生徒は不安よな。副会長、動きます

「成司先輩がお兄さんに変装すればいいんですよ」

「は!? な、なにを言い出すのだね!?」

「いや、ですが引きこもりの人間を無理に引きずり出すよりはマシだと思いますよ?」

「た、たしかにそうだが……しかし俺はどうしたらいい? 兄者はプライベートでは俺と同じ髪色だが、藤井クンを始めとした養ぶ……ファンの前では赤髪だったのだろう?」


この人、今養分って言おうとした!?


「それは簡単ですよ。成司先輩が赤髪にすればいいんですよ。そんでもって、地下アイドル及びホストのときのお兄さんみたいにスーツ姿になればより一層いいですよ」

「いや、しかし……流川瑠夏みたいに刺されでもしたら」


このヘタレは……こういうところが瑠夏とあなたの差なのよね。


「いいですか? どんなに目の敵にしている人でも、瑠夏は肝杉高校の生徒です。それに、あなたの家族まで被害に遭ってる。生徒を守るのが副会長の務めで、家族を守るのがあなたの務めではないのですか?」


私はなんとしても動いてもらうために、成司先輩のプライドを刺激するような言葉を投げかけた。


「そ、そうだ! 俺は肝杉高校副会長の成司寿人だ! いけすかないが、この生徒の命……そして兄者の命も俺が守る!」

「……言いましたからね」

「え?」


そして私はカバンから赤色のカツラとスーツを取り出し、ニヤつきながら彼に見せつけた。


「な、な……なぜこれを持っているんだい!?」

「どちらもコンキで売っておりました!」


そう、私は紫苑と別れた後この作戦を決行するために準備をしていたのだ。


「くっ……」

「さぁ、副会長の意地を見せるのです!」

「わ、わかった! で、作戦内容はしっかり考えてあるんだろうなっ!」

「えぇ。話しましょう……まずは放課後に」


そう、これが私の作戦だ。



――休み時間


「はぁ〜……いつになれば俺は平穏を取り戻せるのか」


瑠夏は自分の席で項垂れていた。早く平穏を取り戻さないと……ちなみに、彼は今日もマフラーをつけている。

きっと私の証が消えてないのね。ふふふ……


「瑠夏、昨日はごめんなさいね。一緒に帰ってあげられなくて」

「いや、大丈夫。亜……電波女の推しについて紫苑と調査してたんでしょ? むしろお疲れ様」

「えへへ……ありがとう」


瑠夏、ずるいわよ……ナチュラルに頭ポンポンするなんて。


「で、紫苑が寝坊で遅刻の理由ってもしかして……」

「ええ。昨日、夜遅くまで私と外にいたからよ。全く……あの子は本当に子供ね」

「まぁまぁ……あいつ、睡眠時間すごく長いんだよね」

「ふーん……って、そんなことはどうでもいいの。今日はあの電波女を瑠夏から引き剥がす作戦を、考えたから!」


私は遠くから瑠夏をじーっと眺めている藤井さんを思い切り睨みつけた。そして、藤井さんもそれに気づいたのか、睨み返してきた。


ふふっ、そんな余裕をこいていられるのも、今のうちなんだから……


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