第15話 神棚もどき と 名前
13話『白蛇様降臨』で書いた、『 神棚に卵をお供えしない方が良い 』 という話で思い出したことがある。
先生は 『それにちゃんと魂入れした正式な神棚じゃないんでしょう?』 と言っていた。
魂入れ――位牌などに故人の魂を宿すことだったりするが、この場合は神様をお招きする儀式といったところか。
それは大雑把に考えると、そのお招きした神様の小さな分社になるという事なのだろうか。
もちろん我が家のはそんな正式な儀式はしてないし、さらに宮形や紙垂など一般的なモノすらない。
なんと御札すら貼ってない。前に近所の神社から頂い御札を貼ったことはあるが。
つまり一般的に考える、木造りの社と紙垂を吊るしたミニ神社の体をなしていない。
箪笥の上に買った○○織りの布を引いて、その上に同じく○○織りで縫った手製の座布団、そこにお茶を毎日差し上げるだけ。
もう神棚もどきと言うのも図々しい、強いていうなら公園のベンチぐらいの存在なのではないだろうか。
こう書いていてなんだか今更ながらに申し訳なく思えてきた。
とはいえ、この状態で前のボロアパートから続いてウン十年と過ごしていた。
神棚と表現するのはナンだが、手を合わせる場としてならいいのかもしれない。
よく外国でも、壁につけた十字架に祈ったり、小さなポスターくらいの神仏画を拝んだりするのを普通にやっている。
要は気持ちが大事なんだろうなあ。
話変わって、
前にも書いたように、白蛇様の御姿を見た事はあるが、直接声や会話をしたことはない。
だが、一回だけ直接言葉を貰ったことはある。
それは高校の時にやった鉛筆による『自動書記』にてだ。
霊感少女Aちゃんとお馴染みの友達2人で、しょっちゅう放課後に空いた教室でやっていた。
その時はそれぞれ自分たちの守護霊様をお呼びして、各自色々と質問をしていたのだが、今思えば本当に危険なことをしていたと思う(冷や汗……💦)
守護霊様たちは、何やら元気のいい方や落ち着いた雰囲気方など各友人たちと個性がどこか似ていた。
で、最期が私の方の番だったのだが、そこに突然白蛇様降臨となった。
本当にくどいが、この頃は守護霊様=白蛇様だったので当然のように思っていた。
いきなり 『 そ ら こ 』 と、大きく紙いっぱいに3文字が書かれた。
「はいっ」
いきなり名前を呼ばれる(書かれる)とやはりあらたまる気分になる。
ただ他の方と違って、Aちゃんも思わず「凄いパワー」と呟くくらい豪快な動きに、レポート用紙いっぱいに1つの単語のみ。
紙を取り換えるまで傍らでグルグル凄い勢いで回っていらした。
今思うと、書道の書き方だったのか。そもそも神様はそんな小さな紙一枚にちまちまち書かないものなのか。
一番紙使ったかも(笑;)
そうして告げられたらすぐに帰られていった。
よくある『質問する→答え』のパターンではないのも、神様らしいと言えばらしいと言える。
私が勝手にイメージしていたのとは違う、なんだか熱い方だった。
内容も創作する事を推す、新兵を叱咤激励する教官の 『Go!Go!Go!』 のノリだったし。(他に上手い言い方が見つからなくてすいません)
でも今考えると、プロアマ考えずに創作だけは続けろ、という事なのでしょうか。
確かにどん底になった時でも、創作する事が繋ぎ止めてくれていた。
素晴らしきかな、物語を作れる幸せ。
その節はお言葉有難うございました。
で話を戻して、そこでふと気になったポイントは、私の『名前』
まあ担当して下さっている方なのだし、神様なら知ってて当然だろうと思われるが、それ以外の者から名前を呼ばれたとしたらふと疑問に感じないだろうか。
どうやって私の名が分かったのか?
『So”ra”ko”』
独特なトーンで呼んできたのは、ウチの妖精さんだ。
まるでボイスチェンジャーで変換したみたいな、凄く高い声で呼ばれたのがとにかく印象的だった。
多分ヘリウムガス吸っただけじゃ、あんなにビブラートが掛かった声にはならないと思う。
まさしく宇宙人みたいだった(笑)
彼らの場合いかにもフランクで親しみのある言い方で、(しかも英語だったので)ついスルーしていたが、いつの間に私の名前を知ったのだろう?
