第7話 ライバル出現

帰宅した明日香は、シャワーを浴びて、ビールとコンビニ弁当で夕飯にした。昨日、和風回鍋肉を食べ切っていたため、今日はコンビニ弁当だ。いつもなら自炊をするところだが、今日はその気力がなかった。

(浅倉食品の担当変えるの、日置ちっとも嫌そうじゃなかったなぁ)

 浅倉食品は、ナマケモノのキャラクターのお菓子を扱っている会社の名前だ。萌が担当を希望していると、日置にはすぐに伝えた。担当替えを日置が否定してくれたら……。そんな狡い考えがなかったとは言えない。

(でも、何の躊躇もなく「いいんじゃない?」って! それはないでしょ)

 結局、日置が先方に意向を聞くことになってしまった。

 胸が苦しくなって、明日香は一気にビールを流し込む。

(二人で初めて掴み取った仕事で、毎年私とやってたのに。日置は、別に私じゃなくても良かったのかな……)

 日置にとって、自分は取るに足らない存在だと突きつけられたようで、明日香の胸は痛んだ。ビールの缶をグッと握りしめて、涙を堪える。

 その時、手元のスマホがメッセージの通知を告げた。相手は知美だ。彼女には、今日の出来事をスマホで送ってあった。

「あの女! 明日香と日置の大事な仕事に手をかけるなんて!」

「浅倉食品を明日香と日置が担当するのは、暗黙の了解なのに!」

「日置も日置だ! なんで反対しないんだー!」

 怒っている絵文字やスタンプと共に、メッセージが細切れに送られて来た。電話じゃないということは、赤ちゃんが起きているのだろう。直接話せはしなかったが、共感してもらえただけで、少し気分が軽くなる。しかし、次のメッセージが、また明日香を落ち込ませた。

「ぶりっこ女に好き勝手させちゃダメ! 日置を狙ってるに決まってる!」

 それは、萌の提案を聞いた時から思っていたことだった。

(日置を狙ってるから、行動に出たんだよね。どうしよう……萌ちゃん可愛いし、男性社員に人気あるし。日置だって……)

明日香はどんどん弱気になっていく。すると、それを見透かしたように知美からメッセージが届いた。

「絶対阻止! まだ担当が変わるって決まったわけでもなし。 明日も勝負下着で戦うのよ!」

(そうだよね。まだ決まったわけじゃないもんね。今から心配したって仕方ないよね。私は、私にできることをやらなくちゃ)

 明日香は、なんとか決意を固めて二本目のビールを取りに行った。

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