調査しなくては……!

放課後の生徒会室にて、俺はある決心をした。


「やつのことを知らなくては!」


本来は今日、部費の予算案についての会議という大事な日だ。だが、俺はそれ以上に流川瑠夏のことを調べなくては……と思った。なので


「すまない二宮クン。今日の会議の仕切りはキミに任せようと思う」

「えっ……は!? 今日はただでさえ重要な会議の中でも、5本の指に入るくらい重要な案件なんですよ!? それをほっぽり出してまであの男のことを知りたいって……」


当然、二宮クンからは抗議された。だが、やつのことが頭でいっぱいになり、会議に集中できずにしっかりとした案を取り入れることができないかもしれない。

そして、やつのせいで俺の評価が下がるのが癪だ。だから、俺は動かなくてはならない。やつのことを調査するために……!


「すまない二宮クン。お詫びに明日、駅前のスイーツを買う」

「そ、それならまぁ別に……この二宮千紘にお任せください!」

「ああ。頼む!」


俺はそう言い残し、颯爽と生徒会室から去っていった。



「やつを調査する……それは、やつをつけることだ!」


俺は流川瑠夏が校舎からタイミングをはかり、少し遅れるような形で陰からやつの後をつけることにした。

やつがなぜあそこまで色々な女性から惹かれるのか。なぜこの俺、成司寿人を差し置いて門矢梨音クンと付き合っているのか……その理由が知れるはずだ!


「……それにしても流川瑠夏め! 俺の意中の女である門矢梨音と帰りやがって! 一体どういうつもりだ!? 俺に気づいてわざと見せびらかしているのか!? 流川瑠夏……貴様!」


だが、やつは俺の存在には気づいていないはず。だから一緒に帰っているのも、ただのありふれたカップルのやる行為なのだろう。


「しかし、二人は住んでいる家が別々の反対方向のはず……一緒に帰るとなると、効率が悪くないだろうか? それも気になる」


なぜ、俺が二人の住所を知っているかというと、それは俺が副会長だからだ。


……答えにならないのなら、分かりやすく言おう。元々肝杉高校の全生徒の住所は池綿会長が握っていたのだが、受験にともない俺が生徒会の事実上のトップになるという理由で、俺にその情報をくれたのだ。だから俺がストーカーしたとかそんなのではない。実際、四葉クンや平野クン、最近やってきた一年の転校生である藤井クンの住所も知っているのだ。


「おっと。止まっていると見失う。ゆっくりと音を立てずについていかなくては……」


俺はバレないように努めつつ、なるべく木や電柱など、身を忍ばせやすいところに隠れつつ、後をつけた。


「おおっ……流川瑠夏! 門矢クンに首を絞められてる! よし、そのまま殺るのだ! いや、門矢クンを犯罪者にするのはダメだ! やっぱりやめろ!」


俺は流川瑠夏と門矢クンの様子を見ては一喜一憂し、後をつけつつ隠れることを繰り返した。

ここまでは順調且つ慎重に行なっていたのだが……


「あっ!?」


急に二人が走り出した。まずい! このままじゃ見失う!


「走ると足音がなり、バレるリスクはあるが、俺はそのリスクよりも流川瑠夏を観察することを取った。だから、彼らを追いかけた。


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