他には壁掛けの大型テレビ、やや小さめの冷蔵庫、革張りの3人掛けソファ。
備え付け?の戸棚やクローゼット。色彩や質感は全体的にシックな感じ。
そしてドアが3つと、ガラス張りの……浴室? が見える。
一番手前のドアレバーを押す。
ドアが手前に開き、中は……トイレ。
特に変わった所のない、ウォシュレット付きのトイレだ。
次のドアレバーを押し、ドアを引くと……
キッチンだ。ここはやや狭く、人が2人立てばすれ違うのも難しい。
銀色の流し、コンロが2つ、食器棚もある。
「こっちのドア開かない~!」
元の部屋から夏希の声。
残ったドアを開けに行ったのだろう。
戻ると、夏希がドアレバーをガチャガチャ動かしている。
「こっちの2つは簡単に開いたぞ?」
そういって僕も試してみるが、開かない。
何かつっかえている感じ。
その後部屋を隅々まで探し、発見した事。
・カップラーメンや缶詰、お菓子少々あり。二人で節約して3日分程度?
・テレビは映らない。が、ストリーミングは有名どころがすべて見れる。
・水は流し、トイレ、浴室ともに出る。
・電気はON/OFFできる。リビング? は明るさを調整したり、色を変えたりできる。
・スマホは電源が入らない。
・クローゼットの中には、男物女物それぞれ大量の服が入っていた。下着類も。
・ベッドの近くに全長1m程度、表示機の様な物が2つある。「夏希」「彼方」と表示がある。
「どう思う?」
「ん~、いたずらとかドッキリのレベルを超えてるな」
「私達、頭おかしくなっちゃったのかな……?」
「その可能性もあるよな~。正直。あまりにも現実離れしてるよ」
「……天井の文字、信じるしかないの?」
「……まだそれは早い。他にも色々確かめてみよう」
2人共、直接声に出すのを避ける。
……いや、見た事あるよ。そういうジャンルのエロ漫画。
僕は実はエスパーで、妄想が具現化しちゃったとか?
だとしても何故コイツ? そうだったら光一択だというのに。
夏希……小学校? もっと前? からの幼馴染。
女として見た事はなく、出来の悪い妹のような存在。
コイツで勃つ事は……不可能だ。
その後も色々調べたが、特に新たな発見は無かった。
「まず、ここだよな」
開かずのドアの前に立つ。
食器棚に入っていた大きめの砥石を持って。
「いくぞッ!」
大きく振りかぶり、ドアに打ち付ける!
も、ぶにっとした感触のみでドアには傷一つつかない。
「なんだよ……これ」
何度も試すが、毎回おんなじ感触。
まるで何か未知の力で守られてる様だ。
ゴトッと砥石を床に置く。
疲れた。
「……いや、ウソでしょ」
「とりあえず、カップラーメン食べる?」
壁掛けの時計は、12時半を指していた。
既に慣れた手つきで湯を沸かしていた夏希が、カップラーメンのフィルムを剥がしていた。
「こんな事あるんだな~。エロ本のシチュエーションにツッコミ入れながら読んでたけど、もうバカにするのやめるよ」
「そんな本ばっか読んでるから、エロ本の神に魅入られたんじゃないの?」
「いや、そこまでじゃないよ! 一般高校生男子の平均値くらいだから」
「だって、あたし本当に何の覚えもないし。あんたが原因よきっと」
カップラーメンをすすりながら、話す。
「問題はタイムリミットだよな。今ある食糧じゃ3日持つかどうか。水だけでも結構生きられるって聞くけど」
「でも待ったところで、助かるとは思えないんだけど。恋の神様とやらを100%信じる気はないケド、この空間が普通の部屋じゃないのは間違いないと思う。本とかでも、結局ヤっちゃうパターンばっかだしね」
「おいおい、夏希さん。おまえさんも読んでるやないか、そういうエロ本」
「ちっちちちっ、違うって! ネットの広告とかで! 勝手に表示されるやつ!」
「そういうのって、結末まで表示されるかな~? ネタバレになるよね」
「うるっっっっっさい‼‼」
ガーッと麺を掻っ込み、立ち上がる夏希。
こいつ……結構ムッツリとみた。
その後はダラダラと探したり、試したり。
疲れた後は、2人でドラ〇もん旧劇場版を見た。
「シャワー浴びたいんだけど」
「浴びれば?」
「トイレかキッチンにいって。この浴室丸見えじゃん」
へーへー、と言いながらキッチンへ移動。
「絶対呼ぶまで出ないでよ!」
ガチャッとドアを閉める。
えー、このなんもない空間で30分くらい待つの? 女だからもっと長いか?
