水着ショップでデート

 ――水着売り場は旧館にある。新館からの移動だったため、かなり時間がかかった。そして今、俺の前にはカーテンが開けられた試着室がある。

その中には、ピンクの花柄がプリントされた、ヒラヒラした水着を着た梨音が立っていた。因みに、上下のパーツは分かれている。


「じゃーん! どう? 似合う?」

 やべえ……可愛い。めっちゃ似合ってる!


「……おっぱいでか ヘソ出てるし……」

「ちょっと瑠夏! いきなりなに言い出すのよ!?」

「えっ……あっ、ごめん!」

「私の胸とヘソじゃなくて、水着の感想を言いなさいよ!」


 お、俺本音と建前が入れ替わってた!? やばいやばい! てか今の普通にセクハラだよな……?


「じゃないと、ここに来た意味が無くなるわ。着た意味も無くなるし。なんちゃって」

「ぶほっ!?」


 ちょっと待って、不意打ちでダジャレぶっこんで来るなよ!? 吹き出しかかったじゃん! しかも真顔で言ってくるなよ! 余計笑えてくるから!


「まぁ、あなたに胸を見られるのは嫌いじゃないけど……むしろ好きっていうか」

「あっ、うん……でも、そのピンク色の水玉のヒラヒラ、とても可愛いよ。梨音のイメージに似合ってる気がする……後、くびれもいい感じだよ」

「る~か~?」

「やば! また本音が! す、すみません!」

「はぁ……別に私、怒ってないわよ?」

「え?」

「ただ、私の身体じゃなくて、水着の感想を言ってほしかっただけよ。じゃあ、もう着替えるからねっ!」


 と言いつつ、梨音はカーテンを閉めた。やばいな。本当にデリカシーないな俺。


「これはどう? これなら露出も少ないし、ちゃんと水着の感想を言ってもらえると思うんだけど」


 次に梨音が着た水着は、黒い競技水着だった。正直、この水着は俺にとって刺激が強すぎだ。なぜなら


「露出少ないとか言うけど、身体のラインとかすごく目立ってるよ。それに、やっぱりおっぱいが目立つし、なにより太ももが目立つ!」

「瑠夏」

「は、はいっ!?」


 しまった……また


「競技水着っていうのは、水泳選手とか、水泳の授業で先生が着るような所謂遊びとは無縁のものなのよ。確かにあなたの言う通りと言えばその通りなんだけど、そんな目で見るなんて……」


 これはガチ説教だな……声も冷たい。確かに男に見せたりする目的じゃないものであることは頭の中では分かっていた。でも、どうしてか、俺はそういう目で見てしまうんだ。この本能にだけはどうしても抗えない。


「まあ、このくらいの年齢の子は年頃だから、そう思うのは仕方ないわね」


 梨音ははぁとため息をつきつつ、そう言ってきた。


「ねえ、瑠夏」

「なんですか……」

「スク水とかで欲情したことある?」

「えっ……」


 急になにを聞くんだよ梨音……欲情って……


「……はい。その通りです。」


 だが、嘘をついても仕方がないと思い、ありのまま答えた。


「はぁ~、よかった……」

「え? よ、よかった!?」

「ええ。だって水泳の授業とか、私の写真送って瑠夏を悩殺できるかもしれないって思ったからよ! あっ、その写真で色々やってもいいわよ」


 な、なにを言ってるんだ……自らそんなこと言うなんて。


「なーんて。冗談よ。……半分。じゃあ、次の水着に着替えるわね」


 と、言いながら梨音はまたカーテンを閉めた。

――てか、冗談に聞こえないよ。てか、半分って言わなかったか!? 半分冗談ってことはもう半分は……


「いやいや! ダメだ! こんな不純なこと考えちゃだめだ! 今はデート中なんだぞ!」

「ほらほら、瑠夏はこういうのが好きなんでしょ?」

「ぶっ!?」


 急に開いたカーテンの中から現れたのは、布が少なく、隠す範囲がほぼないマイクロビキニを着ている彼女だった。だから、あるものが……おっぱいが強調して見える!


「ちょっ……いきなりそんな過激な!?」

「だって、瑠夏は私のおっぱいが好きなんでしょ!? 見たいならもっと見せてあげるわ! ほら、見てよ! 見てよ!」

「いや、確かに梨音のおっぱいとかよく見えるけど……目のやり場に困る」

「なんでよ!? 私のおっぱい堪能できるじゃない!」


 目を逸らすと、おもむろに俺に身体に胸をくっつけてきた。


「で、感想は?」


俺は彼女の圧と、彼女のおっぱいの圧に押しつぶされそうだった……今散々言ったんだけどな……柔らかっ!


「あの、正直に言っていいかな?」

「正直に言いなさいよ! じゃないと着た意味がないわ!」

「なら、包み隠さず正直に言うと……エロい! とってもエロい! めちゃくちゃエロい!」

「そ、そう……」

「でも、海とかプールに行った時、俺以外の男に見られるのは、なんか嫌! だから、これを外で着るのはちょっと……」

「ふーん、瑠夏って意外と独占欲強いのね……」


 あなたに言われたくないよ……俺はそう心の中でツッコミを入れた。


「瑠夏がそこまで言うなら、これはお家デートした時に着るわね。楽しみにしてなさいよ!」

「お、お家デート……」

「お風呂、貸してあげるわよ! そこで着るわ!」


 風呂で水着って……なんか別の店みたいにならないか!?

 俺はまたツッコミを入れた。

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