Episode 3 From zero 

「おはようテオ君」


「おはよう、ルナ」


次の日の朝。俺はさっそくルナと、俺の里親候補に会いに行くことにした。


「テオ君。言っておくけど、私はあくまで紹介するだけだからね?」


「もちろん。それだけで十分だよ」


俺とルナは歩きながら会話していた。


「その人ね、なんというか。すごく難しい人というか、変わった人というか。とにかく、悪い人ではないんだけど、気に入られるかはテオ君次第って感じな人なの」


ルナは少し濁しながら言った。


「別に俺は構わない」


「そう」


そんなに変人なのだろうか。


「あのさ、なんでルナは俺にそんなに良くしてくれるんだ?俺たち昨日まで初対面だよな?」


「まぁ、特別大きな理由は本当に無いんだよね。でも、困っている人がいたら助けるのが人間でしょ?まぁ、運がよかった程度に思ってくれたらいいから」


「そうか。ありがとう」


「うん!」


そのあと俺たちはしばらく歩き、町の中心からだいぶ離れた自然が綺麗な場所に来た。


「ここよ」


ルナに連れられてきたのは、古い小さな家だった。


「ここ...?」


正直人が住んでいるとは思えないほど、ぼろい家だった。


「すみませーん」


ルナが家のドアをノックしながら言うと、


「なんだぁ」


そう言って家の中から出てきたのは、ぼさぼさの髪でよれよれの服を着た、明らかに寝起きの中年のおっさんだった。


「ジルさん、おはようございます」


「あぁ、ルナか。どうした、こんな朝早くに」


「朝早くって、もうお昼ですよ」


「そんな時間か」


男は頭を掻きながら言う。


「それでどうした?」


「今日は、以前ジルさんが言っていたお弟子さん候補を連れてきました」


(弟子?何のことだ)


「あー?弟子候補ってその坊主の事か?」


「はい。ほら、テオ君挨拶して」


「テオグレイです」


そう言って挨拶する。


「なんか、ひょろっちい坊主だな。俺の弟子が務まるとは思えんが」


ジルと呼ばれていた男が言う。


「なぁ、さっきから弟子って何の話だ?」


小声でルナに聞く。


「いいから、話合わせて」


そうルナが小声で返すと、


「でも、ジルさん。前の弟子候補全員解雇しちゃって、もう誰もいないじゃないですか」


「あのなぁ、ルナ。俺は弟子が欲しいといったが、誰でもいいって訳じゃないんだ。それ相応の素質が必要になる。あいつらはそれが無かった。だから解雇した」


「そんなこと言ってるから、いつまでたっても弟子ができないんですよ」


ルナが言う。


「とりあえず、見るだけ見てあげてくれませんか?」


「まぁ、別にいいけどよ」


そう言って、その男は俺の前に立つ。


「おい坊主、お前どんな魔力を持っているんだ?まさか、サポート系の魔力じゃないだろうな。そうだったら、見るまでもなく俺の弟子にはなれないぞ?」


男は言った。


「俺に魔力はありません」


「あ?」


「魔力はないので、魔法は使えません」


俺は言った。


「え!テオ君、魔力ないの!?」


「あぁ。それがどうかしたのか?」


ルナと男は顔を見合わせている。


「おい。坊主」


「なんですか?」


「この話は無しだ」




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