グラスタワーでも作って遊ぶか?
と考えていると、急に空中に映像が浮かぶ。これは……浴室の映像。
ご丁寧に僕に聞こえる程度の音量付き。
「いや~、ウソでしょ本当。こんな事ってある?」
「彼方となんて……絶対無理だよ」
ブツブツ独り言ちながらセーラー服を脱いでいく夏希が映っている。
マジかよ……小学校以来の夏希の裸体を見てしまう。
線は細いが、出るとこが出ている。おっぱいの形もメッチャ綺麗。
下の毛は薄く生えている。って、見ちゃうよそりゃ。
シャワーを浴び、体に泡を付け洗い出す。
他にする事もないから、黙って見ている……しかないよな。
「え~、カミソリとかないの? ちょっと剃りたいなあ……」
泡を洗い流し、自分の体をチェックする様にあちこち見る夏希。
僕が見る限り綺麗な体だと思うが、本人は気になるのだろうか。
誰に見せるわけでも……って、まさか僕⁉
まさかな……
体を拭き出した所で、映像がふっと消える。
信じたくはないけど、これが神様の力……なんだろうな。
「ふ~、思ったよりちゃんと使えたよ。……覗かなかったでしょうね」
「覗くか!」
覗いてない。モロに見てただけ。
大きめのTシャツに、ハーフパンツ。加えて濡れた髪がちょっと色っぽい。
「あれ? なにこれ」
ベッドの横にある表示機の様な物のうちの1つ、「彼方」と表示されている方に3㎝程の赤い棒のようなモノが映っている。
「なんだろう。触ってないけど」
これも神様のギミックなのかな。
「お前もキッチン行けよな」
「ええ~、めんど。早く出てよね」
こいつ……自分はたっぷり1時間は浴びたくせに。
でも、僕が入っても夏希に映像が出るのかな?
なるべく黙って、急いで入ろう。
「おーい、出たよ」
「ああえっ? そう、早いね」
「お前が早くって言ったんだろうが」
キョドり気味にキッチンから出てくる夏希。
この反応は……見ていたな。
気になる表示機は、「夏希」の方に6cm程度の赤い棒。
僕の方は消えていた。
どういう意味なんだろう。
「っていうか! まさかあんたも⁉」
気づいたか……
あっさり白状したのに、枕で5分間くらい殴られた。
「なあ、せめて枕はくれよ」
「うるさい! 覗き魔!」
お互い様だろ……。
でもこれを言ったらトイレで寝ろと言われるかもしれない。
この部屋のカーペット、フカフカや~
なんとなく緊張感の抜けた僕らは、今日は寝る事にした。
目が覚める。
思い出す。
やっぱり、夢じゃないよな……
壁の時計は10時40分を指していた。
夏希はまだベットでぐっすりと寝ていた。
こいつ、朝弱いんだよな。
寝相も悪いから、Tシャツやハーフパンツがはだけてえらい事になっている。
寝顔は……悔しいけど結構可愛い。
ビビッ
? 何の音だ?
