第21話 2度目のディスカッション 4
ジューネスティーンもシュレイノリアと同様に、1日でエルメアーナの様子が変わった事に驚いていたが、それ以上に、新たなアイデアを出してきたことと、その内容をしっかり説明してきたことで、仕事を依頼することに納得したようだった。
しかし、エルメアーナには、説明を終えた後、依頼者であるジューネスティーン達の反応が気になった様子で2人の表情を伺っていた。
ジューネスティーンは、エルメアーナが描いた石板を見つつ真剣な表情をしていた。
(ベアリングの開発だけで、これだけのアイデアが出せるのだったら、ひょっとしたら、パワードスーツの部品の加工とかも、エルメアーナさんに手伝ってもらった方が、早くできるんじゃないのか?)
そして、目の前に置いてある石板を見ると、白墨を手に取り石板の隅の方を白墨で軽く叩き始めるとエルメアーナは不安になり始めた。
(外装骨格の形は、ギルドに提出するパワードスーツによって、基本構造は完成している。 後は、つま先から胴体、そして、指先まで稼働部分は、たくさん有るのだから、それに応じたベアリングを作る必要があるわけだ。 これは、この石板を見ていれば、エルメアーナに任せておけば問題ないだろう。 後は、学校を卒業したら、6台のパワードスーツを作る場所の事もあるからな)
ジューネスティーンは、自分の考えを巡らせていたので、周囲の様子には気がつかないようだが、エルメアーナには、その沈黙が苦痛に思えてきたようだ。
(そうだよなぁ。 ベアリングの技術もだけど、思いついた、ホバー機能については、ギルドとは別物だからな。 ギルドに提出するパワードスーツにはホバー機能は付けないけど、実際に自分達が使うとなったら、移動手段として、歩く走るじゃ、やりきれないからな。 それを含めて考えると、場所の提供とかは、エルメアーナさんか、ジュエルイアンさんに相談する必要があるよなぁ。 そうなんだよなぁ。 6台を作る必要があるのだから、結構広い場所が必要になるよなぁ)
そして、ジューネスティーンは、エルメアーナを見ると、そこには、不安そうな表情で見ていたので、その様子が気になったようだ。
「エルメアーナさん、何か不安要素でもあるのですか?」
ジューネスティーンが聞くと不安そうな表情のまま口を開いた。
「あ、いや、ジュネスが、私のアイデアが、気に食わないのかと、思ったんだ」
そう言って、ジューネスティーンの右手を指差した。
そこには、エルメアーナのポンチ絵の片隅を白墨で叩いている右手があったので、アイデアが気に食わなかったように映ったのだ。
ジューネスティーンは、そう言われて気がついたようだ。
慌てて、手を離すと申し訳なさそうな表情をしてエルメアーナを見た。
「あ、ごめん。 これが気に食わないんじゃないんだ。 むしろ逆に、これだけのアイデアを出せるのなら、他の仕事も手伝ってもらえないかなって、思ったんだ」
そう言うと、エルメアーナの表情は一変し、ムズムズするような表情をした。
エルメアーナにとって、最初に見た日本刀と今回のベアリングだけでも、新技術が詰まっていると思ったのだが、それ以外にも自分の知らない技術があるのかと思うと、知識欲をくすぐられてしまったのだ。
「なんだ、まだ、他に面白いものがあるのか」
ジューネスティーンは、エルメアーナの表情と今の言葉で余計な事を言ったと思ったようだ。
エルメアーナは、その様子を見て椅子から腰を上げテーブルに手をついてジューネスティーンに顔を近づけてきたので困ったようだ。
だが、近づくエルメアーナの目の前にシュレイノリアのロットが、それを遮った。
「エルメアーナ。 これから先の話は、ベアリングが完成してからだ。 ベアリングよりも楽しい事をしたいなら、早くベアリングを完成させることだ」
シュレイノリアは、ジューネスティーンの対応の悪さに呆れたような表情でエルメアーナに答えた。
エルメアーナは、シュレイノリアの話を食い入るように聞いていた。
「お、おお、そうなのか。 うん、分かった。 だったら、こんなもの、直ぐに完成させてやる。 それに、本当なんだろうな。 これ以上に面白いもの有るって話は!」
話に乗ってきたエルメアーナを、シュレイノリアは、鼻で笑うと、当たり前の事を、いちいち聞くなというような表情をした。
「ああ、そうだ。 お前が、寝るのも食べるのも忘れる位の仕事を持ってきてやる。 だから、今は、ベアリングに全力を注げ」
シュレイノリアの対応は、年下か格下の人との話し方だったが、エルメアーナには、そんな事は全く気はなく、ベアリングの後に見た事の無いものを見たり触ったり、そして作る事ができると思うとワクワクが止まらないといった様子だった。
ただ、ジューネスティーンは、シュレイノリアの言葉使いがエルメアーナが気にしないかと2人の様子を見比べていた。
それは、エルメアーナに他の仕事も頼みたいと考え始めていた事もあり、この女子2人が不仲になる事を恐れたようだ。
3人の話がまとまり、実際に仕事に掛かる段階になったとカウンターの方から話を聞いていたアイカユラが、やっと自分の出番だと思ったようだ。
「じゃあ、必要な材料の手配になるわね」
テーブルの3人に、カウンターに居たアイカユラが、参加してきた。
そして、テーブルの内容を確認しつつ3人に聞いてきた。
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