『前門のヒグマさん、後門のパンダさん』

やましん(テンパー)

『前門のヒグマさん、後門のパンダさん』


 『これは、ほんとに、しょうがない、フィクションです。ただし、しょうがナイトは、出ません。』




 宇宙ごき地球政府が、長寿の表彰してやるというので、人類収容所から、久しぶりに外にでることとなりました。


 気は進みませんが、お断りすると、スープにされるかもしれないとのことなので。


 この、人類収容所にいる人類は、約561人です。


 比較的、小さな収容所なので、また、所長さんが、音楽好きな、穏やかな宇宙ごきなもので、わりに、手厚くもてなしてくれています。


 ところが、ナンバーツウの、地球ごきさんが、どうにも、頭の硬いごきさんで、なにかと意地悪をしたがります。


 それでも、所長さんが、収容所にいるような時は、小さくなっておりますが、外出していると、過超労働をさせたり、軽い拷問をさせたりします。たとえば、足の裏を、たくさんの、小さなごきさんが、こしょこしょするのです。


 ぼくが、ここに移されたのは、必要な治療が可能な病院が、前の収容所の近くにはないからです。


 本当は、自宅に返して欲しいのですが、宇宙ごきの、現地球総督が、やなやつで、自分に役立つ金持ち地球人以外は、収容所送りにしてしまいます。


 これで、収容所長が悪いと、地獄になります。


 ごき大将と親しいぼくは、大将から、宇宙ごきのシンパ組織に名前だけ入れてくれたら、すぐに自宅に返せると、言われていましたが、お断りすると申し上げました。


 長寿のお祝いは、80歳以上になっている地球人が対象です。


 今回は、わが収容所からは、5人が該当者でした。


 しかし、もはや、こんな屈辱的な生活は、やですからね。


 ぼくは、反宇宙ごき派の地球ごきと、密かに連絡を取り、脱走の計画を立てておりました。


 宇宙ごき側は、送迎バスを用意していたのですが、用心のため、前門から出るか、後門から出るかは、その時にならないと分かりません。


 そこで、正門(前門)の前で、地球ごきさんに、トラブルを起こしてもらう手はずです。


 つまり、地球ごき部隊の大型トラックに、故障してもらいます。


 門番のひぐまさんは、非常な生真面目なので、簡単には話が収まらないかと。


 裏門のぱんださんは、人類には、わりに好意的です。しかも、めんどくさいので、正式な送迎バスを止めるはずがないと思いました。


 気の毒なのは、運転手さんですが、裏門を出たところで、のら猫軍団に襲ってもらいました。


 しばらく、休憩です。



 なぜかわからないですが、すんなり、うまく行きました。


 こうして、80歳以上の5人は、まんまと、脱走し、月の巨大なドーム基地から、地球ごきの輸送宇宙船に乗り込み、1時間で地球に帰りました。


 ぼくも、13年ぶりに、自宅に帰りました。


 後でわかったのですが、じつは、こうして、地球に返してもらえるのが、最初から、お祝いの内容だったのだそうです。


 宇宙ごきも、地球ごきも、地球人類も、早い話し、意地っ張りで、見栄っ張りの、似た者同士だというわけなのです。


 ならば、争い事なんか、やらなきゃ、良いのにね。まったく。呆れてしまいます。


 

            おしまい






 


 


 


 

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『前門のヒグマさん、後門のパンダさん』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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