俺の幼馴染は危険すぎる!
女性用下着を履いた男
「瑠夏、起きなさい! もう朝よ!」
「ん~……後五分」
「起きなさいって! もう七時よ! 準備しないと!」
「まだ七時でしょ? 後三十分も時間あるよ~」
「瑠夏は歩いて行けるけど、ここは私の家よ! これくらいの時間に起きないと間に合わないわよ!」
「……ん? あっ!? え!?」
目覚めた瞬間、目に映ったのは制服を着た門矢さんだった。どうして彼女が俺の部屋にいるんだ……!?
「あ、あの門矢さん……? いつの間にか俺の家に来たの?」
「もう! なに言ってるの!? ここは私の家で私の部屋よ!」
「えっ!? か、門矢さんの家!? あっ……」
その時、俺は思い出した。昨日急に眠くなって彼女のベッドを借りたこと、あのまま眠りにつき、睡眠してしまったことを。
「ご、ごめん……俺、あれからずっと寝てた。マジですまん……」
「いいの、気にしないで……そもそも私が悪いんだし」
「いやいや、むしろお邪魔した上に寝かせていただいた俺が申し訳ないっていうか……」
「……そういうことじゃないんだけどな。まぁ、いいわ。それと制服は昨日すぐに洗って乾かしたから……あっ、アイロンもかけたわ」
と、言いながら彼女から制服を差し出された。とても綺麗に畳まれている……ん? というか、昨日制服のまま寝たよな!?
「……え? どうして俺の制服が?」
「ああ、大丈夫よ。お肌に優しい洗剤だから」
「そうじゃなくて! 昨日、制服のままで寝たはずなんだけど、どういうこと? まさか……」
「そう、そのまさかよ。昨日、瑠夏が寝ている隙に私がこっそり脱がしたのよ」
「……」
寝ている間に彼女に脱がされたことと、ほぼ寝込みを襲われて同然のことをされたという恥ずかしさのあまり、絶句した。
「あっ、パンツも洗っておいてあげたからね」
「ちょっと! あっ、いや……ありがとうございます」
一瞬無許可で下着を見られたことで怒りそうになったが、それ以上にわざわざ洗濯してくれたことと、そんな考えになった自分が情けなく感じ、まずは感謝をした。
「ごめんね。恥ずかしい思いさせて」
「あの……念のため聞くけど、服を脱がす以外なにもやってないよね?」
「う、うん……や、やってないわよ」
誤魔化すの下手かよ……
「……本当に?」
「ご、ごめんなさい! 本当は一つだけとんでもないことしてたわ!」
「な……なに?」
「あなたの服を脱がせた後、私の香水を身体中にかけたのよ!」
「……え?」
「瑠夏のにおいを私のにおいにしちゃえば、完全に私のものにできるかなって思って……」
意外にもそんなにやばいことはされていなかった。むしろ、こんな感じで独占欲を発動させている門矢さんがかわいいとすら感じている。
「いや~気づかなかったよ。むしろ、俺の身体より部屋中のほうが香水のにおいで充満しているような……」
さっき起きた直後、門矢さんの部屋に来たばかりのときに嗅いだにおいよりも、さらに濃いにおいが俺の鼻を刺激していた。
「あっ、ああ……それはね、瑠夏に勘付かれないように、部屋中に香水をまいたのよ! うん!」
「あっ、ああ……そうなんだ」
証拠隠滅のやり方が可愛すぎるんだけど……はっ!? というか待て!?
「な、なあ……俺は今、なにを着ているの?」
そう。制服、さらに下着を差し出されたということは、俺は今別の服を着ているということである。少なくとも全裸であることはあり得ない。なぜなら衣類を纏っていることを肌全体で感じているからだ。下着も履いている。
ただ、多少……いや、かなりの違和感はある。肩幅と下半身が少しきつい。正直なにを着ているかは察しているが、念のため彼女に聞いたのである。
「私の部屋着だけど?」
「やっぱりか!」
そして顔を下へ向けると、ピンク色で花柄のシャツが目に入った。ズボンはとても短い灰色だ。
「ごめんね~肩幅狭かったでしょ。それでもって、パンツも私のものを履かせちゃったわ。ごめんね」
ああ、やっぱり……俺は今女性用の下着を履いているのか……やばいな。
「いやいや、大丈夫だよ……って、待って!? 履かせておいたって……」
「……だ、大丈夫よ。一瞬しか見なかったから。さ、さすがにガン見はしなかったわ。うん」
嘘だろ……見られたのかよ。顔赤くしながらニヤニヤして、なんかうれしそうだなおい!
「私たちは付き合ってまだ日も浅い。でも、いずれはお互いの裸を見つめ合う日が来ることは確かよ。私が先に見ちゃったことは謝るわ。でも……瑠夏が望むなら、見せてあげるわよ」
まるで誘惑せんとばかりの妖艶な表情で、彼女はそう言ってきた。そんな顔を見て、ドキッとし、その次に段々と心臓の鼓動が早まった。
「わ、分かった。でも、今はまだ心の準備ができてないから! とりあえず着替えさせて!」
「分かったわ。朝食はもう用意してあるから、着替えたら来なさいね。あなた」
奥さんみたいに言うな! とツッコミたかったが、起こしてもらった恩があったことと、そんなことを言う間も無いうちに部屋を出て行ったため、心の中で叫ぶにとどまった。
「はぁ……どうしてこんなことになったのやら。紫苑には絶対黙っておこう」
と、呟きつつ着替えている途中、あることに気づいた。
「……ん? 朝食?」
その単語が頭の中によぎった途端、昨日食べた兵器のようななにかを思い出し、血の気が引いてきた。やばいやばい! どうしよう!
「待って門矢さん! 俺、朝は基本食わないんだけど……」
さっさと着替えて鞄を持ち、部屋を出て、俺はダイニングへ向かった。
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