何度か会話はしたことあるが、考えてみると自分の名を教えた覚えがない。
どこかで私が名前で呼ばれているのを聞いたのだろうか。
家の中ならその可能性は高いな。
ただこのように、ある程度付き合いがあるなら納得なのだが、こちらはお初なのに向こうが知っていたというパターンがある。
そこでまた???なのである。
ある時、とある夢で幽霊の娘さんに会った。
彼女は私のことを『青田さん』と呼んだ。
この距離感が逆にリアルだった。
しかし初めて会ったのになんで向こうは知っていたのだろう。
当初はただの夢かと思っていたので気にしていなかったが、2回目に会った時はシャレにならなかった。
アレは夢じゃなくて現実だったのではないか。
礼儀もわきまえ、悪気もない
悪意がなくても未成仏な霊は生気を吸いたくなってしまうらしい。
こんなところが(言い方があれだけど)ゾンビの飢餓感と似ている気がする。
ちょっと申し訳なかったが、つい反射的にぶん殴ってしまった。そのせいかそれから来なくなった。
とにかく死者と生者は同じ世界に共存出来ないと心底思った。
その後、先生にお願いしてあちらに渡ってもらった。
彼女の話はいずれもう一つのエッセイ『夏だ!――』の方で書こうかと思っている。
あ、先に小説の亡霊シーンで参考にさせてもらいました。
勝手にネタにしちゃったけど、もう大丈夫だよね。
きっと今は綺麗な顔になっていると思う。
あの時は着物の柄はハッキリしているのに、何故か顔だけがぼやけていた。
自分の顔を忘れるほど長く彷徨っていたのかと考えると、なんとも言葉が見つからない。
月並みな言い方だが悪い子ではない印象だっただけに、今度こそちゃんと新しい人生を過ごして欲しいと思う。
とにかく人でない者にはそれなりに見えないモノが視える。
もしかして『デス・ノート』みたいに、頭の上に名前とか出ちゃってるのだろうか? などとつい考えてしまった。
このままだと寿命が短くなるとか、こうすれば長生き出来るとか、ざっくりと運命が視えるという人もいるらしい。
どんなふうに視えているのか分からないが、究極の個人情報だな。
こう書いていてふと思い出したが、そういや以前、妖精さんからお友だちの名前を聞いたことがあった。
まさに友達の友だちはもうお知り合い、友達の輪なのだから。
自然な成り行きで受け流していたが、そうか、そういうパターンもあったのか。
いつか機会があったら訊いてみたいものだ。
そういえば海外は、ビジネスライク以外ではファーストネームで呼ぶのが一般的だったりするなあ。
しかも結構な頻度で会話に出してくる。
日本だと、ニックネームでは呼ぶが名前ではあまり呼ばないし、あえて必要じゃないと言わない気がする。
文化の違いって面白い。
以前の会社の後輩が、旅行先のグアムで鎖骨をポッキリ折るという大怪我をした。その際に、救急車の中で看護師らしい白人男性に名前を訊かれた。
「……佐藤 恵梨香(仮名) です……」
痛さに息も絶え絶えに返答した彼女。
すると白人男性は、どっちがファーストネームかと更に訊いてきたそうだ。
え、それ今必要? こっちは喋るどころじゃないのに、と頭の隅で思ったがとにかく
「え、恵梨香です……」となんとか答えた。
するとその男性は拙い日本語で
「エリカ、がんばれっ! がんばれ エリカ!」と賢明に励ましてきたそうだ。
その言い方が妙にツボってしまい、つい笑ってしまった。おかげで激痛にまた涙が出たと言っていた。
彼女曰く 「笑わさないでよぉ~💧」だったようだ。とにかく大変だったねえ。
その反対に
『あの、お名前は?』と、やや脈あり気な女性に尋ねられても
『E・モースです。モースで結構』
と、いつでも頑なに名前を言わなかったのは小説版『モース警部』シリーズの主人公。
自分の名前が嫌いだったのか、または生涯独身だった彼の、どこか人と一線を引くところが端的に出ているエピソードで面白い。
たかが名前、されど名前。なかなか奥深いものである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます