電波系は話を聞かない
「ル、ルカ……念のために聞くけど、その彼女ってアキだよね?」
「いや、話聞いてた? 俺には彼女がいるんだって! 藤井さんじゃない!」
「う、嘘だよね……? ア、アキの王子様のルカが、浮気なんて……」
「いやだから浮気じゃないから……俺の彼女はあなたじゃなくて、高校の同級生だから!」
名前は伏せておこう……梨音が危ないからな。
「う、嘘だよね……嘘だよね……嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘」
「!?」
「あ、そうだ……ルカ、記憶を失ってるから、浮気するんだねー……」
「き、記憶……?」
「だって、亜姫とルカって前世で夫婦だったからね……忘れちゃうのも無理はないよ」
「うわ……」
亜姫の発言に俺はドン引きし、思わず口に出してしまった。
だって前世で結ばれてたとか完全にやべーやつのする発言じゃん……
「ルカ……こっちへおいで……今から前世の記憶を呼び覚ましてあげる」
と言いながら、亜姫は右手で俺を招いた。
そして、いつのまにか左手にはバールを持っていた。
「う、う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ちょっと! ルカ!? なんで逃げるの!?」
決まってんだろ! お前が怖いからだよ!
「待ってよー! 前世の旦那様ー!」
「だから前世の旦那じゃねぇってー!」
この先の人生、二度と逃げられなくったっていい。だから今だけは全力で逃げないと!
「アキはどこまでも追いかけるから!」
だが、このまま自分の家に逃げたところで、家がバレるから危ない。
「こうなったら……」
俺は自分の家ではなく、逆方面。つまり、駅の方へ向かった。
「このまま改札口に入ってやる。一か八かだ。もし中に入られても駅員さんがいる!」
そして、俺はまた力を絞って加速した。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「は、早い……!? でも、逃がさない! アキの! 王子様!!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
怖い……でも、行くしかない!
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
もうすぐだ! 駅が見えてきた!! ラストスパートと思い、俺はICカードを取り出した。そして
改札に入ることができなかった……
「あっ……チャージが足りなかった……」
俺としたことが。相手のことを考えすぎるあまり、自分のことを見落としていた……
「ふふふ……ルカぁ〜どうやら、 行き止まりだねぇ〜」
「あ、あああ……」
もうここまでなのか……俺は頭をバールで殴られてしまうのか……それによって、脳みそが歪んでしまうのか……
俺は絶望し、色んな考えが頭の中をぐるぐる回り、涙を流した。
「そこまでよ!」
「な、なによ……あんた!? アキとルカの邪魔をする気!?」
だがその絶望も、亜姫の暴走を止める声によって、希望へと変わり始めた。
その声の主とは……
「私の彼氏に手を出すの、やめてくれるかしら?」
「り、梨音……」
俺の彼女だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます