インタビューは続くよ。どこまでも

「急に呼び出してすまなかったね。平野クン」

「本当は来たくなかったんですけどね……でも成司先輩が結構切羽詰まってた顔してたから、相当なことをしでかしてしまったんだなと思いまして」

「ああっ、違う。別にキミがまたなにかしたとか、そんなので呼んだわけじゃないのだよ。むしろ、あの事件を除けば、キミは模範的に過ごしていると聞いているぞ! 今日呼んだのは、俺の個人的な仕事なのだから、堅くならないでくれたまえ」

「は、はぁ……」


今日俺が平野クンを生徒会室へ呼んだ理由。それは……概ね六葉クンと同じだ。


「ほら、寿人特製ハーブティーだ」

「あ、ありがとうございます……」


そして、緊張をほぐすために彼女にハーブティーの入ったマグカップを差し出す。女性をもてなすなら、これくらい朝飯前だ。今は夕方だがな。


「ほっ……」


そして、彼女がハーブティーを飲み、一息ついてからが本番だ。


「平野クン、前置きとかをすると長くなるから、いきなり本題から入ろうと思うのだが、いいだろうか?」

「大丈夫です。紫苑もあまり長くいたくないので、手短にお願いします」

「そ、そうか。わかった……では、単刀直入に言おう。キミから見た流川瑠夏という人間のことを知りたい」

「……え?」

「まぁ、そんなリアクションになるのも無理はない。だが、遠慮なく言ってくれたまえ。自分が知っている流川瑠夏という人間を!」

「……」


しまった……熱を込めすぎたあまり、黙り込んでしまった。だが、平野クンは早く帰りたがってたし、しばらくこのまま自分から言うまで、俺も大人しくするとしよう。


(な、なんでこの人るーちゃんのこと知りたがってるの……? もしかして、瑠夏の弱点を探って梨音をNTる作戦!? じゃあ、紫苑にとっては都合がいいね! 梨音やあの女は盲目的なくらいるーちゃんの長所しか見てないけど、長い付き合いの紫苑は、いいところだけじゃなくて悪いところも知ってるんだから! 大事な幼馴染の悪口を言うのは心が痛むけど、これは紫苑と成司先輩、お互いにとってwin-winな結果になるから、いいよね!)


おっ、一気に平野クンの表情が明るくなったぞ! これはいい情報が聞けそうだ!


「るーちゃんはね、薄情者なの!」

「は、薄情……?」


にこやかな顔でそんな言葉を吐く彼女に、俺は戸惑うしかなかった。


「う、うむ……では、どういうところが薄情者なのかな?」

「紫苑とるーちゃんは長い付き合いなんですよ! 同じ病院で生まれ、隣同士の家で過ごして育った仲なんです!」

「そ、そうか……」

「で、小学校までは同じだったんですけど中学は別々でした」

「う、うむ」

「で、聞いてくださいよ! 中学とき紫苑、るーちゃん紫苑がいなくて寂しいだろうな〜と思って何度も遊びに誘ったのに、スルーしやがったんですよ! 確か、未読だったと思います!」

「なるほど……それは悪質だな」

「でしょ!? しかも高校でようやく再会できたと思ったら、紫苑に黙って彼女作りやがってたんです! 一番最初に好きになったのは、紫苑なのに! 結構アピールしてたのに! ひどくないですか!?」


な、なんだ!? てっきり流川瑠夏の素晴らしいところを言うと思ったら、悪口のオンパレードではないか……


「ひ、平野クン。キミが流川瑠夏にいい感情は抱いていないのかね? さっきから酷いではないか」

「え?」

「キミたちは幼馴染なのだろう。悪いところ以上に、いいところをいっぱい知っているはずだ。だから平野クン、無理にとは言わないが流川瑠夏のいいところも言ってくれると嬉しい」

「あ……え?」


俺がそう言うと、平野クンは驚いていた。一体なにと勘違いしていたのだろうか……?


(成司先輩がるーちゃんのいいところを知りたがってる……? 梨音を奪うために弱点を探るためじゃないの?)


と思いきや、今度は難しい顔をしていた。そんなに流川瑠夏のいい部分が思いつかないのか、はたまた多すぎて迷っているのか……いずれにせよ、楽しみだ。


(今度は微笑んだ!? 成司先輩、一体なにを考えてるの!? 怖!)

「平野クン、話はまとまっただろうか?」

「あ、はい……(とにかく成司先輩が望んでるなら、るーちゃんのいいとこいっぱい言おう! 紫苑が一番るーちゃんのこと知ってるんだから!)」


ふふ……いよいよ聞けるぞ。

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