ベッドの近くから……また「彼方」の表示機に1cm程度の棒。
昨日の状況と併せて考えると……まさか。
夏希のTシャツを思い切ってめくり、ピンク色のブラ晒す。
こいつ……こんな男受けしそうなデザインを選びやがって。
ビビッ
表示機の赤い棒が2cm程度に伸びる。
やっぱり……、恐らくこれは性的興奮を検知して可視化したもの。
何のために? おそらくセックス関係のものだとは思うが……
そろそろ活動を開始するか。
夏希を起こして、粉末スープで軽い朝食。
2人ともあまり食べる方ではないから、これで十分。
その後適当な海外ドラマを流しながら、探索。
やっぱり昨日ほどの真剣さはない。
14時頃に休憩。
ここから出る為の策を二人で話し合う…のだが。
2人共、口にはしないが思っている事がある。
「これって、結局セックスしないと出れないんじゃね?」
という事。
神の奇跡を目の当たりにさせられている為、もうこのルールは絶対だと確信している。
バタバタしていて忘れていた恋人の事を、ここでやっと思い出す。
光に会いたい。
再び会うには、夏希とセックスしなくてはならない。
光を、裏切ることになる。キスしかしていない、僕の恋人を。
なんてほど深く考えていなかったりする。
だってこの状況だよ? しょうがなくない?
問題は夏希との行為が知り合いの誰かに送信されるという事と、気まずさを超え幼馴染を抱けるかという事のみ。
こっちから「しょうがないから、ヤろうぜ」なんて言いたくない。
ヤりたいから、状況を受け入れました。みたいに思われるのは嫌だ。
結局そのまま新たな発見もなく19時になった。
夏希からその話をする事を期待したが、難しいだろう。
非常に不本意だが、僕から切り出してみるしかない。
「なあ、夏希。お前どう思ってる?」
「どうって……何が?」
「正直に話すぞ。からかうなよ? もう明日にはセックスしないとまずくない?」
「……! ちょ……ま……、まあね」
「お前も考えてたんだろ。いつにするかって」
「いや……、私は別に……」
目がじゃぶじゃぶ泳ぐ。なんつー分かりやすい奴。
「僕だって光に悪いと思うけど、この異常な状況だ。実は罪の意識はあまりない」
「そ、そうなんだ。あたしと……するの嫌じゃないんだ」
「まあ僕だって男だ。正直初めてだし、うまくできるか分からないけど……ちなみに夏希って処女?」
「……! セクハラ警察呼ぶわよ……」
「この部屋に来てくれるんなら、なんでも呼んでくれよ。で、どうなの?」
「なんか……楽しんでない? ムカツク。そうよ、処女よ。汚れなき体よ」
「お前、モテるよな? 付き合った事なかったっけ」
「いい感じになった事はあるけど……好きな人の為にとっておいたの」
「好きな人? いるんだ。誰?」
「そこまで言うか! バカ!」
バシバシと叩かれる。
「悪かった! ごめん!」
夏希が落ち着いた頃にまた、話し出す。
「そんなに大事にしてたものなら、悪いけどさ……」
「……しょうがないじゃん。あんたも、おんなじだし」
「で……いつにする?」
「……明日、かな。気持ちの準備もいるし……」
明日か……。
本当は今すぐがよかった。
うまくできるか分からないし、神様の条件を満たせるか分からない部分がある。
中出ししろってのは分るけど、互いに前戯の部分が気になる。
どうやって判定されるんだろうか。
「映像出ても、見ないでよ。絶対。目つぶっててよ」
「わかったって」
本日のシャワータイム。またキッチンで待つ。
見るなと言われても、他にやる事ないし……
昨日より慎重に、隠しながら入っている様子。
全然信用ないのね……。
この体を抱くのか……
しょうがないと言ったが、ちょっと緊張してきた。
エロ漫画やAVの知識しかない僕に、うまくできる自信は全くない。
「じゃ、電気消すね。おやすみ」
「おやすみ」
眠れない……
真っ暗になった部屋で仰向けになる。
昨日は異常な事態への疲れもあって、すぐ寝れたのだが。
明日、夏希とセックスする。
すごい字面だな……
元の世界に戻っても、元の関係に戻れるだろうか。
長い付き合いだ、「あの時、こんなことあったね」ぐらいに話せる様になれるかな。
さっきまで全く意識していなかった壁時計の秒針の音が気になる。
もういっそ起きて、映画でも見ようかな。
「起きてる?」
夏希の声。
なんだ、やっぱり寝れないのか。
「起きてるよ」
「眠れない」
「僕も」
再びシーンと静まり返る。
「あのさ、こっちきて話さない……?」
「ベッドに行っていいのか?」
「うん……どうせ明日もっとすごい事するんだし、一緒に寝ようよ」
真っ暗な為、手探りでベッドを探す。
スベスベの生地をなぞりながら上を目指していると、
「ちょっと!」
「あ、ごめん。見えなくて」
夏希のふくらはぎ辺りを触ってしまった様だ。
ビビッ
また機械音が鳴り、暗闇に赤い棒が映る。
これって……夏希が興奮したって事……?
