作戦決行
――放課後。俺は梨音から頼まれて、ある人と一緒に校庭にいる。
その人は……
「全く。なぜこの俺がキミと一緒にいなきゃいけないのだね?」
「しょうがないじゃないですか……梨音の作戦なんですから」
「ふん。勘違いするでないぞ流川瑠夏。俺が今キミと一緒にいるのは、門矢クンからの頼みなのだからな。そして、兄さんの仇討ちのためでもあるのだからな」
赤髪のカツラを被った成司先輩である。ちなみに、亜姫の推しと成司先輩の関係はさっき梨音から聞いた。それでこの作戦を考えたのである。
ちなみに、なぜ俺と成司先輩が一緒にいるのかというと……
▲
――十分前。生徒会室にて。
「いいですか? 藤井さんの推しである赤澤夜寿さんは、俺様系のキャラを演じておりました。なので、しっかりと演じてください」
「はぁ……俺様系か。優しい優しい俺には、似合わないな」
そうほざきながら、成司先輩はうざったい髪をかき上げていた。こいつほど俺様系キャラが似合うやついねぇよ……
「で、赤澤さんと瑠夏は仲のいい友達……? うーん、先輩後輩……? と、とにかく仲のいい関係ってことで!」
「ま、待ちたまえ! そこらへんは重要な内容だぞ!」
「いや……とにかく、仲睦まじくしてください。で、ここで藤井さんが瑠夏に気づいて、迫ってきます。で、ここで赤澤さん役の成司先輩からこの浮気者って藤井さんにしかけるんです。そして、瑠夏は二人でお幸せに〜って言ってその場から逃げます。それで作戦は終わりです」
梨音は懇切丁寧に作戦内容を話した。
「ま、待て! 俺はどうなる!? 兄さんの仇なんだぞ!?」
「あとはまぁ……正体バラすなり隠すなりは成司先輩にお任せします!」
「お、おおーぃ!? 僕は投げやりかい!?」
「はい。あくまで瑠夏を助けるためなので」
梨音はしれっと冷たく言い放った。
「くっ……流川瑠夏ぁ!」
「な、なんかすみません……」
「軽々しい謝罪はいらん!」
俺は成司先輩から睨まれ、バツが悪くなり謝ったが、一蹴された。
「面白い話してるね〜紫苑も仲間に入れてくれよ〜」
と、ここで紫苑がカッコつけながら生徒会室の扉を開け、やってきた。
「……紫苑。もう授業は終わったよ」
「紫苑、今更来てどうするのよ……」
俺たちは彼女の怠惰ぶりに呆れ、ため息をついた。ここで、俺にはあることが引っ掛かった。
「梨音、いつの間にか紫苑を名前で呼んでるのか……?」
「はっ……しまっ!?」
「うん。そうだよ」
と、ここで本人ではなく紫苑が肯定する発言をしながら、こちらへやってきた。
「ちょっ……ちょっと!」
「梨音ちゃんが急に紫苑のこと名前で呼ぶからさーだから、紫苑も名前で呼ぶことにしたんだよねー」
紫苑はなぜかこちらをドヤ顔で見つめながら、そう言ってきた。
「ふ、ふーん……二人とも、仲良くなったんだね」
俺はどうリアクションしたらいいかわからず、とっさに頭に浮かんだ言葉をかけた。
「「は!? 仲良くなってない(わ)よ! こいつは紫苑(私)の敵!」」
「あっ……ごめんなさい」
どうやら俺は、かける言葉をまた間違えてしまったようだ。
「とにかく、二人は早く校庭に急ぎましょう。私、実は既に藤井さんを呼び寄せているから」
「紫苑たちはどうするの? 紫苑、るーちゃんが心配……」
「それは私もよ。だから、瑠夏たちが出て行ってから五分くらい経ったら、陰から見張りましょう。本当はそばに居たいのだけど……あいつを遠ざけるためだからやむを得ないわ」
「わ、わかった!」
こうして、梨音の立てた計画が動き出した。
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