幼馴染vsストーカー
「あっ! ルカ〜やっと出てきてくれたんだねぇ〜!」
亜姫は俺を見るなり、ぱぁっと表情を明るくし、甘えたような声をだしてきた。しかし
「……誰? その女」
紫苑を見るなり、すんっと真顔になった。
「ねぇ、ルカ。アキというものがありながら、なに他の女と一緒にいるの? しかも、この前見た自称彼女さんとは違う人……?」
自称って……正真正銘本物の彼女なんだけどな。
「あっ、わかった! あいつが自称彼女だとするなら……こいつはセフレだね! もうルカ〜欲求不満ならアキに言えばいいのに〜前世ではよくしてあげたじゃん〜」
(やっぱりこいつ、なにを言っても通じる気がしなさそうだな……)
説得する前に早くも諦めそうになった俺だったが……
「ねぇ、アンタ。なにか勘違いしてない? 紫苑はアンタがストーカーしている瑠夏の幼馴染だよ! 生まれた頃からの付き合いなんだよ! だから、セフレなんかじゃないよ!」
「な、なによ……初対面でいきなり付き合いの長さでマウント取ってきて。しかも人をストーカー呼ばわりするなんて! で、でも! アキの方が付き合い長いから! 前世ではお互い100年くらい生きて、同じ日に死んだんだから!」
本当になに言っても通じないな……
「あのさ、亜姫って言ったっけ? 悪いんだけど、これ以上るーちゃんに付きまとうのやめてくれないかな?」
「は、はぁ? なにを言ってるの? 付きまとうもなにも、ルカはアキの旦那様なんだよ? 所詮今世で数十年だけの付き合いであるあなたに口出しされたくなんかないよ!」
「はぁ……あのさ、本当に前世? の旦那のことを思うならさ、本人が嫌がってることをするのはやめなよ。たとえ前世で夫婦だとしてもさ、行動が行きすぎると今世で離婚されるかもしれないよ」
おお! 亜姫の妄想を逆手に取った説得か! これは効くかもしれん!
と、俺は期待していたのだが……
「……さい」
「「ん?」」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!」
「「……」」
全く響いてねぇ……むしろ逆ギレしてきたよ。
「本当に旦那様のこと想った上でこれをやってるんだよ!」
「だから、本当に思っているならストーカーをやめなって……」
「アキはね! ルカの記憶を取り戻すためにやってるんだよ! ちょっと頭をコツンって叩いて前世の記憶を呼び覚ましたいだけなのに、ルカは逃げるんだよ!? だから、追いかけてるだけなの!」
亜姫は手に持っているバールをぶんぶん振りながら、俺にストーカーしている理由の説明をした。やろうとしていることはコツンってレベルじゃないんだよな……
「それをさっきからストーカー呼ばわりして! 本当になんなの!? ふざけるのも大概にして!」
「ふざけてるのはあなたでしょ……」
紫苑は話を全く聞かず、自分勝手に振る舞う亜姫に呆れ、頭を抱えていた。
「もういい!」
亜姫は森中にやまびこが響くほど絶叫しながら、バールを投げ捨てた。
(バールを捨てたということは、諦めてくれたか!?)
と、俺は期待したが……
「アキとルカの邪魔をするやつは誰であろうと許さない……たとえルカの幼馴染でも、ルカ自身が望んだことでもっ!」
「えっ……」
なんと、亜姫は懐から包丁を出してきた。おい……それでなにをする気だ!? おおむね察しはつくけど!?
「そっちがその気なら、紫苑だって……」
そして紫苑も、懐からカッターを取り出した。
「し、紫苑まで……!?」
紫苑と亜姫はお互い睨み合っている。一触即発とはこのことだ。
「ルカはお前なんかに……渡さないっ!」
亜姫は包丁を持ったまま、紫苑に襲い掛かろうとした。
紫苑は完全に受けて立つつもりでいるようで、カッターを構えていた。だが……
「紫苑っ!」
紫苑をこれ以上巻き込みたくない、そんな思いが俺の身体を突き動かした。
「え……ル、カ……?」
「ぐふっ……」
「る、るーちゃん! るーちゃん!? なんで!?」
俺は紫苑を庇い、亜姫によって腹を刺されてしまった。だが、後悔なんてしていない。なぜなら、大事な幼馴染を守ることができたのだから……
ここで俺は意識を手放し、そのままうつ伏せに倒れた。
「ルカ! 嘘でしょ……ルカ!」
「るーちゃん! るーちゃん!」
「ア……アキはルカを刺すつもりなんて……こ、この自称幼馴染が邪魔をするからっ!」
「いいから早く救急車呼んで! るーちゃんがどうなってもいいの!?」
「あ……あ……あははははははははははははは! アキが! ルカを殺しちゃった……アキが! やっちゃったよ! あははははははははははははははははは!」
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