第101話 文化祭(7) 〜北村家と天野家Part1〜

 僕は変な光、楓は返信な澪をそれぞれ気にしながら店番をしていた。最初は少し空いていて、すこし余裕があった。そして、さっき変な挙動がどうしても気になった僕は、


「楓、なんかさっき光に変なことを言われたんだ」

 

 と、可愛いメイド姿の彼女に話してかけてみる。

 すると、楓は驚いた顔をする。僕はまだ「変なことを言われた」と言うことしか言っていないため、なぜ楓の方が驚いているのか、疑問に思った。

 楓はと言うと、(え? 悠君の方も変なこと言われたの? 澪ちゃん達何を企んでるんだろ…)と頭の中で思った後、


「悠君、私も澪ちゃんに変なこと言われたの…」


 それを聞いた僕は楓と同じように、驚いてしまう。二人とも同じように変なことを言われているのだから、僕たちのことについて何かあるのかもしれない。

 僕の驚いた顔を見た楓は、


「そうなるよね」


 苦笑を浮かべて、言った。


 そして、その答えはすぐに解き明かされることになる。

 聞き覚えのある声が聞こえてくる。更に、僕に土下座をした、あの声も…。

 そう、やってきたのは、北村家一家と天野家一家である。

 その光景を見た僕は衝撃の余り脳が思考停止し、楓は全神経を働かせて今の状況を理解しようとしている。

 楓の脳内は、(え!? 何で? 何で私の親と悠君の親が一緒に? おかしくない? え? え? もしかして、『別れろ!』とでも言われる???? え? まってまって???)と、脳内でマイナス思考で大変なことになっていた。


「どうも、こんにちは。楓ちゃん。うちのバカ息子がお世話になってます。このバカ息子の父をさせてもらってます、北村 裕也きたむら ゆうやと申します」


 と、父さんは楓にぺこりと頭を下げて挨拶をする。初対面なので、当然だろう。

 楓は脳内爆発のまま、会釈をし返す。

 

「悠君、改めて、この前は本当にすまなかったね…。とんでもなく大人気ないことをしてしまったね。本当に過去の自分を殴ってやりたい…。本当にすまなかった! 俺のことは嫌いになってくれて構わない…。娘のことはどうかよろしく頼む!」


 と、深く頭を下げて、本当に申し訳なさそうな声色でそう言ってくる。そして、楓のことは僕にお願いされた。

 僕は脳みそが死んでいるので、無心に頷く。そして、冬美さんも、

 

「私も誤解してごめんなさいね…」


 二人揃って深く頭を下げている。

 その時、僕の停止していた脳が動き出し、瞬時に状況を理解した。周りのクラスメイトがこちらを見ていること、


「いえいえ。もう、そのことは無かったことにしていただいて普通に接して頂いて結構ですよ…」


 この調子だと家とかにもお邪魔しづらくなる。つまりゲームとかがしづらいと言うことである。それは困るのでどうにかして前のような関係に戻したかった。

 そう、数週間前、つまり文化祭準備期間に僕の家に天野さんの夫婦がお詫びの品を持ち、謝罪にやってきた。僕も黙っていた事情を説明した。

 それから、話し合いを重ね、僕は彼女の親と気まずくなるのも嫌だし、将来の事も見据えて出来るだけ仲良くしたかったので、許すことにしたのだ。


 それから、天野さん夫婦は帰って行ったのだった。

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