サッカーへの理解度

「よし。まずは軽く二チームに分かれサッカーゲームをするか。とりあえずはまぁ、サッカー部未所属の実力がどれくらいか見たいところだから……俺とウジがゴールキーパーでいいな」

「ああ、それがいいな。じゃあ、どう分かれるかはお前らは適当にじゃんけんで決めてくれ」


 充希はルールを、氏真はチーム分けの説明をした後、それぞれゴールに移動した。


「アッ、アッ、じゃあ……や、やります、か?」

「デュフフフフ……そうですね」


 城山君と村々君に促され、俺たち六人は身構え……


「「「「「「グッとパーで分かれましょ!」」」」」」

「ちょっ、村々キュン! なんでチョキを出してるっしょ!? いくらなんでもやばすぎっしょ!」

「あっ、デュフフフフフフフ……ごめん原君。昨日駅で見たギャルのことを考えていたから、ルールを聞いていませんでした。デュフフフフフフ……」

「次ちゃんとやれば許すっしょ!」


 変な笑い声を浮かべる村々と声が大きい原君……常に下を向いている城山君。


(大丈夫かな? こんな癖の強いやつらで。俺、やっていける気がしないよ……)


 試合前だが、俺は早くも心が折れそうになっていた。首の皮一枚で耐えているレベルだ。


「も、もう一回いこうか……」

「「「「「「グッとパーで分かれましょ!」」」」」」


 今度は俺が指揮を執り、もう一度チーム分けのじゃんけんをした。その結果……


「グーは俺、山田君、兄目君。パーは城山君、原君、村々君か……」

「グーは俺と同じチームで、パーはウジと同じチームな!」


 遠くにいるためか、充希は大声を出し、そう呼びかけた。そして、俺たちはそれぞれ配置についた。


「あ、兄目君、山田君。よろしく」

「おお! 流川氏! こちらもよろしくお願いするでござる!」


 ……ござる? 今時そんな口調のやついるんだな。兄目君も癖が強いな……


「流川、早速で申し訳ないのだが僕はベンチでいいだろうか? 漫画のネタのために、観察をしたいのだが……」


 山田君はやる気ねえな……なんだよ観察って


「いやいや、チーム分けしたんだし参加しよ? それに、自分自身も体験すればもっといい漫画のネタとか拾えると思うよ?」

「ふむ……それもそうだな。では、試合に参加するとしよう」


 よし、とりあえずそれっぽい言葉をかけることで、引き留められた……


「じゃあ、まずはボールどっちのチームが持つー?」

「ミッツのチームでいいぞー!」

「おっけー! 後、何点取ったら勝ちにするー?」

「三点でー!」

「おっけー!」


 充希と氏真は、お互い大声で会話をし、ルールを決めた。


「瑠夏、山田、兄目。後は俺たちで作戦会議だ。こっちに来てくれ」

「わかった」

「うす」

「はい!」


 俺たち三人はゴールにいる充希のもとへ早歩きで近づき、四人で小さい輪を囲むように集合した。


「……とりあえず、瑠夏と兄目はミッドフィールダー、山田はデフェンダーでいいか?」

「???」


 充希は小声で作戦を俺たちに伝えてきたが、少なくとも俺は全く理解できなかった。なんだよミッドフィールダーって……


「瑠夏……お前明らかになにそれ美味しいの? って顔してんな。全く」

「す、すまん……」

「兄目と山田は理解しているっぽいぞ。なぁ?」


 えー……いやいや、さすがにサッカーに関わったことがないこいつらに理解できるわけがないだろ。そう思いつつ、俺はこそっと二人に聞いた。


「あ、兄目君、山田君……サッカーのこと、わかるの?」

「はい! 細かいルールまでは分かりませんが、少なくともポジションがどこにいるべきかも理解しております! はい!」


 マ、マジか……


「サッカーのすべてのルールは分からんが、ざっくらばんなルールやポジションは理解しているつもりだ。それらは、最近読んだレッドロックという漫画から学んだのさ!」


 ま、漫画かぁ……


「おお山田氏! お主もレッドロックを見たのでござるか!?」

「ああ、全巻持っているぞ。連載初期から追っているからな」

「な、なるほど! 山田氏、私は生憎アニメから入った人間でして……なのでネタバレはNGでござる~」

「わかった。アニメでやったところしか語らんよ。アニメ終わったら原作貸すよ」

「おお! ありがたき幸せ~!」


 なんか兄目君と山田君いつの間にか仲良くなっているんだけど!? やばいって! 俺、レッドロック読んでないし! サッカー系のアニメとか小学生のころに見たカミナリイレバンで止まってるんだよ! しかも当時ルールとか全く理解しないで見てたし!


「み、充希……俺、どうしたらいいんだよ」

「まぁ、流れに身を任せろ。すまんがゼロから百までルールを教えると無駄な時間食うからな」

「そ、そんなー……」

「まぁ、とにかく頑張れ!」

「……わかったよ」


 俺は不安な気持ちに包まれつつ、今はとりあえずサッカーゲームに臨むしかないと思い、無理やり覚悟を決めた。


「おーい流川氏! お主は私の隣で待機ですぞー」

「ああ、分かった!」


 あっ、ミッドフィールダーは前にでるんだな……覚えた。


 俺はツギハギでルールを覚えつつ、兄目君と共にポジションについた。

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