第2話(3)
「ふぅ・・・。」
お腹もいっぱいになったし、次は何しようか・・・って、はっっ!!
「私は何のために城を抜け出してきたんだぁあああ!!」
——遡ること数時間前——
「・・・お嬢様。聞いてますか!?」
「へ?ああ・・・うん。聞いてるー・・・。」
私はベターっと机に突っ伏す。
「まったく・・・。いいですか。お嬢様は魔王様のお子様。その身に恥じないような教養が必要不可欠なのですよ!」
「あー・・・、うんー・・・。」
私はこの金髪糸目のお兄さん、ジルに説教され・・・じゃなかった、魔術の勉強を教わっている。
私はこんな机にかじりついて勉強するために転生してきたんじゃないってのに・・・くそー。
「机噛まないでください!もっとお嬢様らしく・・・!はぁ、わかりました。では今日はこれだけでも覚えてください。」
ジルは諦めたようにため息をつくと、黒板に何かを書き始めた。
「なにそれぇ?」
「これは魔術の基礎、恩恵についてです。」
「おんけぇ??」
「はい。この世界には『精霊石』という石があります。人も魔族も皆、魔術を使う際はこの石に呼びかける必要があります。」
言いながらジルはポケットから小さなペンダントを取り出した。
「これがその精霊石です。これは赤い石なので、火の精霊、サラマンダーが宿っています。」
ジルは真っ赤なその石を私に見せてきた。
「わぁ・・・きれい。」
石は角度を変えると、光に反射してキラキラと輝いた。
「精霊石は現在確認されているだけで10種類存在します。火、水、土、風、雷、氷、樹、音、光、・・・そして闇。」
ジルはカカカ・・・と黒板に書き出していく。
「魔術は基本的には精霊石さえ持っていれば誰でも使えます。ただ、10種の精霊石を持っているから10種の精霊の魔術が使えるかと言えば、話は別です。」
「なんで?」
「人族も魔族も、得意不得意があるからですよ。例えば僕なんかは氷の魔術が苦手なので、氷の精霊石を持っていても、魔術は使えません。」
「んへぇ・・・。」
「お嬢様はまだどの魔術が得意なのかわからないので、これから一緒に探していきましょう!」
するとジルは先ほどの赤い精霊石のペンダントを私の首にかけた。
「ジル?」
「これはプレゼントです。明日はこれで火の魔術の練習をしてみましょう!」
「れんしゅう~?」
私はあからさまに嫌な顔をして見せた。
私は早く友達作って冒険とかして青春を謳歌したいのに・・・。
「何事も練習あるのみですよ、お嬢様!さてそれでは次はその精霊石について・・・。」
げっ、まだやるの!!
この子供時代の時間には限りがあるというのに!?
30歳なんてすぐなんだよジルさん!?(体験談)
「いてててて。お腹いたいよぉ~。」
「え!?大丈夫ですか!?お嬢様!?今すぐ治癒魔術を・・・!」
「大丈夫大丈夫!トイレ行けばすぐ治るやつだから!!行ってきまーす!」
「治らなかったら無理せずに言ってくださいよー!」
・・・・ジルめ、ちょろいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます