第20話 2度目のディスカッション 3


 パワードスーツの開発は、自分の動きに連動して動かす必要があるので、内部の人の動きに連動して動くための外装骨格と人工筋肉が必要となる。


 外装骨格や人工筋肉については、ジューネスティーンが受け持ち、それを動かすための魔法の開発はシュレイノリアが行っていた。


 最終的には、魔法を魔法紋として描き、内部の人間の動きを検知し、その動きを外装骨格に伝え、内部の人の動きに連動させる。


 そして内部の人と、パワードスーツの動作部分を保護するための外部装甲によって出来上がっている。


 その開発をジューネスティーンとシュレイノリアの2人が行っているのだが、その中で、重要なパーツであるベアリングについてエルメアーナが受け持ってもらえたことは、2人にとってありがたかったのだ。




 エルメアーナの店に来た時は、機嫌が悪かったのだが、エルメアーナの話を聞いて、シュレイノリアは、かなり、嬉しそうにしていた。


 それは、エルメアーナのアイデアとアイデアの説明が、シュレイノリアのツボにハマったらしく、機嫌が良くなった。


 ジューネスティーンのパワードスーツの開発において、各部関節や可動部分にベアリングを取り付ければ、動きがスムーズになり、それによって、使えるパワーも大きくなるのだ。


 ただ、ジューネスティーンにしても、シュレイノリアにしても学校で製作中のパワードスーツに、ベアリングを使うかまでは、考えを保留中だった。


 ギルドに提出する事になっているパワードスーツなら、自分達が使う事も無いので、ある程度の動きができればそれで良いのではないかと、入学後に考えていたのだ。


 自分達で使わないものを、わざわざ、最高水準まで性能を上げて渡す必要はなく、それなりの性能を出せれば問題はない。


 始まりの村でフルメタルアーマーを改造して作った1号機でも、学校の授業でも、それなりに使えており、ギルドに提出する2号機は、ベアリング無しでも構わないと2人は考えていた。


 ギルドに提出する2号機は、3号機を作るためのデータ取り用に、問題点をチェクするために使うつもりでもいたので、完成度は高くなくて良いとも考えていたのだ。


 そして、卒業後に本格的なパワードスーツを使う事を考えたら、ベアリングの開発は、エルメアーナに任せられた事は、パワードスーツの製作に集中できるので都合が良かったのだ。


 ベアリングを間に合わせるなら、卒業後に自分達で使う3号機の方で使えるようにした方が良いという話になっていた。


 パワードスーツの納品の中には、ベアリングの開発は入っていないのだから、2号機にベアリングを使わなくても、性能が出せていればそれで良いのだ。


 だが、その話をエルメアーナにするつもりは、ジューネスティーンにもシュレイノリアにも無かったようだ。


 エルメアーナは、ベアリングの開発が急ぎだと思っているので、完成を急いでいる。


 そのお陰で、エルメアーナは、知恵を絞ってくれる事になった。


 ジューネスティーンのアイデアから、さらに実用的なアイデアを出してくれたのだ。


 エルメアーナが、自分達の思惑にはまってくれたことが、シュレイノリアをさらに喜ばせていた。




 ジューネスティーンとしたら、自分のアイデアをエルメアーナが、さらに発展させてくれた事で、ジューネスティーンとしてもベアリング開発の目処が立ったと喜んでいるようだった。


 そして、ジューネスティーンとシュレイノリアは、エルメアーナのアイデアに対して、まだ、何か、加える必要があるか、欠点になりそうな部分はないか、検討していたのだが、2人には、これ以上の問題になりそうな部分が見つけられそうもないようだった。


(すごいな。 やっぱり、鍛冶屋が本業だから、こんなとんでもない依頼でも、最初こそ戸惑っていたけど、一晩で、ここまで仕上げられるのか)


 ジューネスティーンは、エルメアーナが描いたポンチ絵を見て感心していた。


(転がってくる時に、放射状の溝は、角があるのか。 でも、これは、立ち上がり部分に、カットなり、アールなりを付ければ対応可能だと思うが、確かに同心円の加工の方が、作業は楽になるな)


 自分の描いたポンチ絵も比較対象として見ていた。


(そうだな。 ベアリングの開発は、早いに越したことはない。 ジュエルイアンさんには、資金も人材も出してもらっているから、少しでも早く量産化したほうがいいだろう。 それに、この後、実用性の高いパワードスーツの製造になるなら、資金も場所も必要になるだろうからな。 ジュエルイアンさんとの付き合いは、友好的にしておいた方がいいだろうね)


 エルメアーナの様子を確認すると、自分のアイデアが、シュレイノリアにベタ褒めされていたことが嬉しかったのか、ニヤニヤが止まらないようだ。


(そうだ。 このエルメアーナさんだって、とんでもない鍛冶屋なんだから、全く知らないものでも、自分の考えがまとまってくれば、こうやって、程度の高い提案をしてくれている。 やはり、この人だって天才と言っても過言でない鍛冶屋なんだろう。 ジュエルイアンさんは、本当に良い人材を持っている)


 そして、ジューネスティーンは、考えるような表情で天井を見た。

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