第37話 奇跡
私はそのとき、ずっと「いいことノート」と向き合っていた。
私には解離性障害というトラウマに起因した病気を患っており、十代の頃はずっと入院していた。
何度も祖母に当たり散らし、一緒に死のうとしたことだってある。
一昨年から私は鹿児島で居場所を見つけ、一人暮らしも始めた。
私が入院してときに始めた「いいことノート」を書く行為は祖母も認めてくれていた。
私にやれることはこれくらいしかできない。
最悪な結末になっても祖母のためにもノートに書こう。
私がこんな状況であってもいいことノートを書いている光景を見て、落ち込んでいた伯父も伯母も勇気をもらった、とあとで報告をもらったとき、私は無性に嬉しかった。
夕刻のニュースが流れだす頃に手術は終わった。看護師に呼ばれ、手術が無事成功し、ICUで治療を受けている、と言われたとき、長年介護現場で多くのケースを見ていた母は驚いていた。
「脳の中の血管が破裂したら半数の確率で死に至るし、助かっても麻痺が残ったり、意識が戻らなかったり、というケースがほとんどなのに本当に奇跡だ」
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