第2話(5)





——村——


「今日は楽しかったわねぇ、キャサリン。」


「―うん!ねぇママ!今日はごはん何——・・・」


ドサッ


「い・・・いや・・・。」


「ママ?かご落ちたよ?」


「いやぁあああああああ!!!!」


「ママ?・・・キャ―――――――!!!!」



―村の入り口を見ると、巨大樹の森からやってきたと思われる巨大な魔物の大群。


そしてその先頭には、鋭い牙の生えた口と、凶器のような爪の生えた手を真っ赤な血に

染め、不気味な笑顔を浮かべるあきらかに人ではない何か――!!


「イヤ――――――!!!」


「はぁ・・・はぁ・・・と、と“も”た“ち”に“な”ろ“う”よ“・・・。」


「キャ――――――――!!!!!!」



「どうした!?・・・魔物の群れ!?なぜこんなところに!!」


「皆―!!魔物が出たぞーー!!早く非難を!!」


「ママ――!!パパ――!!」



村は一瞬で大混乱に陥った。


怒鳴り出す人、泣きわめく人、神に願い出す人・・・。


「わ、私は敵じゃないよぉ?」


先頭の魔物は血のこびり付いた口でにこぉっと奇妙に笑った。


「くそぉ、魔物め!出ていけ!!」


「いたっ!ちょっと棒とか投げてこないでよ!!」



「ママ、私達もはやく逃げよ?」


「そ、そうね!早く村の奥へ!!」



――その時だった。



「あらぁ!??先客がいたとはなぁ。ケッケッケ。」


あれは――ゴブリンの群れ!?


「お前たちも俺らと同じ、久々に狩りでもしたくなった口かぁ!?ギヒヒヒヒッ!」


「はぁ?狩り?」


「獲物は早いもの勝ちだぁ!!お先にいただくぜっ!!」



ひと際大きなゴブリンはそう言うと、村を荒らし始めた。


「キャ―――――!!!!」


「キャサリン!!」


「ママ―――――――!!!!」



「旨そうな嬢ちゃんだぁ。ヒッヒッヒ。」


――嫌!!食べられる!!


「いっただっきまー・・・」


「・・・ちょっとねぇ。何してんの?」


「あ?」


「・・・?」


ゴブリンの後ろを見ると、そこにはさっきの不気味な小型魔物が――。



「・・・っと会えたのに。」


「なんだってぇ?」


「やっと人型の生物に会えたのに、襲ってんじゃねーーーよ!!!!」


あれ?あの魔物・・・泣いてる?


「なんだお前。俺たちのやり方に文句でもあんのか?こんなちっこいナリしてよぉ。」


バシッ


「あでっ!」


小型魔物をつつこうとしたゴブリンの手は払いのけられた。


「・・・るな。」


「は?」


「触るな!!外道がっっ!!!」


小型魔物がそう叫んだ瞬間、目の前のゴブリンは途端に炎に包まれた。


「ぎゃぁああああ!!熱いっあついいいいっっ!!」


「っけほ、げほっ!!」


「!キャサリン!!」


「ママ・・・。」


さっきのゴブリンに目をやると、炎に包まれながら既に動かなくなっていた。


小型魔物はと言うと、私と大差のない小さな体から炎の渦を出し、村のゴブリンを一匹残らず灰にしてしまった――。


「ひぃ・・・!」



村は炎に包まれる。


ゴブリンの群れをたった一瞬で倒してしまった小型魔物。


そしてその後ろには小型魔物の引き連れる大量の兵(虫とカエル)——!



小型魔物はゆっくりとこちらを見るとその血まみれの口を動かした。


「・・・ねぇ、おとぉもぉだぁちぃに、ならぁなぁぁい?」


ニタァっと笑った口からは血が流れ落ちた。




――ああ、これが怪物なのね。


そりゃあ、人間が立ち向かったって勝てないはずだわ・・・。


「キャサリン!!」



――そうして私は意識を手放した――




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