あいつはどんな人間なんだ……?
――生徒会室
「……長」
流川瑠夏……あいつはどうしてあんなにモテる?
「……会長」
流川瑠夏……あいつはどうしてこの俺を差し置いて色々な女を惹きつけるんだ?
「……副会長」
流川瑠夏……あいつはどんな人間なんだ?
「成司副会長!」
「ああっ……すまない」
「どうしたんですか? 私が何度呼んでも反応しなかったじゃないですか?」
俺に何回も声をかけてきたのは、書記の二宮千紘クンだ。学年は一年生で、少し茶色のかかった綺麗な黒い髪をポニーテールにしている。目は吊り上がっており、物静かでクールだが、この学校をよくしようという熱い思いを胸に秘めている。
彼女のような美しく優秀な書記を無視してしまうなんて、なんてことをしてしまったんだ。俺は……
「俺としたことがすまない……考えごとをしていたのだ」
「考えごと……ですか。どうせまた女子のこと考えていたのでしょう?」
「失敬な! 俺だってたまには別のことを考えるさ!」
「別のことって……じゃあ、なんのこと考えていたのですか?」
「……男のことだ」
直接本人の名を出しても分からないだろうと思い、俺はあえて伏せた。
「あ、ふ、副会長……そうだったんですか」
「ん? なにがだ?」
なぜか二宮クンは涙目になっていた。いや、俺の気のせいだろうか? もしも彼女を傷つけたなら謝ろうと思っているが……
「あっ、いやでも……最近では多様性が認められる世の中になってきていますし、副会長が誰を好きになろうが私には関係ないですから!」
「な、なんのことだね!?」
二宮クンは急に俺から顔を逸らした後、声を荒げた。というか彼女、なにか勘違いをしていないか!?
「に、二宮クン! 俺は決してそんな意味で考えていたんじゃないぞ!」
「……本当ですか?」
二宮クンは涙を拭いながら、顔をこっちに向けてくれた。
「あ、ああ。本当だ! むしろ俺は彼を目の敵にしているというところだ」
「目の敵ですか……? もしかして、池綿会長ですか? 大丈夫ですよ。あの人、来年になったら卒業するので自動的に成司副会長が会長ですよ。それに、今会長は受験でいないので、副会長が事実上の会長ですよ」
「いや、違うのだよ。むしろ俺は会長を心の底から尊敬している。中学のイキった俺が変わったのも、遠回しとはいえ会長のおかげだからな」
「な、なるほど……というか副会長、イキってたんですね」
「今の話はここだけの話だぞ。俺と二宮クンだけの秘密だ」
「ひ、秘密……副会長と私だけの秘密! ふふっ」
なぜか彼女は嬉しそうだった。
「では副会長は誰を目の敵にしているのですか? 生徒会の男子メンバーですか?」
「正直、生徒会のメンバーの男共は今すぐクビにしたいと思っている。だが、公私混同はよくないから思いとどまっている。だが、生徒会のメンバーも別に目の敵にしているわけではない」
「では、誰ですか?」
「二宮クンと同じ学年のやつだ。クラスはキミとは違うけどな」
「もったいぶらないで名前言ってくださいよ」
「そいつは流川瑠夏というやつでな……特別秀た才能があるわけでもなければ、勉強もできないのだ。顔も平均的……いや、平均以下だ」
「そんな副会長がなぜその人をライバル視してるんですか? 副会長と張り合える要素、なさそうですが……」
「その流川瑠夏はな! 俺が好意を寄せていた一年生の女子、門矢梨音クンと付き合っているのだ! 俺はそれが許せないのだ! 俺が先に告白したのに……俺のよさを全力でアピールしたのに!」
「……そうなんですね。副会長、門矢さんが好きなんですね」
「はっ……すまない。つい、熱くなってしまった。ま、まぁ流川瑠夏は門矢クンの他にも二人の女子からモテているのだよ。それが気になるあまり、俺はやつのことを考えてしまっていたというわけだ」
俺は頭を冷やすため、雑にまとめに入り、話を終わらせた。
「……門矢さんがいなくても、私がいるのに」
「ん? なんだい?」
「……いえ、なんでもありません」
心なしか、二宮クンの声色が少し暗くなっている気がした。
俺はそれが心配になり、彼女に聞いた。
「ど、どうしたんだい二宮クン? 元気がないようだが……」
「誰のせいでこうなっ……いえ、なんでもございません。なんか、暑いので会議始まるまで風に当たってきます。夏のせいでしょうかね〜……」
「あ、ああ……」
二宮クンはどぼとぼと歩き、生徒会室の扉を開いた。
「……副会長のバカ」
そして、こちらを見てなにか口を動かした後、生徒会室を後にした。
だが、あまりにも小さすぎて俺の耳には入らなかった。
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