「こっちだって。はい、もうちょっとそっち。これ枕」
これ、夏希の匂い? 枕がいい香り。
少し目が慣れてきた。
ぼんやりとこちらを向いて横になる夏希が見える。
布団を腰まで掛け、柔らかそうな胸が体に押しつぶされ苦しそう。
「すごい……久々だね。こうやって話すの」
「そういや、そうだな。昔は泊まりっことかしてたっけ」
「昔は毎日遊んでたよね。比呂戸も一緒に」
「お前、昔は男みたいだったしな。比呂戸の方がチビで、弱弱しかったし」
「そうそう。中学校で一気に身長抜かされたけど」
「中学校といえば、あの時どう思ってた?」
あの時……とは、中学2年の時周りにからかわれて、一時疎遠になった事だ。
それまでは小学校のノリで放課後遊んだりしていたが、付き合ってんじゃね? と噂され距離をとった。
中学卒業間近になって、夏希が急に昔のように話しかけてきて、関係は戻ったが。
「そりゃあ……まあ……寂しかったよ。あんた急に冷たくなるし」
「いやいや、夏希が先だろ? だから迷惑なのかと思って、話しかけるのやめたんだ」
「ウソ! 彼方が先! 絶対!」
「だって、あの日テニス部行こうぜって言ったら無視して行ったろ!」
「どの日よ! その前に放課後遊ぼうって言ったら用事あるって断ったじゃん!」
「本当に用事があったのかもしれないだろ!」
「断ったのは事実でしょ!」
不毛な言い争いを、しばらくは続けた僕ら。
「……もういいじゃん。過去は戻らないんだからさ」
「うん……」
「それにしてもさ……あんたすごいよね。本当に桜木さんに告白して、付き合っちゃうんだから」
「まあね。ラッキーだった面もあるけど」
「正直、フられると思ってた。彼方のいいとこって、ずっと一緒に居ないと分かんないと思ってたから」
「まあ1回はフられたんだけどね。……僕のいいとこなんてあるかな」
「言葉にするのは難しいけど……彼方らしいとこかな」
「わかんね……」
「あたし、そんな勇気ないな~」
「中学の時、吉水といい感じだったろ。付き合ってなかったの?」
「ああ……吉水君ね。いやー、忘れたい。黒歴史だわ」
「なんで?」
「さっきの話。あんたが冷たくなったから何かこう……八つ当たりというか……とりあえず彼氏の一人でも作ってみようかなって」
「結構ひどいね……君」
「そういう始まりもあるじゃん。でもやっぱり好きになれなかった」
「はあ、そうかい。理想が高いんやね。結構イケメンだったろ」
「イケメンだったし、優しかったけど……何かイヤだったの!」
モテる女は違うってやつか。
その後どっちが先に寝たか分からないまま、朝を迎えた。
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