第55話 変化のない登校

 僕は傷に絆創膏ばんそうこうを貼り、着慣れてきた夏服に袖を通し、現在、登校している。


(昨日は散々な目に遭ったな…)


 昨日は冤罪ではないが、罵倒され、外に放り出されて、怪我をすると言う最悪にあった。


(放課後楓が謝罪してくるのか)


 楓が『距離を置いていた理由について話す』と言っていた。が、僕は許す気でいた。すごく勝手な理由だが単純に? みたいな気持ち、感覚である。まあ、よっぽど(は?)と思わせてくる理由の場合は別だが。


 そんな事を考えながら歩いていると、バス停に到着した。いつもと同じく約5分前である。


(やっぱり、今日も楓は来てないのか)


 楓は今日もこの時間のバス停に来ていなかった。昨日言っていた通り、理由を聞かされる、今日の放課後までは継続すると言う事なのだろう。


(うーん、でも本当になんでなんだろう。僕は悪くないって言ってたけど……)


 僕のせいでこうなったと言うことは森下さんの事前調査により、ないとわかっているのが「悠君は悪くない」と言う事しか聞かされていなかった。なので見当がつかなかった。


(まあ考えてもわからなさそうだし、考えるのはやめるか)


 どうせ答えは出ないだろうと踏んだ僕は考えるのをやめた。と、同時にバスがやってきたので僕はバスに乗車し、学校に向かうのだった。


 僕は降りるバス停につき、下車する。これで楓が横にいない日は今日で3日目である。悲しみながら登校していると、


「あれ、北村君じゃん!」


 そう話しかけてきたのは転校生の堀川だった。(なんで僕のこと知ってるのだろう?)と疑問に思いながら返す。


「あ、堀川君。おはよう」


 僕は初めて堀川君と喋った。やはり明るく、絡みやすく、チャラそうである。


「おはっす! いつも一人登校なのかい?」


 よくわからない挨拶の後、いつもの登校について聞いてくる。(そんな事を聞いて何か変わるのか)と思いながら答える。


「いやー、今日はたまたまかな。いつもは二人で登校しているよー」


 (まあ、これから関係が修復出来るかわからないが、とりあえずはこの回答でいいだろうと言う)僕の考えである。


「悠きゅん、その相手は?」


 謎に変な呼び方をし始め、かつ、相手について聞いてくる堀川。(すごいキャラだな)と思いつつ、


「天野 楓って人。知ってる?」


 僕は(嘘をついてもどうせ関係が修復すれば見られる。正直に言っておいた方が堀川との関係もよく保たれいいのでは無いか)と考え、正直に答える。


「あー、ね。なるほど、なるほど」


 堀川の楓の名前呼びに気になったが僕は突っ込むのをやめといた。


 そんな話をしながら、学校に到着するのであった。

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