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「瑠夏、大丈夫?」

「う、うん……」


 梨音は俺のそばにより、身体に身を寄せてきた。


「あ、あんた……! アキのルカに気安く触れないでよっ!」

「なにがアキの瑠夏よ! 瑠夏は私の彼氏なのよ! あなたが好き勝手していい人じゃないのよ!」

「も、もしかして……瑠夏が言ってた彼女って、この人……?」

「ええ。私が瑠夏の彼女、門矢梨音よ」

「ふふふ……あはははははははははははははははははははははは!」


 な、なんだなんだ!? 急に笑い出したぞ!?


「あーはははははははははははははは……はあ。ルカ、この女とすぐに別れなさい!」


 と、思いきやすぐに険しい表情になり、俺にこんな無理難題なことを言ってきた。


「こ、断る! 俺の彼女は梨音なんだ! 絶対に別れないからな!」

「瑠夏……」

「なんでよ!? もしかしてルカ、先に付き合っていた……いや、先に結婚していたアキじゃなくて、この女を取るわけ!?」


 ……本当になにを言ってるんだ。この人は


「え!? 瑠夏!? その話本当なの!? いつ!? いつなの!? 中学時代に私がいなくなった間!? それとも、私と会う前!? もしくは、小学生のころ!? ねえ! 答えてよ!」


 すると、この話を真に受けた梨音は俺の肩をガシッと掴み、鬼のような顔と怒気で俺に問い詰めてきた。


「り、梨音! 違うから! 俺、この人とさっきはじめて会ったばかりだから!」

「瑠夏……わかった、あなたを信じるわ」


 が、梨音はあっさりと俺の説得を受け、すぐに機嫌を直した。


「ふふふ……門矢梨音。その子は嘘を言ってるわ。アキが本当のことを教えてあげる」

「……瑠夏が嘘を言うわけないわ。でも、いつからの付き合いかは聞いてあげるわ」


 梨音はキッと亜姫を睨みつつ、耳を傾けた。


「ふふふ……アキとルカは、前世からの付き合いだよ!」

「ぜ、前世……?」

「それで今日、久しぶりの再会をしたんだよっ!」

「……」


 梨音の表情は、明らかにドン引きしていた。さらに、なに言ってんだこいつと言いたげな表情にも見えた。


「ねえ、あなた……病院行った方がいいわよ」


 梨音は一旦俺から身体を離し、亜姫の肩に手をそっと置き、こう告げた。


「なによ! アキを病人扱いしないでよっ!」


 亜姫はその梨音の手を勢いよく振り払った。いや、実際病人だろ……


「もう許さない……ルカの頭をぶったたく前に、あんたのことをボコボコにしてやるわよ! ルカ、安心して……アキとルカの仲を引き裂く魔女は、アキがぶちのめしてあげるっ!」


 そんなことを言いながら、亜姫は威嚇するかのように、バールを思い切り地面にたたきつけた。


「り、梨音には手は出させないっ!」


 俺は庇うように、梨音の前に立った。


「ルカどいて! そいつ殺せない!」

「……っ」


 その言葉の通り、本当に梨音を殺しそうな声色に俺は生まれたての小鹿のように足が震えた。


「瑠夏。どいて」


 すると急に、梨音は俺を押しのけ。一歩ずつ亜姫に近づいた。


「ダ、ダメだ! 梨音! 殺されるよ!」

「瑠夏、大丈夫よ」


その瞬間、梨音は懐からなにかのスプレーを取り出し、彼女の顔に思い切りかけた。


「はっ!」

「え……う、うわああああああああああああああああああああああああああああ! 痛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」


 スプレーがかかった瞬間、亜姫は顔を抑え、悲痛な叫びをあげた。


「瑠夏、今のうちに逃げるわよ!」

「う、うん!」


 そして、俺たちはすぐに駅のホームから逃げた。

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