副会長と放送部
「……これでよし」
「お疲れ様です。副会長」
俺は放送部の人に頼み込み、校内放送を通じて呼び出しをしたところだ。そして、俺の放送が終わった直後、その放送部の方が頭を下げてきた。
「いやいや、その言葉を言うのは俺の方さ。すまないな。いきなりマイク貸してくれなんて言って」
「いえいえ! 成司寿人様のためなら仰せのままに!」
「ははは……それは頼もしいな。それにしても小野クン、キミの放送は毎日聴いているのだが、素晴らしいものだ。話すスピードと聞こえやすいようなハキハキとした声。それだけでなく、人を惹きつけるような元気さにリアクションに、高いバラエティ力! なにからなにまで素晴らしい!」
「な、成司様に褒められるなんて……私、生きててよかった!」
放送部の人……小野壮子(おのそうこ)は顔を赤らめつつ、喜んでいた。だが、俺の言っていることは本当のことだ。彼女の校内放送は毎日聴いているはずなのに、聴き飽きない。本当に素晴らしいものだ。
「副会長、そろそろ行きますよー……」
「ああっ、すまない。では、失礼するよ」
なぜか少し刺々しい声をした二宮クンに促され、俺たちは放送室を後にした。
「それにしても二宮クン、なにもキミまで俺について行かなくてよかったのではないか? キミにだって、友人とランチをする時間はあるだろうに……まぁ、この後俺という人間とランチができることは光栄なことだがな!」
「……副会長は隙あればまた女を口説き落としますから。私という監視役がいないと。それに、あなたとのランチはたまたま! 残ってる作業があるから偶然場所が同じなだけですから!」
「そ、そうか……まぁ、俺にとっては世の女性は宝だからなっ! 口説かれて彼女らも本望だろうっ!」
「勢いつけて言わないでください……それよりも、どうして流川君ではなく三葉君の呼び出しをしたんですか? 彼のことを知りたいなら本人を呼んだほうがより知れるのでは?」
「うむ……俺も最初はその考えはあった。だが、ライバル視している人間に色々質問をするのは、俺のプライドが許さないのだ!」
「……変なプライドは捨ててください」
「いや、プライドだけではないぞ。第三者から見た流川瑠夏という人間がどんなものかを聞きたい。というのが一番の目的だ」
「第三者……?」
「前にも話しただろ? 人は十人十色。誰かにとってはよく見えるし、別の誰かにとっては悪く見えると。だから俺は、流川瑠夏と親しい人間の視点から見た、流川瑠夏という人間性を知りたいのだ。それで最初に選んだのが、彼の男友達である五葉充希クンだ」
「副会長……三葉です」
「おっと……」
「まぁ、確かにそのやり方のほうがいいかも知れませんね……私から見た門矢梨音は少し憎く見えますが、あなたから見たら素敵な女性ですものね」
「む? なぜキミから見た門矢クンをそう見えるのだね? 教えてくれないだろうか?」
「……今の話は聞かなかったことにしてください。それよりも、副会長は三葉君から見た流川君のことを聞き出すことに集中してくださいっ!」
「あ、ああ……」
そう刺々しい声を出しながら、今まで俺の隣で歩いていた二宮クンは急に早歩きをし、先に行ってしまった。
今日の二宮クン、やけに機嫌が悪いな……
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