張り込みするのって、刑事ドラマみたいだよな
「おい嘘だろ……嘘だと言ってくれよ」
「いや、瑠夏……これが現実だ。目をそらそうが凝らそうが、現実だ」
「神っていないんだな……」
あの後、充希と俺は梨音を家の前まで送り、今は俺が家まで送ってもらっている最中だ。いや、最中と言うかもう俺の家の近くなのだが……今は戦慄としながら、電柱の影に隠れている。なぜなら、ヤツがいるからだ……
「……それにしてもあの地雷電波女、恐ろしいぜ。まさかお前の家まで特定してるなんてよ」
地雷電波女こと藤井亜姫が、俺の家の周りをうろうろしながら、キョロキョロ辺りを見回しているのである。マジでなんで特定できたんだよ……頭おかしいよ。と俺は頭を抱えた。
「瑠夏。これはあくまで俺の憶測なんだが」
「なんの?」
「やつが特定できた理由だよ。高校にまで押しかけたり、お前の家で待ち伏せしたり……」
「ああ……うん」
「ここらへんの地域にある高校って、俺らが通っている肝杉高校と不良量産機と言われている矢場杉高校の二校しかないんだよ。中学と小学校はそれなりにあるのに。だからあいつは高校のどっちか考えて、肝杉に来たんだと思う」
「……矢場杉に行けばよかったのに。ああいうタイプって不良が優しいとこ見せたらコロッと落ちるタイプっぽいし」
「……多分怖くて断念したんだろうな」
「結局自分の身が可愛いんじゃん……」
もう呆れてものも言えん……
「で、お前の家に関しては先生辺りから聞き出したんだろうな。自分は瑠夏の友達です。とか言って」
「セキュリティガバガバじゃねえか……名前言うんじゃなかった」
俺は彼女を助けたときのことを思い出し、とても後悔した。
「とにかく、今のお前がこのまま家に戻ったら危ない。しばらくどっかに身を隠したほうがいいかもしれないな。逮捕されたとしても、すぐに出てくる可能性だってあるし」
「わ、わかった……」
「あ、門矢の家はダメだぞ。危害が及ぶ可能性があるからな」
「充希の家は?」
「……無理だな」
「な、なんでだよ……親友の危機じゃなかったのかよ!?」
「いや、俺の家なんだけどな。最近兄貴が彼女をほぼ毎日連れ込んでるんだよ……だから気まずいと思う」
「そ、そうか……じゃあ、やめとくわ」
この時俺は、充希へのお願いを「お前の家に泊めてくれ!」って言っておけばよかったとまた別の後悔をした。そうすれば今みたいに断られる可能性もなかったかもしれないし……まぁ、どのみち兄のことで断る可能性もあったと思うけど。
「とにかく、心当たりのある場所を探すんだ。今すぐに」
「充希はどうするんだよ……?」
「俺はやつの気を引いてくる。その間にお前はその場所へいけ」
「わ、わかった」
「じゃあ、行くぞ!」
と、充希は走り出し、俺の家に向かって進んだ。
「……充希、死ぬなよ」
俺も充希の思いを無駄にするまいと、反対方向へ駆け出した。
「あっ、ルカ……じゃない。誰、お前?」
「誰だっていいだろ……俺はただの通行人だ」
「ふ~ん。どうでもいいけど、アキの邪魔だけはしないでね」
「いや、邪魔もなにもお前のやっていることは犯罪だぞ。警察に通報しちゃうからなお前」
走り続けているうちに、充希の声が段々と小さくなっていくのを感じた。
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