第102話 文化祭(8) 〜北村家と天野家Part2〜
これは天野さん夫婦が帰ってからのお話である。
「あの時は私も本当にごめんなさい」
楓も頭を下げて謝ってくる。
家族みんな頭を下げているのを見て、楓自身思い出したのだろう。
「いやいや! 僕のほうこそごめんなさい」
僕だって柳さんの胸の中で泣いてしまっていたのは事実だ。楓だけが悪いと言うことは全然なかった。あの柳さんと天野家全員がいた場で謝るべきだったのかもしれない。
「うんん、元はと言えば私が悠君を困らせちゃったせいで…」
楓は申し訳なさそうに俯く。
「でも、楓が落ち込む原因を作ったのは僕だ。僕のほうこそごめんなさい…」
僕も下を向きながら言う。
それを見かねた父さんが乱入してくる。
「こらこら、二人ともここは学校、しかも文化祭中だぞ? そんな暗い話はやめなさい。それに周りを見てみなさい」
(楓と言う赤の他人に対してまでそんなに強く言っていいのか)と、僕は疑問に抱きながら、周りを見渡すと、シーンとした、かなり重い空気の中、シフト中のクラスメイトと上級生と思わしき客がこちらを呆然として見守っていた。
「「ごめんなさい」」
悪いのは事実なのでシンプルに謝罪する。
楓も同様に頭を下げて謝罪する。
すると、
「ごめんね、みんな。こんな空気にしてしまって。って事で、俺が場を温めるためにダジャレ言います!」
そうして、父さんが急にみんなの前でダジャレをし始める。
(恥ずかしいからやめて、父さん)そんなことを思いながらダジャレを眺める。
「恐竜が今日竜になる!!!」
その瞬間、クラスが一瞬固まる。
クラスメイトの一人が「ぷふっ」と息を吐いた途端、笑いに包まれる。
子である僕、彼女の楓も笑ってしまっている。
「面白いひとだなぁ!」
「北村のお父さんおもしろすぎ!」
笑いながらクラスメイトがそう言っていた。
「もう……」
母さんは顔を押さえてため息をついている。
「じゃあ、みんな頑張って!」
「「「「おー!!」」」」
父さんのダジャレのお陰でさっきの空気は消え、クラスがあったまり、さっきまでの空気が戻ってきた。
「文化祭が終わったら二人でうちに来なさい」
「嫌な話じゃないと思うから安心してね」
父さんと母さんはそう言い残して、教室から出ていった。
最初の父さんの言葉ではびっくりしたが、母さんが『嫌な話じゃない』と言ってくれたので、気軽に行けそうだ。
それから、クラスメイトと共にBグループのシフトを全力でこなす。北村家と天野家が来た後、光達の乱入もあったて、とても忙しかったのだった。
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